AI採用って大丈夫?人事が不安になるAI社会

近年何かと話題になっているAI技術。そんなAIを採用に生かそうとする動きが大企業を中心として始まってきています。今回は、そんなAI採用に関わる具体例やメリット・デメリットについてご紹介します。

AIができること

まずはAIが人事の仕事の中でどのように活かすことができるのか、どのように実際に生かされているのかということについて見ていきましょう。大きく分類すると3つの分野に分けられます。

1.採用現場

おそらく一番AI技術の恩恵を受けやすいのが採用プロセスにおいてのAIの活用です。特に新卒募集の際に人事側の業務量負担を軽減することと、学生と企業のマッチング率を上げるという点について大きく活躍をしています。

日本の新卒一括採用の現場では、大企業を中心にある一定期間に大量の学生から募集が来る為、一時的に人事の業務量が増えてしまう傾向にありました。その為、人事は学生のエントリーシートや履歴書のチェックに追われ業務量が圧倒的に多くなってしまっていました。そこでAI採用を用いることで、エントリーシートのチェックをAIに任せることで負担を軽減することが可能になりました。さらには、従来のやり方ですと、評価基準が人事の各々に委ねられるため決して公平ではなかったと言えます。「顔採用」や「学歴フィルター」と呼ばれる言葉が生まれたのもそんな背景もあってのことです。AIに採用を任せることで贔屓の抑止力になります。

2.勤怠・労務管理

出勤管理などにもAI技術が活かされ始めています。働き方改革の影響も受け、残業が多い社員にアラートを出して残業を抑制したり、有給を確実に消化させるためにリマインドをするなどといったこともできるようになります。もっと進化していくと他の社員のスケジュール、タスクなどを分析し、有給を取得してもなるべく影響が出ないような日をAIが選んでくれることだってできるはずです。2019年4月より働き方改革関連法案の施行により、有休消化の義務化も始まったのでますます恩恵を受けることができそうです。

セキュリティの都合上、社員証で入退室管理を行っている会社が多いですが、AIを導入することで顔認証で入退室管理をする未来がやってきます。社員証の紛失なども防げるので一石二鳥です。しかし導入するにはオフィスの内装工事やビルのセキュリティなどが関わっているケースが多い為、今現在での普及率はそこまで高くありません。

また近年では企業の取り組みとして「健康経営」という概念も誕生しています。健康診断の結果を蓄積したり、残業時間から肉体的または精神的な負担を分析しアラートを出すなどをすることにより、会社員の健康を守るテクノロジーを活用している企業もあります。

3.評価制度

近年では、評価制度に関してもAIが活躍すると言われています。日々こなしたタスクやプロジェクトなどの実績データをためていくことで従業員を最適かつ必要なポジションに移動、昇進させることが可能です。勤怠管理などのデータを紐付けたり、それぞれの部署の管理者からのフィードバックなどをもとに評価基準を作成することが可能です。これが実現していけば、よくドラマや映画で見るような特有の派閥争いや社内政治などで頭を悩ます人も減っていくのではないでしょうか。

採用以外にも活躍するRPAとは

RPAとはRobotics Process Automationの略です。ロボットによってホワイトカラーにおける事務業などの単純作業を自動化するシステムです。よくメディアなどで騒がれている「AIで仕事がなくなる?」なんていう話と関係がある話です。厳密にいうとAIとRPAの定義は異なりますが、簡単にいうとAIはRPAの進化バージョンと考えておけば大丈夫です。事務作業における自動入力の作業などはRPAに分類されます。

これにより採用現場は大きく変わってくることは間違いないでしょう。いわゆる一般事務などと言われるような職種は無くなってしまうかもしれません。もちろんシステムの導入にも多額のコストがかかりますが、もはや永年で人を雇用するよりも安価に済んでしまう可能性もあります。

RPAの台頭により事務職を募集する必要がなくなる時代の転換期を迎える準備をしておいた方が良いかもしれません。

AI採用のメリット

採用の現場で活用することで得られるメリットは大きく分けて2種類あります。一つ目は業務の効率化という点です。今まで人間がやっていた仕事を全てAIに任せ、数時間または数日間かけていた業務内容が数分で終わってしまうのです。時間的なコスト削減だけでなく、今まで残業していた分の残業代を払わなくても良くなるというのは企業側にとって大きなメリットとなります。

そしてもう一つは求職者と企業側が求める人物像のマッチング率の向上です。企業にとって何千、何万と送られてくるエントリーシートや履歴書の中から求める経歴やスキルセットを持つ人物を判別しやすくすることが可能です。これにより面接までのスピードを速くすることができたり、入社後の離職というリスクを防ぐことが可能になります。

AI採用のデメリットと改善策

AIを活用することによって想定されるメリットとはなんでしょうか。

機械は信用できない学生たち

実はAI技術を用いた採用プロセスにおいて、学生の間では批判的な意見も少なくありません。機械に自身の将来を決められることに倫理的な反発を抱いたり、精度に対して疑問があるようです。学生にとっては一生を過ごすことになるかもしれない会社を選んでいるので、AIなんていう機械に採用を任せられるのは嫌だと感じている学生がいるのも最もなことでしょう。

ちなみにせっかくAI採用をするのであれば履歴書やエントリシートはオンラインでできるようにすべきでしょう。AI技術の一環として画像認識の技術がありますが、手書きのものを判別するよりもプリント文字の方が機械にとってはるかに認識しやすいためです。今だに、書類を手書きでなければならないと強いることで採用ハードルを上げたり、業務負担軽減を図ったりしている企業、または人事担当者もいますが、AI採用が始まればエントリーの数を意図的に減らす必要性がなくなります。わざわざ手書きで書いた書類をAI判断で瞬時に合否を判別するのは不公平だと声を挙げる学生もいるようです。

自分の仕事も無くなってしまうかも!?

人事の仕事の醍醐味とも言えるのが新卒や中途採用などの企業側の人材募集におけるプロジェクトです。この記事を読んでいる人事の方にも、学生時代の就活の経験から人事部を志したという方も少なくは無いでしょう。

AIが面接活動を担うという日も近づいています。おそらく最終面接などに関しては直接、人事や役員での面接が入ることになるでしょうが、面接という大きなやりがいをAIに奪われてしまう可能性があるのはリスクとも言えるでしょう。

AI採用具体例

では実際にAIを活用している企業の実例を見ていきましょう、残念ながら導入コストの問題からほんの一部分の大企業でしか導入が進んでいないのが現状です。また社員数が多ければ多いほど費用対効果が大きくなるので、資本や従業員数の少ない中小企業がAI技術を人事に役立てるには、まだ今しばらく時間がかかると予想されています。

ソフトバンク

ソフトバンクはIBMのAIソフトであるIBM Watsonを導入し、新卒採用のプロセスの効率化を実現させました。大手企業だからこそ大量に寄せられるエントリーシートの数々。エントリーシートが寄せられる2月3月は人事も大学へ赴いたり、会社説明会をしたりとオフィス外での活動も忙しくなる時期になります。同社ではエントリーシートの判定は6名から10名程度で担当していました。自己PRなどは一人当たり約600字にも及び担当者の負担がかなり大きかったようです。しかし、AI判定を取り入れたことで680時間かかっていたエントリーシートの判定は170時間となり75%の削減に成功しました。またエントリーシートをデジタルに限定することで用紙の紛失リスクや、個人情報保護の観点でも大きな恩恵を得ることができました。加えて、AIの不完全性を是正するために、不合格者に対しても人事担当者の最終チェックを入れることで、HRテックの不完全さを是正しています。

アサヒビール

アサヒビールではアサヒグループ社がこれまで人事総務部門に電話で問い合わせていた人事や移動などの質問に対し、AIが24時間365日応答することで業務を効率化する人事系AIチャットボットの導入をしました。2019年末までに年間で1,900時間の業務時間削減を目指しています。業務の効率化だけではなく、回答内容にばらつきがなくなり一定な回答ができるというメリットがあります。

またAIだけではなく、RPAによりアサヒグループ各社で社員やアルバイトなどの採用時や各社間での人事異動、退職・休職時などの際に各社から申請された人事データを人事給与システムにRPAが自動で入力するシステムを導入しています。

グループ各社から提供される人事データは年間約36,000件あり、これまでは人事部が「グループ人事管理システム」と「グループ勤怠管理システム」に全て手入力していたので内容確認も踏まえて作業時間は年間約1,300時間に及んでいました。導入後の実績はまだ定かではありませんが、大幅な時間短縮になることでしょう。

幸楽苑

2019年4月よりAIを活用した評価制度の運用をスタートしました。人材確保が問題となっている飲食業界で、各店舗のスタッフの満足度を上げていくことを目標とし、クラウドサービスとAIを活用した、幸楽苑オリジナルの人事評価制度を構築しました。労働時間や労働環境の改善も視野に入れながらスタッフ一人一人に正当な評価を与え、モチベーションの向上につなげるのが目的です。多くの飲食店では、店舗スタッフに対する評価指標が確立されておらず、店長またはマネージャーの主観によって評価されることが多かったため、この事例がうまくいけば外食産業の人手不足にも一筋の光が差すかもしれないと期待されています。

これからの時代のAI採用とは?

今まで人事に携わってきた人からすると、AIなんかに採用活動を任せてしまっても大丈夫なのかという不安を抱くのはいうまでもないでしょう。確かにAIもまだまだ完璧とは言い切れません。しかしAIも我々人間のように深層学習(ディープラーニング)をすることが可能で、いくつもの判例を繰り返せば繰り返すほど、どんどん賢くなっていきます。そして成熟すればするほど評価や採用基準は一定化されるので、客観的な採用活動をするという点では大きなメリットとなるはずです。

従来のように面接官の主観による評価よりもフェアですし、学生側も過剰な印象操作をせずに済むようになるでしょう。

これからの人事の仕事はどうなっていく?

これからますますAI採用に拍車がかかる中で人事の仕事は減っていくことは容易に予想されます。しかし落胆してはいけません。

重要なことはAIにとって変わらない仕事の質を高めていくことが大切です。ここまでの話をおさらいすると給与・勤怠管理・人事評価・エントリーシートチェック・面接などは現状、実施している企業がいることからこの先10年でAIやRPAの導入コストが下がることや、人材不足などの背景も後押しして避けられない可能性が高いです。

では、AIにとって変わらない仕事とはなんでしょうか。いわゆるクリエイティビティーを発揮するような企画系の業務や人との対話を必要とする業務です。例えば、人材不足が深刻化していく中で企業はなんとしてでも優秀な人材を確保しようと様々なアピールやプロモーションをする必要があります。求人広告を工夫したり、入社してもらう社員だけではなく現行の社員の離職を防ぐためにも新しい福利厚生を考えたりすることが重要です。

社員の離職を防ぐためにも社内にカウンセリングを設けている企業も増えてきています。ブラック企業やパワハラ、モラハラという言葉が世間に定着してからというものの、企業側としてもそのような不祥事がメディアに露呈すると大幅なイメージダウンになり人材の募集が大変になります。現行の社員の離職を防ぐこと、そして未来の有望な人材へ悪いイメージを与えないためにも社員のメンタルヘルスなどを面談などによってクリーンにすることが大変重要です。

まとめ

AI採用は客観的でフェアな採用活動を実現し、企業と求職者間でのマッチング率を上げ、採用活動における人事業務の効率化を計ることに大きな恩恵をもたらします。

そしてAIが採用活動、RPAが勤怠管理などの業務を代替していく中で今までよりもよりクリエイティブで社員とコミュニケーションを交わしていくような業務をすることが人事には求められてきます。それはよりよい人材を募集するためのプロモーションであったり、現状の社員が喜ぶような福利厚生や企画づくりかもしれませんし、社員との面談などの業務です。

AIにできないことを突き詰め、会社をより魅了的にし、従業員の生活やクオリティオブライフを健全に保ってあげることこそが、これからますます大切になっていくでしょう。

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