HRテックで従業員の健康管理サポート

近年、長時間労働やストレスによる健康被害が問題視されてきました。

働き方改革がはじまり、長時間労働の是正や有給休暇の5日間の取得義務などが始まり、プライベートと働く時間とのワークライフバランスを保とうとする動きが出てきました。

働き方改革が始まった背景には、日本の労働人口の減少が懸念され、テレワークやサテライトオフィスの導入など、今まで育児や介護などで働くことが難しかった人が、働きやすい環境づくりをし、限りある人材を有効に活用しようということから始まりました。

この働き方改革に伴い、注目を集めているのがHRテックです。HRテックは

HRテックとは、(ヒューマンリソーシス テクノロジー)の略の事で、日本語で言うと人事や人材労務の事を指します。

HRテックは大量のデータ分析やクラウド、ITなどテクノロジー技術を使い、採用や配置、教育など、人材開発を効率的に行うおとするものです。

近年では、採用管理や人材教育だけではなく、勤怠管理や給与計算や社会保険業務の自動化、健康管理など福利厚生分野でもサービスの幅を広げています。

今回は、大きな発展を遂げつつあるHRテックサービスを利用した健康管理サポートについて、ご紹介いたします。

  

1、会社が社員の健康の為にしなければならないこと

会社は、従業員の健康管理を行う必要があり、労働安全衛生法では、従業員の健康診断の実施が義務付けられています。

健康診断にはいくつか種類があり、健診では受けなければならない項目が定められており、費用負担も会社に負担義務があります。健康診断に加え、2015年から従業員が50人以上いる事業所については、ストレスチェックが義務付けられました。

ストレスチェックの面談は産業医や保健師など医療従事者の仕事になり、本人の希望があれば企業側は、ストレスチェックを受けさせなければなりません。

健康診断業務は、従業員の健康管理を行う上で大切な業務ですが、健診日のお知らせや日程調整、健診業者の選択、結果の通知や二次健診者へ連絡など多岐に渡ります。

・1-1 健康診断の種類

健康診断には、いくつか種類があり、①雇い入れ時、②定期健康診断、③特定従事者健康診断、④海外派遣労働者などです。

①雇い入れ時の健康診断は、入社の際までに従業員からあらかじめかかりつけ医で定められた項目について、健診を行い、結果を会社へ報告してもらうものです。

②定期健康診断は、常時雇用する社員について年に1回行う一般的な健康診断です。健診方法としては、提携している健診業者に来てもらい受診する方法、各自かかりつけ医で検診してもらう方法、提携業者で人間ドッグを行う方法などがあります。

③特定従事者健康診断とは、厚生労働省のHPでは次のようになっています。

労働安全規則第13条第1項第2号に掲げる業務のことで、下記の項目に該当する業務に従事する従業員が6か月ごとに受診する必要があります。

イ 多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務

ロ 多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務

ハ ラジウム放射線、エツクス線その他の有害放射線にさらされる業務

ニ 土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務

ホ 異常気圧下における業務

ヘ さく岩機、鋲打機等の使用によつて、身体に著しい振動を与える業務

ト 重量物の取扱い等重激な業務

チ ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務

リ 坑内における業務

ヌ 深夜業を含む業務

ル 水銀、砒素、黄りん、弗化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、か性アルカリ 、石炭酸その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務

ヲ 鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗化水素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリンその他これらに準ずる有害物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務

ワ 病原体によつて汚染のおそれが著しい業務

カ その他厚生労働大臣が定める業務

(厚生労働省ホームページ 労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょ

うより 引用)

③特定従事者健康診断とは、鉛業務や有機溶剤など有害業務に従事する労働者に対して行われます。

④海外派遣労働者の健康診断とは、従業員を海外に6か月以上派遣し様子とするときと、海外派遣後、帰国する場合に行う必要があります。

主な項目としては、身長、血圧、体重、腹囲、視力や聴力、胸部エックス線、尿検査(尿糖、尿たんぱく)、心電図、血液検査(貧血、肝機能、血中脂質、血糖)があります。

・1-2 健康診断の項目

健康診断には、それぞれ受けなければならない項目が決まっています。

企業に勤務しているほとんどの方は「定期健康診断」を受けなければならないことになっています。

ここでは、働いている皆さんに関係のある「定期健康診断」で受けなければならない項目を説明いたします。

①身長、体重、血圧、腹囲

②視力検査、聴力検査

③血液検査(貧血、肝機能、血中脂質、血糖)

④尿検査(糖とたんぱく)

⑤既往歴および経歴

⑥自覚症状や他覚症状の確認

⑦心電図

⑧胸部エックス線

提携している病院や健診業者で定期検診を受診する場合は、上記①~⑧について含まれていると思われますが、従業員のかかりつけ医にて、自分で受診する場合は、上記項目がすべて含まれているかしっかりと伝えましょう。

・1-3 定期健康診断を行う従業員の範囲

健康診断を受診するのは、正社員だけではありません。

パートやアルバイトなどの有期雇用契約の方でも1年以上の雇用が見込まれているもの、もしくは1年以上雇用している従業員のうち、正社員の4分の3以上の所定労働時間で勤務している方は、健康診断を受診させなければならない決まりになっています。

ただし、パートやアルバイトなどの有期雇用契約社員でも、所定労働時間が正社員の2分の1以上の方は健康診断を受診することが望ましいでしょう。

また定期健康診断後、退職予定の方でも会社は受診させる義務があります。

・1-4 結果の通知と保管期間

定期健康診断受診後、結果を本人へ知らせる必要があります。また従業員がかかりつけ医で定期健康診断を受診した場合は、結果を本人から会社へ提出する必要があります。

定期健康診断の結果は、5年間保管義務があります。

・1-5 労働基準監督署への報告

健康診断は、従業員にただ受診させれば良いというものではありません。常時雇用する従業員が50人以上いる場合は、管轄の労働基準監督署へ報告する必要があります。

・1-6 二次健診の案内

定期健康診断受診後、要所見項目や要再検査の結果となる場合があります。その際には、従業員に対して二次健診を受けるように通知する必要があります。

会社は二次健診を従業員へ受診させる義務はありませんが、労働安全衛生法第66条の4の項目では、健康診断でなんらかの要所見項目が見つかった場合、産業医やかかりつけ医などに意見を聞かなければならないと言う義務があります。

よって、二次健診についての義務はなくても、従業員について安全配慮義務があります。仕事内容によっては、配置転換や就業時間についてなんらかの配慮が求められるでしょう。

2、義務化されたストレスチェック制度

今までいろいろな健康診断について、見てきました。

身体的な健康診断については、制度が整ってきたものの、近年では長時間労働やパワハラ、ストレスからくるうつ病などのメンタルヘルス疾患が問題になってきました。

そこで、導入されたのが2015年からスタートしたストレスチェック制度です。ストレスチェック制度は産業医や保健師など専門医療従事者がストレスチェックを行い、結果についても会社当てではなく、ストレスチェックを行った医療従事者から本人へ通知されます。

会社側は、プライバシーの問題から本人の同意なしに、ストレスチェックの結果を見ることが出来ません。

常時労働者が50人以上いる事業場おいて、

・2-1 ストレスチェック制度の目的

ストレスチェックの大きな目的はストレスへ気づき、メンタル不調に陥ることを、未然に防ぐことです。

長時間労働や過度なノルマなどによるストレスから、メンタル不調に陥り、うつ病などのメンタル疾患になると長期的な休業なり、本人にとっても会社にとっても経済的な損失が大きくなります。

ストレスチェックを定期的に行う事で、自分のストレスの度合いや長時間労働や仕事量が適正かどうかなど、従業員本人がストレス度合いを客観的にみること、ストレスチェックの結果を集計し、職場ごとグループごとに見ることで、職場におけるストレスの要因を見つけ、職場環境全体の改善につなげることです。

・2-2 ストレスチェックと健康診断との違い

健康診断もストレスチェック制度もどちらも従業員の健康管理のため、労働安全衛生法で定められているものです。

健康診断では、身体的に不調が起こっていないか診るための検査です。ストレスチェック制度は、ストレスや疲れからくるメンタル不調に気付き、メンタル疾患を事前に防ぐためのチェックです。

どちらも、従業員が心身の不調に早めに気づき、健康に働くために大切な検査と言えるでしょう。

・2-3 高ストレス者には医師による面談

ストレスチェックは、自分でストレスチェックシートを使用し、チェックを行います。ストレスチェック後、産業医や保健師など医療従事者が面談を行います。

ストレスチェックで高ストレスと診断され、本人が産業医や保健師などの医療従事者と面談を希望する場合、会社は社員を産業医や保健師などの医療従事者と面談を受けさせる必要があります。

・2-4 勤務時間や仕事量の調整など

高ストレス者やメンタル不調の状態だと思うわれる従業員に対しては、勤務時間の短縮や仕事量の調整などを行う必要があります。

近年では、テレワークなど在宅ワークを取り入れる企業もあり、育児や介護休業だけではなく、体調不良により通勤が難しい社員や長期休業から復職するまでの間の準備段階として、テレワークの導入や短時間勤務を行っている企業もあります。

3、HRテックを利用した健康サポート

今までは、企業における従業員の健康管理について説明して参りました。

従業員の健康管理は、定期健康診断の実施やストレスチェックが必要になってきます。

また、こうした定期的な健康チェック後は、ただ健康診断を受診するだけではなく、所見項目が見られた場合は医師による意見を聞く必要があります。

また、従業員が50人以上いる企業では、産業医の選任および、労働基準監督署への結果を報告する義務があります。

こうした従業員の健康管理業務は、健康診断の実施の日程調整からはじまり、従業員への健康診断実施の案内、健康診断の実施、結果の配布や要所見者への産業医の意見を聞く、従業員50人以上の企業では、労働基準監督署への結果報告書の作成など多岐に渡ります。

最近では、HRテック技術の発展に伴い、健康管理サポートをサービスする企業も出てきました。HRテック技術を利用した健康管理サービスの主な特徴としては、下記のような点が挙げられます。

・3-1 オンラインを使用した医師面接

健康診断後、要所見項目が見られた従業員に対しては、医師の意見を聞くことが求められていますが、遠隔地事業所や小さい規模の事業所ではなかなか医師の面接を行うことが難しいことがあります。

オンラインを使用した面接では、場所や時間を選ばず面談を行えるというメリットがあります。

・3-2 健診データの一元管理化

HRテック技術を用いて、従業員情報と共に健康診断のデータ管理や分析を行うことが出来て、従業員一人一人に沿った健康管理を行うことが出来ます。

・3-3 アプリやチャットを利用した健康管理サポート

アプリを利用したストレスチェック機能や、チャットを利用した専門医によるアドバイスなどで健康管理をサポートすることが出来ます。

4 HRテック技術を利用した健康管理サービスの紹介

オンライン産業医や健康管理などHR技術を利用した健康管理サービスを展開している企業をいくつかご紹介いたします。

・4-1 オンライン産業医「first call」

株式会社Mediplatが行っている、オンライン産業医面談やストレスチェックなどをサポートしてくれるサービスです。

こちらのサービスの利点としては、主に4つほど挙げられています。

①時間や場所を選ばず、産業医と面談が可能な事

②費用がリーズナブルな事

③スケジュール管理が楽な事

④従業員自身がチャット機能を使用し、気軽に医師に相談できる事

地方や遠隔地で産業医との面談に時間がかかる従業員に対しても、パソコンのオンラインを使用することで、面談にかかる移動時間や場所を気にせず、産業医と面談をすることが出来ます。

費用についても、産業医の派遣や面談などのサービスを行っている民間企業より、リーズナブルな価格設定でサービスを展開しています。契約内容によっては、産業医だけでなく、専門医による症状別チャット相談やスマホアプリによるストレスチェックサービスも行っています。

・4-2 ベネフィットステーションNEXT

株式会社ベネフィット・ワンが運営する福利厚生代行のサービスです。

契約企業の従業員は、育児や介護、レジャーなどの生活に関する割引優待サービスをはじめ、ポータルサイト上で従業員の健康診断データの管理、楽しみながら行える健康ポイントプログラムなどのサービスがあります。

特に健康管理ついては、健康診断のデータを保管することができ、データをもとに将来の健康リスクやアドバイスを確認することが可能です。また、専門家による日常生活で役立つ健康情報が定期的に提供されています。

その他にウォーキングの歩数によるポイント制度などを設け、貯まったポイントを健康に関する商品との交換やイベント参加などに利用することが出来るなどのサービスを提供しています。

5、ま と め 

いかがでしたでしょうか。

今回は、HRテック技術を利用した健康管理サポートの情報についいてご紹介して参りました。

従業員の健康管理は、会社が行わなければならないことですが、従業員数の多い企業や、健診日の日程調整やデータ管理などでも、時間が取られること多く、こうした健康管理についてもより効率化が求められるでしょう。

従業員の健康管理を行うことは、未来の健全な会社経営の継続へとつながります。企業では、幅広い年代の方が在籍しており、年齢や性別、生活習慣や従業員の意識によっても健康へのアドバイスもより個々に合わせたものになってくるでしょう。

HRテックによるサービスを利用することで、日程調整などの業務内容の効率化や健診データ管理の向上化、一人一人にあったよりきめ細かい健康管理を行うことが可能になってきました。

こうしたHRテック技術を利用した健康管理サービスを取り入れてみることで、

より効率的は管理を行うことができるのではないでしょうか。

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