世界の求人に影響を与えるGoogle for Jobs

Google for Jobsは求職者が自分に合った職業を見つけるためのツールです。日本に2019年1月に上陸し、日本の求人サイトで最も注目を集める存在となりました。今回はなぜGoogle for Jobsがここまで注目を集めているのか、そもそもGoogle for Jobsとは何か、その特筆すべき機能と、Google for Jobsを利用した就職活動がこれまでとどのように変化していくのかをお伝えし、Google for Jobs が世界の求人にとってどのような影響を持つようになるかを予想してみたいと思います。

Google for Jobsとは何か?

Google for Jobsとは、Googleが提供する求人検索機能です。2017年6月に最初にアメリカで実装され、その後世界の各地で実装されました。日本に本格的に実装されたのは2019年1月で、大きな話題となりました。Google for Jobsの最も大きな特徴は、2つあります。1つには、Googleの検索ボックスに求人に関連したキーワードを入力するだけで、ニーズに合った求人情報を表示してくれることです。2つめに、Google for Jobsは各求人メディアを横断検索してくれることです。この2点について詳しくみてみましょう。

<求人情報の表示>

Google for Jobsは、求人や転職などの求人情報を探す際に使うと思われるキーワードを打ち込んだ際に表示されます。これらのGoogle for Jobsが提供する求人情報は、あまりに自然に表示されるためGoogleが提供している情報と思われないかもしれません。例えば、「東京」「介護」というキーワードを打ち込んでみましょう。

これが実際に打ち込んで表示される求人です。Googleは世界のありとあらゆるウェブサイトをクロールした結果を検索エンジンで表示するものです。Google for Jobsはクローラーに求人情報を集めさせ、検索した求職者に対して最適化した求人情報を提供するものです。またこのGoogle for Jobsの情報の検索結果は「リスティング広告枠」の下に表示されるためにどんな求人サイトの情報よりも上位表示されるのです。そのため、求職者はGoogle for Jobsの求人情報を見ることになるでしょう。クリックするとより詳しい情報が表示されます。

これが詳しい求人情報のページです。左上の項目「地域」「投稿日」「言語」「形態」「企業」などをクリックすることで、自分の要望に応じた求人情報を探すことができるようになっています。個々の求人情報は、非常にシンプルな構成になっており応募もこのページからボタンをクリックすることで進めることができます。

<求人サイトの横断検索が可能>

これまでは、求職をしている人がインターネットで仕事を検索しようとする際には各求人メディアを渡り歩き、自分に合った仕事を探す必要がありました。アルバイトを探すのであれば、「an」「フロムエー」などのサイトで自分の地域を限定し、やりたい職種を検索していました。学生であれば、「マイナビ」や「リクナビ」「キャリタス」などの就職サイトを利用して自分の気になる企業や職種を検索していたでしょう。転職であれば、「ハローワーク」「リクナビネクスト」「doda」「マイナビ転職」「エン転職」などのサイトを使って検索するのが一般的でした。しかしGoogle for Jobsはこれらの全ての情報を一括で検索することが可能になったのです。

indeedとの違いは何か?

Google for jobsが日本に上陸する前までは、求人サイトではindeedが「一人勝ち」という構図ができあがりつつありましたが、それも短い期間に終わってしまう可能性があります。Google for jobsもindeedも求人専門エンジンですが、大きな違いがあります。ここではGoogle for jobsとindeedの違いについて考えてみましょう。

<indeedで利用できる機能>

indeedは求人検索エンジンでありながら、企業が求人情報を直接投稿できることに特徴があります。企業は投稿した求人情報から応募を受け付けることができ、管理とアクセス解析が可能なのでどんな企業でも使いやすいでしょう。これまでの求人サイトと違い、全くの0円で採用をスタートすることができます。Google for jobsの場合には求人ページを最低限準備しなければなりませんが、indeedはその必要がありません。しかしながら、無料で掲載した場合には多くの求人情報に埋もれやすいために、求職者がその情報にたどり着かないという可能性もあります。その問題を解消するためには経費を投入する必要があるかもしれません。indeedに広告料を支払うことで求人情報を上位表示させることができるのです。日本の求人サイトは掲載するだけで費用がかかるために、事前にその費用対効果を知ることはできませんでした。indeedの場合には応募件数の状況に合わせて、経費投入をするという判断をすることができるようになったのです。これは日本では活気的なことでした。

<Google for jobsとindeedの違い>

わかりやすくGoogle for jobsとindeedの違いをまとめると以下のようになります。

・Google for jobsには、広告枠がない

・Google for jobsには、企業に管理機能が標準で設置されていない

・Google for jobsに求人情報を掲載させるためには、クローラーに認識させる必要がある

このような違いがあることから、掲載しやすいのはindeedといえるでしょう。しかし、Google for jobsはindeedよりも圧倒的に優位にあるといえる部分があります。それは求職者の視点に立つとわかります。

<Google for jobsの優位性>

Google for Jobsもindeedと同様に企業側も求職者も無料でそのサービスを使用することができますが、最大の違いはGoogle for JobsがGoogle検索された場合にindeedよりも上位表示されることでしょう。日本においてGoogleの検索エンジンシェアは7割といわれています。パソコン、スマートフォンともに何かを調べようとする場合にはGoogleから検索する人が圧倒的に多いのです。求人情報でもその動作が変わることはありません。つまり、求人情報を検索する際に7割の人が最初に見る情報はGoogle for Jobsで掲載されている情報だということです。このことがいかに大きい影響であるか想像できるでしょうか。ちなみに世界的に見ると検索エンジンシェアのトップは、やはりGoogleでその占有率は9割を超えるという独占的な地位にいるのです。多くの企業がその求人情報を掲載する場合にGoogle for Jobsで検索上位させることを目指すのはこういった背景があるのです。

求人ミスマッチを減らすために開発されたGoogle for Jobs

インターネットではあらゆる求人情報がありますが、情報があまりに多く求職者が求める条件の求人を探すのは非常に時間のかかるもので、仕事に就くとこができても何からのミスマッチを感じる人が多かったのです。それと同時に企業側も適切な人材を採用できないという悩みを持っていました。こうした問題を解決しようとするためにGoogle for Jobsが開発されました。つまり、いかに求職者と企業の双方の「ミスマッチを減らす」という課題を解消できるかという大きな挑戦があったのです。

Googleは、インターネット上に数多く存在するバラバラの求人情報を一元化し、求職者に提示することでその問題を解決しようと試みました。そうして表示される求人情報は、基本的には文字情報と地図だけで構成されるシンプルなもので、より詳しい情報を得ようと思った求職者のみが応募ページから詳細を確認できます。前述したようにGoogle for Jobsは求人情報の絞り込み検索が簡単にできる機能を実装しています。求職者はカテゴリで希望するものを選ぶだけで、該当しない求人情報を減らすことができます。自分で入力することなく、カテゴリをクリックするだけで条件に合った情報だけを表示させることができるのです。そうして表示させた求人情報で、気になるものがあればすぐに保存することができます。保存した求人情報は後日に簡単に見つけることができるようになるため、見失うことはありません。また、アラート機能を使えば自分の条件に合った新しい求人情報をメールで知らせてくれるため最新の情報を見ることができます。

求人を行う企業側の施策

Google for Jobsは、Googleの検索結果から求職者が一番初めに目にする情報源となる可能性が高いため、企業も積極的にGoogle for Jobsに掲載させたいと思うでしょう。日本でも各企業がGoogle for Jobsへの対応に追われることになりました。しかし、Google for Jobsはこれまで日本のスタンダードであった「経費を投入して求人広告を掲載する」という方式に当てはまらないものであったため、人事としてはやや困惑したかもしれません。Google for jobsの掲載方法について改めて確認していきたいと思います。

<既存求人ページをGoogle for jobsのクローラーに認識させる>

既存の企業ホームページにある求人ページをGoogle for jobsのクローラーに認識させることができればGoogle for jobsに自動的に掲載されるようになります。企業の求人情報を掲載させるためには求人構造化データに合わせてページを作成することで対応することができます。求人構造化は基本的なWeb知識さえあれば比較的対応しやすいものです。ホームページ作成経験者であれば間違いなく対応可能でしょう。

<これを機に新しく企業ホームページを作成する>

採用ページが無い場合には、新しく企業ホームページを作るのも良いかもしれません。Google for jobsが定めるルールに沿ってホームページを制作すれば求人情報をクローラーに認識してもらうことができます。Google for jobsが掲載する情報を見て求職者は応募ページから企業ホームページを見ることになるため、企業ホームページに求職者の望む情報が無いと応募してもらえないことになるでしょう。また、企業イメージもこのページの印象で決まってしまうため、デザインも重要な意味を持ちます。企業ブランディングの1つとしてホームページ作成に取り組むべきでしょう。

<従来通りに求人サイトに情報を掲載する>

各求人会社は、すでにGoogle for jobsの対応を済ませているためにこれまで通りに費用を支払い求人サイトに掲載される情報は、Google for jobsに表示されることになります。「リクナビネクスト」「マイナビ転職」「エン転職」「doda」「フロムエー」「an」「はたらいく」などの聞きなれた求人サイトであれば当然のことながらGoogle for jobsでもその情報が表示されます。

Google hireやGoogle Pathwaysがやがて日本に上陸するのか?

現在のところ、Google for Jobsは求職者も情報を掲載する企業も無料で使用できるツールです。indeedは日本のインターネット上に散らばっている求人情報を一元化し、求職者にとっての便利さを無料で提供する一方で企業から広告料を得ることで、無料掲載企業との優位性を出し収入を得ようとしました。しかしGoogle for Jobsには企業からも収入を得る仕様になっていません。収益を上げるためのツールでないのであれば、Googleが目指すのはどのようなことでしょうか。最も理解しやすいのが「Google hire」と「Google Pathways」の連携でしょう。Google hireとは、Google独自の求人応募者管理機能であり既に欧米でリリースされている機能です。月100$ほどで使用できるということから、こちらはその目的が見えやすいシステムになっています。Pathwaysは、求職者に対してのスキルアップや仕事のトレーニングをしていく教育プログラムであり、Googleが試験的に運用を行っているツールです。Google hireとGoogle Pathwaysについて簡単にまとめてみましょう。

<Google hireの特徴>

・欧米で既にリリースされているツール

・月額使用料100$程度

・複数の求人サイトに求人情報を掲載し、応募者の選考と管理を一元化することができる

・応募者とGmailで連絡を取ることができる

・Googleカレンダーで面接や採用スケジュールを調整できる

・Hang outでチャット連絡、web面接をすることができる

・AIが膨大な履歴データを管理、分析し適切な応募者を自動的に選考できる

・Gsuiteと連動させることができ、スプレッドシートでデータを集計管理できる

<Google Pathways>

・特定の仕事をしたい求職者に対して、スキルアップや教育を行うツール

・スキルが足りない若い世代や、スキルアップして年収アップをねらうハイクラスには便利なサービス

・企業と求職者のミスマッチを減らすツールとして注目を集めている

整理すると、HRテックと呼ばれる人事テクノロジーサービスと比較して画期的というものではないのですが、Googleがリリースしているアプリと連動性が非常に高くスムーズに導入できるというメリットが差別化のポイントになっていることが分かります。日本でGoogle hireやGoogle Pathwaysのサービスを始める前に、求人情報をも一元化させるGoogle for Jobsで土台を作っておくというのは、非常にわかりやすい考え方です。しかし、果たしてGoogleが目指すのは単純にそれだけでしょうか。

Google for Jobsは世界の採用をどのように変えるのか

前述したように世界の検索エンジンのシェアで9割、日本でのシェアは7割という独占的な位置にいるのがGoogleです。何かを調べるときに、最も自分にふさわしい検索結果を表示させるのがGoogleです。これだけ膨大な人に利用されるサービスはかつて地球上には存在していなかったともいえるでしょう。今や情報はインターネットに集約し、それらをカテゴリに分類し取捨選択を行う「賢者」のような存在にまでGoogleは上り詰めました。世界中の図書館はやがてデータ化し、書籍は展示される遺跡のような存在になるかもしれません。知識はあらゆる人との共有のものになり、大学の授業もやがてYou tubeで無料一般公開される時が来るでしょう。

では求人はどのように扱われるのでしょうか。
将来的には、会社と会社ではなく、個人と個人のつながりや取引によって生産が進むことになるでしょう。個人があるプロジェクトに対して、応募者を募り最もふさわしいスキルを持ったワーカーがそのプロジェクトを進行する。プロジェクトが終わったら両者の関係は完結し、必要な時にだけ結びつくというスタイルが加速するのではないでしょうか。
Google for Jobs を基盤としてGoogleは世界に散らばる求人情報やプロジェクトを自動で収集し、スキル別に応募者をランク付けして分類することになるでしょう。いわゆる「雇用」という考え方は将来的にはそうした方向へシフトしていくことでしょう。そうした世界において、仕事を通じて人と人を結び付けるのはGoogleなのかもしれません。かつてインターネットのない世界では何かを調べるときには図書館に行き、レファレンスを受け、その情報を探さなくてはいけなくなった時代には、想像もつかないほどにその動きは加速しているのです。朝起きて「OK, Google僕にふさわしい今日の仕事を紹介してくれないか?」という日常はすぐにやってくるのかもしれません。

まとめ

さて、今回はGoogle for Jobsが今後世界の求人にどのように影響を与えるのかということについて考えてきましたが、いかがだったでしょうか。最後にまとめてみましょう。

・Google for Jobsは日本に2019年1月に実装され、定着しつつある

・Google for Jobsはindeedが一人勝ちしていた日本の求人業界の構図を変えつつある

・Google for Jobsは誰にも使いやすいUIに特徴がある

・Google for Jobsはミスマッチを減らすという目的で開発された

・求人を行う企業もGoogle for Jobsに視点を当て、求人方法を検討するようになっている

・Google hireやGoogle Pathwaysがやがて日本にも上陸しGoogle for Jobsと連動する可能性が高い

・Googleが目指しているのは、求人だけでなくプロジェクト単位での仕事の情報を独占するようになる可能性もある

日本でも2016年に「働き方改革」が提唱され、様々な働き方を双方的に認める社会へと変わりつつあります。Googleはそのタイミングに呼応するかのようにGoogle for Jobsを日本でリリースさせました。これから先、求人や仕事の情報ではほとんどの人がGoogle for Jobsを使うようになるのでしょう。

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