働き方改革の施策としてHRテック導入が不可欠! 生産性とエンゲージメントを上げるためには?

政府が発表した「働き方改革」は、日本の新しい働き方の方向性を示したものです。これに対応すべく各企業では取り組みに追われています。「働き方改革」を行うためには多くの課題がありますが、HRテック導入がその解決となることが期待されており、注目を集めています。特に最近注目されたのが「エンゲージメント」という言葉です。「エンゲージメント」は会社と社員が一体となってお互いの成長に貢献し合う関係性を指します。働き方改革にはこのエンゲージメントを向上させることが多くの問題解決の糸口となることが指摘されています。そこで今回は、「働き方改革」を再度確認してからHRテック導入により企業が得られる効果を見ていきます。また、働き方改革の課題解決のためのキーワードである「エンゲージメント」にも触れてみたいと思います。

働き方改革を再度確認する

2016年9月、「新しいこの国のカタチ」ともいえる新たな取り組み案が提唱されました。それが「働き方改革」です。内閣官房に働き方改革実現推進室を設置し、新しい働き方の方向性を打ち出しました。ここでその働き方改革の目的と課題とその取り組み事例を改めて確認したいと思います。

働き方改革を打ち出す背景

現在日本では、労働力の主力となる「生産年齢人口」が非常に速いスピードで減少しています。その大きな理由は少子高齢化です。内閣府が発表している推計によると、2050年に日本の総人口は9000万人、さらに驚くことに2105年にはその半数となる4500万人まで減少するという数値が発表されているのです。改めて考えると100年先には日本の人口が現在の1/3までに減るというのはなかなか衝撃的な数値ではないでしょうか。では、労働力人口で考えてみましょう。一般的に労働力人口というのは15歳以上の労働する能力と意思を持つ者を指します。日本の労働力人口のピークは1995年の約8000万人であり、それ以降は減少しています。2019年現在の労働力人口は約7500万人となっています。労働力人口の予測としては、総人口を上回るスピードで将来減少するだろうといわれています。このままでは「日本の国力低下は避けられない」としてこれを改善すべく、働き方改革は提唱されたのです。

働き方改革の課題とは何か?

「一億人総活躍社会」を実現するための働き方改革の目的は理解できたと思います。ではその目的を解消するためにはどういった社会をつくる必要があるでしょうか。主に3つあるとされています。それは①出生率の上昇、②働き手の人口を増やす、③労働生産性を向上させる、の3つです。それらを実現するためには多くの課題をクリアする必要があります。それぞれについて詳しくみていきましょう。

<課題1、長時間労働の改善を行う>

世界的に見ても日本の長時間労働は深刻な問題で、特に30~40代の負担が非常に大きいというのが現状です。同時に30~40代の長時間労働は、出生率の低下にも大きな影響があります。安倍首相は「モーレツ社員という考えが否定される日本」を提唱しており、国をあげて長時間労働の改善を行う必要性を強調しています。現在の日本では企業が社員に残業をさせる場合には労使協定書である「36協定」が必要となります。36協定では1ヶ月45時間、1年間360時間までの制限を設けています。しかし、労使合意があれば特別条項の条件を満たすために多くの企業において「36協定」は形骸化しているのが実情です。このあたりの根本的な見直しが必要なのでしょう。

<課題2、労働人口を増やすために高齢者の就労を促進させる>

65歳を超えても働きたいとする高齢者は非常に多いのですが、実際に働いている高齢者は20%ほどしかいないのが実情です。少子高齢化社会を迎えている日本ではこの高齢者をいかに就労促進させることができるかということが重要です。高齢者がスムーズに就労できるようにするには、①65歳を超えても働ける雇用延長、②高齢者の人材活用の場の拡大、③高齢者の就労マッチング支援、の3つの施策が必要になるでしょう。単純な考え方として、働きたい65歳以上の高齢者が活躍できる場所をつくることが国の課題といえます。

<課題3、非正規社員の格差是正>

日本の社員の給与報酬を時間換算した数字を100%としたら、非正規社員は60%ほどの数字にしかなりません。もちろん家庭の事情もあるため、誰もが正社員で働くことはできませんが、日本の非正規社員は全体の40%を占めるために、この待遇などを検討する必要があります。欧米では非正規社員は正社員に対して80%ほどの時間換算数字になることから、このあたりを目標に格差是正を行う必要があります。

HRテックで働き方改革に取り組む

日本の1人当たりの労働生産性を数字化すると、年間750万円という数字になり、アメリカの約60%に留まっています。これはHRテックを導入していない企業が多いというのがその理由としてあげられます。アメリカでは、HRテックの普及は映画「マネー・ボール」の影響もあったとされています。「マネー・ボール」ではメジャー・リーグのアスレチックスを題材としており、その選手評価と起用の決定をHRテックによるデータ分析を基にして成功していくストーリーです。また、グーグルなどの超巨大企業がHRテックを積極的に活用している例もよく知られています。対して日本では、HRテック導入の象徴的なストーリーがあまりなく、人事としては「自分の仕事を奪うのがHRテック」と考える人も少なくないのです。超高齢化社会を迎える日本では、「少ない労働力でより多くの生産性」が求められることになります。そのためにHRテックを上手に活用し、働き方改革に合わせた動きが必要になってくるでしょう。では、具体的にどのような分野でHRテックの導入をすれば少ない労働力でより多くの生産性を実現することができるでしょうか。それぞれについて考えてみることにしましょう。

<総務・人事>

多くの中小企業では、未だに紙ベースで勤怠データを記録していることは珍しくありません。人事が月の締め日に残業をしてエクセルで集計作業を行い、上司が電卓で数値確認するという光景が日常になっている企業も多くあるでしょう。勤怠データを集計してみないと社員の残業時間が分からないケースも多く、過労状態であったことが後に判明することもあります。これではその時に適切な対応ができないため、人事としてはふさわしい対応ではありません。このような状況はHRテックを導入することで3つの問題を一挙に解消することができます。1つには、勤怠データの計算にかかる時間の短縮。2つめに、勤怠データのクラウド管理、3つめに社員の労務管理を注意喚起させるシステム、の3つです。人事の労働生産性を上げ、勤怠データを一元化させ、働き方改革の目的に沿った労働時間の管理化をすることが可能になるのです。

<労務管理>

前述したように「働き方改革」により労務のリスクは非常に高くなりました。適切な勤怠管理を行うことが多くの企業で求められています。紙ベースで勤怠管理をやっていることがすでにリスクを抱えることになるため、早急に労務管理におけるHRテックを導入は検討する必要があります。最近では、社員が抱える業務を「見える化」させその労働負荷状況を視覚的に把握できるツールもあります。労務管理のHRテックを導入することで、チームの生産性向上と労働時間の適正化、人事の業務圧縮などの効果を見込むことができます。

<採用活動>

採用活動はその企業に適した人材を採用するのが最終的な目的ですが、採用を行うのも人であるため、バラつきがどうしても出てしまいます。HRテックを導入することで、データに基づく求める人材を可視化することが必要で、経験則でなく根拠のある採用をすることが可能になります。現在では、応募・選考・評価・判定などを一元管理できるツールも登場しているため、採用担当はその業務軽減ができた時間を用いて採用ブランディング化を行うことが可能になります。現在は企業が「採用難」といえる時代であり、優良な人材を確保し社内に定着させるためには、積極的な企業PRと入社前と入社後のギャップをなくし、スムーズに新入社員が持つ力を発揮できるように教育を行うことが必要です。これらは、HRテックの得意とする分野であり、入社前のコミュニケーションツールの導入や入社後のe-ラーニング制度などを導入する企業が増えています。

<社内コミュニケーション>

働く時間、働く場所が違う社員同士が円滑にコミュニケーションを行うことはアナログでは不可能だといえるでしょう。多様な働き方を創出することが「働き方改革」の柱でもあるため、社内コミュニケーションをスムーズに行うための工夫は不可欠です。多くの企業で導入されている「Chatwork(チャットワーク)」というツールがあります。基本的にはチャットツールでありながら、ファイルの共有が可能でありタスク管理機能があるため、リモートワークのコミュニケーションツールとして有効です。ビデオや音声通話などのコミュニケーション機能もあるため、簡易的な打ち合わせも行うことが可能です。こういったコミュニケーションツールは多くの種類がありますが、導入には企業として明確な目的を持つことが重要です。現状の組織の課題を明確にし、HRテックを使うことでどう変えることを目的とするのかを戦略的に持つことが重要です。例えば積極的に社員同士の結びつきを橋渡しするツールもあります。「Unipos(ユニポス)」というツールでは、ピアボーナスという感謝の気持ちをポイント化して送ることで、社員同士のエンゲージメントを高めることが可能になります。

「エンゲージメント」が働き方改革の鍵になる?

会社と社員が一体となってお互いの成長に貢献し合う関係性を「エンゲージメント」といいます。エンゲージメントは離職率を下げることにも効果があり、非常に注目されている考え方です。HRテックの導入により、積極的に上げる仕組みを考えてみるもの良いでしょう。仕事は上手くいくことばかりではありません。仕事で失敗したときに乗り越えられるかどうかは「エンゲージメント」による部分も大きいのです。自分が勤めている会社や組織に思い入れを持って働くことはそれほど重要です。社員は企業や組織を通じて自分の成長することが実感できれば、エンゲージメントを高めることになるでしょう。特に今の若手社員は個人の成長やスキルアップに大きな価値を感じています。そのため、HRテックによるe-ラーニングの導入などは非常に効果的です。学習する環境を社員に提供することで職場定着率を向上させる効果があるとされています。これは、その学習によって社員がモチベーションを維持できたり、チームへの帰属意識を持つようになるためです。

また、エンゲージメントは企業の成果にも大きな影響力を持ちます。アメリカのコンサルティング会社であるタワーズ・ワトソン社の調べでは、エンゲージメントが高い企業はそれが低い企業に比べて営業利益率が平均して5倍ほども高いという調査の結果があるのです。エンゲージメントが企業の利益に直結するのは3つの理由があります。それぞれについて考えてみましょう。

<エンゲージメントが企業に与える効果 1.生産性の向上>

エンゲージメントが高い社員は、企業の取り組みや生産性の向上に努めることについて前向きな気持ちで取り組むことができます。それは、企業の問題点を自分のこととして捉えることができるためです。結局のところ、企業が生産性の向上をするアプローチを行っても、社員1人1人が懐疑的であったりする場合には、上手く運用できない場合もあるでしょう。本来的な意味で継続的な生産性を上げるということについてはエンゲージメントが大きく影響しているのです。

<エンゲージメントが企業に与える効果 2.リファラル採用>

リファラル採用という言葉は日本でも少しずつ定着し始めてきました。リファラル採用とは、企業の社員が自分の知人を社員として紹介することを指します。リファラル採用のメリットは、採用コストを削減しながら優秀な人材を獲得できることです。しかし、エンゲージメントが低い企業ではこうした動きが起こることはありません。社員が心からその企業に対で働くことに満足している状況でない限り、成立しないものなのです。

働き方改革で必要とされているのは前述したように、生産性の向上です。この背景には日本の労働人口が減少している背景があることは既に説明しました。それに伴い、そういった環境で企業が生き残るためには、安定して優秀な人材を採用でき、その人材が社内に定着することです。それら全てを解決する考え方としてエンゲージメントが影響しているのです。では、HRテックによるエンゲージメントのツールを紹介したいと思います。

<wevox(ウィボックス)により定期的なエンゲージメントを把握>

wevoxは、組織の状態を可視化するためのツールです。設定された日時にwevoxが独自の質問をアンケート形式で社員に自動配信し、回答を集計してくれます。これにより、チームごとの問題点を抽出してくれるため、定期的なエンゲージメントを把握することが可能になります。また、ほとんどの機能が自動であるため人事などがそこに対してかける時間を短縮してくれます。

<Employee Tech(エンプロイーテック)>

Employee Techは社員の感情データを解析し、クラウドシステムによって離職率の改善とチームの生産性を上げるためのツールです。「HRアワード2018」の「プロフェッショナル組織変革・開発部門」で最優秀賞に選ばれたため、その普及が加速しています。設問設定とアンケート配信、自動集計機能により、社員の感情を即時に分析するものです。社員のエンゲージメントやモチベーションの向上につなげることができるツールとして注目されています。

まとめ

さて、今回はHRテック導入した働き方改革への取り組みを考えてきましたがいかがだったでしょうか。最後にまとめてみたいと思います。

・日本の国力が低下する可能性があるため、政府は「働き方改革」を打ち出した

・日本の生産年齢人口は減少し続けるという予測が出ている

・「働き方改革」は①出生率の上昇、②働き手の人口を増やす、③労働生産性を向上、を実現させることを目指している

・「働き方改革」の課題としては①長時間労働の改善、②高齢者の就労、③非正規社員の格差是正、をあげることができる

・HRテックの導入が、企業の働き方改革に大きく寄与することが期待されている

・HRテックの導入により、生産性を上げ組織改革の問題点を可視化することが重要

・「働き方改革」はエンゲージメントの向上が必要不可欠な要素である

「働き方改革」が政府から打ち出されたことで、HRテック導入を積極的に検討する企業が増えてきました。他社の成功例や取り組みを研究し、企業の生産性とエンゲージメント向上を目指す取り組みを人事が率先して行うことが、「改革」への第一歩となるでしょう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。