メンタル不調になってしまう社員を防ぐ方法

現在日本で働く人口の約5割は、何らかのストレスを抱えていると言われています。

2015年の12月よりストレスチェックの義務化が始まり、2019年4月からは、働き方改革がスタートしました。日本では少子高齢化が進み、働き手の減少により、労働力不足から長時間労働が問題視されてきました。 長時間労働が及ぼす身体や精神の疲労、成果主義での職場でのハラスメントがメンタル不調への引き金になると言われています。

 

1、メンタル不調になる原因

日本の人口減少により少子高齢化が続き、労働人口の減少が問題視されています。

労働者一人当たりの労働時間は伸び、賃金は上がらない状況が続いています。さらに納期期限の短期化や求められる高スキルへのプレッシャーから、メンタル不調になる従業員は増加の一途をたどっています。

1-1 長時間労働による疲労の蓄積

メンタル疾患によるもっとも大きな問題となっているのが、長時間労働です。特に月80時間を超える長時間労働は、睡眠不足やリラックスする時間が取れないなど、心身ともに疲労が蓄積し、脳卒中や心筋梗塞など重大な疾患をもたらしやすい過労死ラインとも呼ばれています。

長時間労働が続くと睡眠を十分にとる時間がない、体がキツイだけでなく、心身ともにリラックス時間が取れず、頭の回転も鈍くなります。

疲れから些細なミスが多くなる、スケジューリングができない、上司や先輩からの注意などが増え、挽回するために、さらに長時間労働に陥るという悪循環になります。

1-2 能力以上のノルマ

市場は生き物で、常に流動的です。世の中は常に新しい技術や新製品を生み出すことを求められて、そのスピードは増しています。

2017年(平成29年)に厚生労働省で行われた「安全衛生活動調査」では、過去1年間にメンタルヘルス不調により連続1か月以上休業又は退職した労働者割合は情報通信業や金融業,保険業の区分が1.2%で最も高くなっています。(参照:厚生労働省HP 平成29年安全衛生活動調査、第4表 過去1年間にメンタルヘルス不調による連続1か月以上の休業又は退職した労働者割合)

情報通信業では、商品開発の多様化や納期の短期化となり、他社より常に先端を行く新しい開発が求められます。こうしたことから、常にプレッシャーを感じ続け、時間外労働の増加、納期や新商品開発の

プレッシャーなどから、メンタル疾患を抱えた従業員が増え、人手不足からさらなる長時間労働や仕事量の増加につながり、メンタル不調にかかる従業員を生み出す「負の連鎖」ができています。

また、金融業,保険業の区分では、顧客の個人情報や金銭を扱う緊張感から常に緊張を強いられ、メンタル不調に陥ることが多いと考えられています。

1-3 パワハラなどの人間関係のトラブル

ビジネス社会ではほとんどの職種で、人間関係は避けて通れません。円滑なコミュニケーションはビジネスシーンでは成果に大きく影響します。そのため、コミュニケーション不足からくる孤独感、人間関係のトラブルによるストレスはメンタル不調へとつながります。

また、上司からささいなミスでもしつこい注意がある、度重なる叱責などが続けば緊張状態が続き、さらなるミスを招き、ますますミスをして、上司から怒られるという悪循環になります。

こうした人間関係のトラブルから、眠れない、仕事が身に入らないなどのメンタル不調へとつながります。

1-4 組織変更や転勤などによる環境の変化

多くの企業では、一部を除き、組織変更や転勤などがあります。特に大きな企業では、入社してから退職まで同じ職場であるケースはほとんどないでしょう。

転勤が多いとされる金融業では、新入社員の募集要項の段階で、総合職や基幹職について、日本全国や海外などへの転勤があると書かれています。例えば、みずほフィナンシャルグループの2020年の募集要項を見てみますと、基幹職(総合および専門)で日本全国や海外への隔地間の転勤があるとの記載があります。

どのような人でも、環境の変化があれば、いい意味でも悪い意味でもストレスになります。特に離れた場所への転勤は職場環境だけでなく、住む環境も変化します。子どもの転校への不安、もしくは単身赴任になるのであれば、仕事に加えて家事負担が多くなるなど、環境に慣れるまでに時間がかかることも多いでしょう。

また、転勤に伴い、役職に就任するなど、より責任のあるポストにつけば、仕事量の増加や責任に対する重圧などからメンタル不調に陥ることもよくあります。

1-5 結婚や出産などプライベート環境での変化や悩み

メンタル不調に陥る原因は会社だけではありません。結婚や出産など、一見すると人生の大きな喜びである出来事が、ストレスの引き金になることがあります。

結婚はパートナーとの新しい生活をスタートする上で、住居が変わったり、家具を買い替えたりと、多忙になります。また細かい決めごとをする上で、パートナーとのいさかいもあるでしょう。出産後であれば、慣れない育児と睡眠不足の生活が続きます。

また、親兄弟の病気や介護などがあると、日常生活でストレスが溜まり、休んでも疲れが取れにくくなります。

家庭環境の変化と長時間労働や仕事での緊張状態が続くと、さらに大きなストレスとなり、メンタル疾患へとなりやすくなります。

2、メンタル不調者になりやすい人

同じような環境であってもメンタル不調になりやすい方となりにくい方がいます。メンタル不調になる原因は外的要因ばかりではなく、本人の考え方やストレスとの上手な向き合い方にもよります。

続いては、メンタル不調に陥りやすい人の特徴をご説明します。

2-1 まじめで几帳面なタイプ

まじめで几帳面な方は、何事にも一生懸命取り組みます。間違いやミスすることを恐れるあまり、時間がかかることや、優先順位を上手につけることが出来ず、長時間労働につながりやすく、疲労が溜まり、かえってミスが起こるという悪循環に陥りやすくなります。

2-2 負けず嫌いなタイプ

一見すると、自分の主張をはっきりと通し、あまりストレスをためないタイプに思われがちですが、気が強く負けず嫌いなタイプの方も、メンタル不調に陥りやすい傾向にあると言われています。

仕事をする上で向上心は大切です。ただし、向上心が強すぎるが故に、周囲と衝突したり、独りよがりになってしまい、職場でのトラブルにつながってしまうことがあります。また負けず嫌いな気持ちが強いと、周囲の人を攻撃してしまい、相手のメンタルが弱ってしまうことがあります。

2-3 気が弱く、相手に強く言えないタイプ

2-2のタイプとは逆に、相手に強く出られず、面倒な仕事や自分のキャパを超えた仕事を抱えてしまい、メンタル不調に陥りやすいです。

3、メンタル不調を防ぐポイント

厚生労働省は、ストレスによるメンタル不調を未然に防ぐために、2015年12月に職場での定期的なストレスチェックを義務付けました。

ストレスチェックは年1回行われます。対象となるのは、正社員や正社員の所定労働時間の4分の3以上である短時間労働者が、合わせて50人以上いる事業所です。

3-1定期的にストレスチェックを行う

2015年12月より実施されている、ストレスチェックは年1回以上行う必要があります。対象となる事業所は常時雇用する労働者が50人以上いることが原則となっています。ここでいう常時雇用労働者とは、正社員や正社員の所定労働時間の4分の3以上勤務する労働者のことを指します。

実施はストレスに関する自覚症状や周囲のサポートの有無など質問事項にこたえる形式となっており、医師や保健師など有資格者が行います。

3-2 チェックの結果を活かし、業務内容を見なおす

ストレスチェックを行い、疲労が蓄積している、比較的高いストレスを抱えていると考えられる労働者には、医師や保健師の指導を仰ぎ、業務量の調整や負担の軽減、または休業などの措置をとる必要があります。

3-3 医師との面談をもち、判断を仰ぐ。

ストレスチェックの結果、高いストレスを感じている労働者に対しては、医師と面談する時間を設け、現在の仕事量減少や時間外労働を無しにする、休業させるなどの判断を仰ぎます。

3-4 職場以外での環境の変化による場合、仕事量を調整する

1-5の候でも述べましたが、社員のストレスの原因は職場ばかりとは限りません。プライベートで大きな変化があり、それがストレスになっていることもあります。

結婚や引っ越しなどプライベートで大きな変化があり、従業員に通常と違う変化が見られたら、従業員への面談を行います。そこで本人の希望があれば、環境の変化が落ち着くまで、仕事調整するなどの措置をし、メンタル不調を未然に防ぐようにします。

4、メンタル不調予備軍の社員に気がついたら

メンタル不調に陥る前には、事前になんらかの兆候が表れることが多いと言われています。なんとなく様子がおかしいと感じた場合、すでにメンタル不調が始まっていることも考えられ、放置しておくと、メンタル疾患へと移行しやすくなります。うつ病などのメンタル疾患にかかると長期に渡る治療が必要となり、長期間の休業や退職などになってしまう可能性があり、本人にとっても会社にとっても大きな損失です。

4-1メンタル不調予備軍とは

メンタル不調予備軍の特徴としては、次のようなものが上げられます。

  • 頭髪がボサボサ、服装が乱れるなど清潔感がなくなってきた
  • 遅刻や早退が増える
  • 呼んでも反応が鈍い
  • 会話しなくなった、笑顔が見られない
  • 些細なミスが多くなった
  • 納期に遅れがちになった

上記のような様子が見られたら、短期的なものなのか、注意深く見守る必要があります。

4-2 メンタル不調予備軍からメンタル疾患へ移行しないために

メンタル不調予備軍の方が、メンタル疾患に移行してしまうケースでは、

下記のような問題があげられます。

① 上司や同僚から嫌がらせをされており、会社環境が相談しにくい状況である。

② 人手不足で休める状況にない

③ 社内の相談窓口が機能していない、社外の相談窓口を知らない

④ 本人がメンタル不調に気付いていない

⑤ 本人が不調に気付いていても、休まない

上記の①~③にかけては、社内の問題であり、④~⑤については、第三者からの働きかけが必要です。

①の問題については、相談相手であるはずの直属の上司がメンタル調の原因そのものになっているので、ストレスの元になっている上司から引き離すことです。

組織変更や配置変換などの対応がすぐに難しいケースでは、配席レイアウトの変更をするだけでも、違いがあるでしょう。また上司自身に対しても会社からの注意が必要であり、改善が見られなければ降格などの措置も必要なケースも考えられます。

②人手不足なうえに、ただでさえメンタル疾患者が出れば、業務全体の縮小や廃止に追い込まれることがあります。部署全体で仕事の効率化を図るなど、高ストレス者が休みやすい環境になるように柔軟な対応を取るようにします。

③社内の相談窓口が機能していない、社外の相談窓口を知らないというケースでは、まずは外部の相談窓口を張り出す、社内HPへ掲載するなど、始めやすいとところから行いましょう。

④や⑤など、何となく調子の悪そうな社員がいることが判明した時は、まずは部署内で調子の悪い社員の負担を減らすようにし、人事部署への対応を相談してみると良いでしょう。

5、人事部署が行うメンタル不調予備軍が発生した部署への対応

定期的なストレスチェックや勤務状況から、メンタル不調予備軍が発生した場合、会社組織全体で問題を考える必要があり、その対応窓口となるのが、人事部署です。メンタル不調予備軍が発生した場合の、人事部署としてすべきことを見ていきましょう。

5-1 本人や上司との面談

職場のストレステストで、高ストレス状態であると医師が判断され長時間労働が続いている社員がいる。もしくは、社員本人から職場の人間関係でトラブルがあり悩んでいるような場合、本人や上司と面談を行い状況の確認を行い、業務量の見直しや効率化などを行います。

5-2 医師や保健師に相談する

高ストレス者について会社側は、休業を提案したり、専門医の診察を勧めるなどの措置が必要です。遅刻や早退が増える、作業能率が悪くなった社員の対応についても、会社側から産業医や保健師に相談しメンタル不調予備軍の社員の負担が大きくならないように努めます。

5-3 思い切って休業させる

メンタル不調に陥りやすい社員は、日頃からまじめで頑張りすぎてしまう傾向があります。もしストレスチェックで医師から高ストレスという結果が出ており、疲れや作業能率の悪化が見えている社員がいたら、思い切って休業をさせてしまう方法もあります。

人事部としては、有給休暇がなくても長期に休む場合は健康保険組合が行っている「傷病休業制度」があること、給与の代わりに補償があること説明し、安心して休んで貰えることを説明しましょう。

5-4 メンタル不調者が出た原因に対処する

休業者が発生すると、その部署の労働力はマイナスとなります。新たに人を増やさずに、部署全体の作業量を見なおし効率化を図るケースは多いでしょう。これはメンタル不調における休業だけではなく、育児休業や介護休業でもよく聞かれます。人の補てんをせずに、現在いる人員で作業を乗り切ろうとする方法は、実はとても危険な方法です。

メンタル不調者が発生した職場ということは、長時間労働が日常的に行われていた、ノルマが厳しいなどメンタル不調が起こる何らかの理由があったはずです。すでに部署全体が疲弊している状態で、人員がマイナスになっているのですから、そのままの状態でいると、第2、第3の休業者が発生する可能性があるのです。

休業者が発生した場合は、他部署から応援を求めたり派遣社員を採用するなど、人員の確保に努めるようにします。

また休業していた労働者が復帰する際には、産業医やかかりつけの医師とよく相談の上、短時間勤務で少しずつ負担の少ない業務から開始できるようにしましょう。

6、まとめ

いかがでしたでしょうか。

今回は、メンタル不調になってしまう社員を防ぐ方法について見てきました。メンタルヘルスに対する対策については、職場でのストレスチェックの実施など政策も進んできてはいますが、まだまだ長時間労働や休日出勤などが続いている状況です。

2019年4月から働き方改革法がスタートし、長時間労働の是正や年次有給休暇の5日取得義務、同一企業における同一労働同一賃金など賃金格差の解消を目指すといった内容です。長時間労働の是正や年次有給休暇の取得義務があるということは、一人一人の労働時間が今までより減少するになります。ただし、業績を保ち続けなければ、会社が傾いてしまいます。これを解消するには単なる作業能率の効率化だけではなく、新たに人を雇い仕事量を分担する必要が出てきます。

メンタル疾患での休業は長期に渡ることが多く、会社にとっても本人にとっても大きなダメージを受けることになります。

作業量を調整し、一人ひとりの力量にあった仕事量であるか定期的に見直しを行い、ワークライフバランスの取れた働き方を目指しましょう。

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