HRテックで働き方改革 具体的な導入例

はじめに

最近人事業務に携わる人の中で話題になっているのが、HRテックです。HRテックという言葉はさまざまなメディアにも登場しているので聞いたことがある人も多いでしょう。HRテックを活用することで人事担当部門は、従来の仕事を省力化することができます。これは、2019年4月1日から順次施行される、働き方改革関連法に対応するためにも注目したいものです。HRテックを導入してどのような働き方改革ができるのか、知っておきましょう。

  

1.HRテックは急速に広がっている

HRテックとは、「ヒューマンリソーステクノロジー」のことで、人事管理や採用、労務管理や給与計算などの人事業務をAIなどテクノロジーの力で置き換えたサービスです。従来、人事業務は人の手でやることであり、それを抜本的に省力化することは難しいとされていましたが、クラウドサービスの環境が整ってきたこともあり、かなり省力化できるようになりました。

もともとHRテックは欧米で広く取り入れられたこともあり、グローバル展開をする企業のためのものでしたが、現在では大手企業はもちろんのこと、主に国内市場を展開しているような中小企業にまで広がってきています。HRテックを導入することで、採用業務一つをとっても工数が40%程度は少なくとも削減できたという実績があり、導入コストを上回る成果を出しています。

特にHRテックが急速に広がってきている側面として、国内では年間数百もの新たなサービスが生まれてきており、そのなかで自社に必要なものに絞って取捨選択できるという背景があります。必要なプログラムを取り入れるのであればコストも削減されますし、新たに人を雇うよりも生産的です。特に近年売り手市場となり優秀な人材を確保するのが大変になってきた背景もあるため、AIに任せられるところは任せようと、HRテックを導入する会社が増えてきたのです。

2.働き方改革関連法とHRテック

働き方改革関連法は、2019年4月から順次導入されており、時間外労働の上限規制や年次有給休暇取得の一部義務化、フレックスタイム制の見直しなど長時間労働の是正や多様な働き方を認めることを第一に、雇用形態にかかわらず公正な待遇を確保すること、そしてそれらを継続的に推進するという3つの観点から成り立っています。内容によっては罰則もあることから、従来は職場任せにしていた企業でも、こういった取り組みを人事部主導でやっていかなければなりません。

そもそも、時間外労働一つをとっても、いまだ旧式のタイムカードや自己申告で行っている企業も少なくありません。時間外労働にせよ有給休暇にせよ、まずは企業自体が従業員の動向を確認しなければなりません。そういったときに勤怠管理のできるHRテックを導入することで、人事部や経営者があらゆる部署の労働実態について真実を把握できるようになります。悪質なサービス残業を防止して法律を守るというリスクマネジメントの観点からもHRテックを導入することは意義があります。

加えて、年次有給休暇の取得義務化やフレックスタイム制を導入するにあたっても、HRテックを使えば労力がさほどかからず実態把握や有給取得、フレックス出勤を促進できます。加えて、育児や介護、自身の闘病などで通勤が難しい職員には、リモートワークなど多様な働き方をすることで労働力の流出が防げます。多様な働き方を促進するという働き方改革ですが、実際にシステムがないと多様な働き方はできません。HRテックを導入することでリモートワークをする人の勤怠管理もできるようになるのです。

さらに、人事部自体の労働時間削減にもつながります。採用業務や年末調整、労働保険料の算定、納付など時期によってはかなりの残業を強いられるのが人事業務です。しかしながら、HRテックを導入することで人事部の業務もかなり削減できます。AIを導入すると面接試験も行ってくれますし、給与計算から労働保険料の計算、年末調整まで社員が必要項目を入力するだけで自動的に行えます。HRテックは人事スタッフの働き方改革にも寄与するのです。

3.採用活動にHRテックを導入

人事部門の長時間労働の原因の一つ、それが採用活動です。売り手市場が依然続いているにもかかわらず、学生の大量エントリーの傾向は基本的に変わることはありません。会社説明会から書類選考、面接試験というように採用母数絞り込みの段階でかなりの工数を必要とします。HRテックを導入することで、これらの工数を爆発的に削減できます。採用現場においても、会社説明会、書類選考、面接試験それぞれの工程においてHRテックが導入されています。

まず、Web会社説明会です。会社説明会の会場を取り、学生に告知し、そして実際に説明会を行うといったことを全国何か所でもやらなければなりません。ですが、ウェブ説明会であれば自宅でパソコンの前に座っているだけで説明会を受けられます面倒なスケジュール調整もいらないので、学生にとってもメリットがあることです。Web会社説明会であっても、SNSと連動することによって質疑応答ができます。会社によっては、AIが先輩社員になって、OBOG訪問をバーチャルで行うというところもあります。こうすることにより、応募者の母数を減らすことなく工数だけ削減出来ます。

また、応募者にとってあまり抵抗のない書類選考をAIによって判断するといった方法もあります。あらかじめ求める人物像や書類審査の基準、そして書類選考を通過し活躍している人の書類などをプログラムに載せており、AIで書類選考をしても人の手と変わらないくらいの選考をすることができます。手間のかかる作文や小論文の選考についても、HRテックを導入してAIによる選考を取り入れている会社もあります。小論文や作文は、受験者の本気度を見ることができる試験ですが、採点基準が曖昧なだけでなく選考に時間がかかるという欠点があります。AIを使うことによりそういった欠点をフォローできるのです。

面接試験においても、一次面接であればAIによる面接を取り入れているところもあります。面接試験の問題点として評価者によって評価が割れることもありますが、AIを使えば基準に沿った人材を採用することが出来、評価の不公平感もありません。面接者にとっても、スケジュール調整などの手間もいらず、Web面接であれば会社まで出向くことも必要ありません。

加えてそもそもの問題として、自社にどういった人材があっているかわからない、ということもあります。しかしながら、最新のシステムを使えば膨大な社員の採用時データなどから自社にどういった人材がマッチ七得るのか一定の基準を示すこともできます。ターゲットが定まれば採用活動も楽にできます。

4.アルバイトの採用支援サービスにHRテックを導入

採用から研修までを一括して支援するアルバイトの採用支援サービスも、導入することでかなりの工数削減になることもあります。たいていの飲食店や小売店においては、アルバイトの採用、面接、教育については現場の裁量に任されており、それが現場の長時間労働を生んでいるのが実情です。働き方改革では、これら恒常的に残業時間が多い業界や業種においても、一定時間以内に残業時間を抑えないといけないことから現場での改革は急務になります。HRテックにおけるアルバイト採用や研修システムを導入することで、現場の負担を減らすことができます。

求人の応募があったとしても、現場が営業中であれば対応ができないことも多いです。しかしながら、このシステムを導入することで、問い合わせがあったアルバイト応募者の面接日程の調整、書類選考など厄介な手続きをすべてシステムがやってくれます。アルバイト応募者とはチャットで24時間やり取りでき、問い合わせに答えることもできます。アルバイトにありがちな勤務可能日との調整も、HRテックを導入することで簡単にでき、アルバイトを採用したけれどシフトの関係で働けない、結果辞めてしまうといったミスマッチも少なくなるのです。

たとえアルバイトを採用できたとしても、職場で戦力となるための研修などが大変です。しかしながら、HRテックを導入することで現場の負担を軽減できます。たとえば、イーラーニングなどで事前に研修できる部分は教育しておき、それから仕事に就くことができます。即戦力化へ近づくので、現場の負担を少しでも軽くできます。

5. 労務管理にHRテックを導入

労務管理にHRテックを導入し、就業時間を正確に管理する方法があります。せっかく人事部でしっかりと労働時間を決めていても、現場では慣例があって守られていないというコンプライアンス違反が散見されますが、HRテックを導入することで出勤退勤手続きからダイレクトに労働時間を算定できます。サービス残業を防ぐことができるだけでなく、それが労働時間の管理、それから給与計算や労働保険の算定、年末調整などにダイレクトにつながっていくと人事部の工数削減にもつながります。そうやって工数削減されたところを人事戦略などに使うことにより、より有益な組織運営ができるようになります。

また、交代勤務で働いているようなところは、従来人の手で行われていた人事管理やシフト管理システムにおいてHRテックを導入することで自動的に行うことができます。休日数や出勤できない日、出勤時間などを入力することで自動的にシフトを作成してくれるので現場の労働工数削減になります。働き方改革においては、有給休暇の一部取得義務化が言われていますが、こういった休暇をきちんと取っているか人の目で確認しなくても、システムを使えば自動的に付与することができます。

働き方改革においては、コンプライアンス順守なども大切になってきますが、人事部がすべての現場の状況を把握することは大変なことです。しかしながら、きちんとした職場運営ができているのかを把握するうえでもHRテックが力になります。HRテックを導入することで、従来であれば把握が難しかった海外の支店に属する社員の勤怠管理や給与計算も日本にいる従業員と同じようにできるようになります。

加えて、産前産後休暇や育児休業、介護休業などの法定手続き及び給付金手続き、社員の異動に伴う手続きについてもHRテックを導入することで届け出まで従業員とシステムの間でできるようになります。人事の手を介在せず人事は認証だけになりますので、その分の労力が削減され、多くの会社で導入されています。

6.クラウドを活用することでHRテック導入がスムーズに

HRテックを導入する会社が増えてきているのは、クラウドサービスの普及と関連性が高いと言われています。企業と個人を結び付けるクラウドサービスが登場し、そのことで会社と個人、会社と応募者のコミュニケーションツールも変わってきつつあります。クラウドサービスをつく合うことで応募者と事前に接して人柄をチェックすることもできます。

今までは企業の財産であった個人のデータもクラウド上に保存されており、一瞬で検索できるので、人事異動についてもスムーズに行えます。たとえば新たに立ち上がるプロジェクトがあり、そのプロジェクトに必要な資質を言われてすぐに検索出来、ふさわしい人材をピックアップできます。

クラウドデータを活用することで、必ずしも働く現場が会社に限らず、リモートワークの普及を後押しすることもできます。実際にリモートワークを想定したHRテックのシステムを導入することで、働き方改革の一つの柱である「多様な働き方」を実現することもできます。優秀な人材を確保するためには、在宅ワークやリモートワークなどの体制を整えることが必要不可欠ですが、こういったこともHRテックの導入でできるようになるのです。クラウドシステムが一般的になってくるにつれ、HRテックの導入も飛躍的に伸びてきます。

7.新しいHRテックサービスにはどのようなものがあるのか?

HRテックを導入する企業は増えてきています。最近では採用選考プロセスを一元管理できるようなシステムを導入し、マッチする人材を適切に採用することが出来るだけでなく、社員管理システムと連動させて、入社したらその後のキャリアも一括管理することができるシステムもあります。勤怠管理もでき、煩雑な事務に追われることがなくなります。

新卒採用だけでなく、技術職の中途採用についても、効率的に採用できるHRテックシステムが開発されています。特定の分野の技能を持つ中途採用希望者をデータベースから抽出でき、そこから採用へとつなげるシステムで、人材を開拓するところからやらなくてよいので、企業の課題である中途採用についても簡単に行えます。また、多店舗展開しているようなお店の採用から従業員管理までを一元的に管理するシステムもあります。店による人員や能力のばらつきをできるだけなくし、管理も一元化できるようになるのです。

また、スタッフ育成トレーニングができるようなHRテックのシステムもあります。社員だけでなくアルバイトにおいてもイーラーニングなどを活用して研修ができます。加えて、社員とアルバイト、本社とのコミュニケーションシステムの開発も進んでいます。小売店や飲食店においては、本社からの指示については管理職を通じて若手社員やアルバイトなどに伝えていましたが、システムを使うことでダイレクトに共有でき、管理職が休みの時でも対応できるだけでなく、現場での事務の煩雑さが減ります。

社員教育をAIが行うといったシステムも開発されています。AIが自動で教材コンテンツを作成し、その人にあったプログラムを実施することができます。従来であれば、新卒採用者には同じような研修が行われ、人によっては知っていることでも研修を受けなければならなかったのですが、無駄を省いた研修ができるようになります。そのため、早めに即戦力化でき、研修担当部門や現場の負担を少なくできます。このように、一つ一つの現場及び人事部門の労働工数を削減することにより、働き方改革になくてはならない法令順守、長時間労働の抑制、多様な働き方の導入ができるようになるのです。

おわりに

働き方改革関連法案が施行されたことから、人事部においても採用業務や給与計算業務といったところ工数を削減し、長時間労働を避けることはもちろん、会社全体を働きやすくすることが必要です。そういったときにやくだつのが、HRテックです。HRテックはクラウドサービスの定着とともに日々そのサービスを進化させています。加えて、多様な働き方の導入にも役に立ちます。HRテックサービスにはさまざまなものがあり、まだ開発されていますが、自社に必要な部分だけを取捨選択して使うことが出来るので、経済的ですし人気になっています。HRテックを使って働き方改革に取り組む企業が増えてくることでしょう。

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