働き方改革でHRテックが注目される理由

 

はじめに                          

少子高齢化社会が社会問題化している昨今、労働力不足を補い生産性をあげたり、働き方改革を進めて従来家庭にいた人が働くことができるよう、多様な働き方を認める動きが進んできています。そのなかで進められているのが、HRテックです。人事業務にAIをはじめとしたテクノロジーを取り入れ、そして業務効率化を目指すとともに、技術の力で多様な業務を効率化させることが求められています。このようななか、働き方改革でHRテックがなぜ注目されているのか、知っておきましょう

1.働き方改革とはどのようなものか

働き方改革とは、一口で言えば多様な働き方を可能にして労働生産性を向上させることで、日本の政府の重要セ策の一つとして位置付けられています。そのため、業種や会社の大小にかかわらず、多くの企業が取り組まないといけないことです。企業においては、「長期労働の是正」、「正社員と非正規社員の不合理な格差の解消」「多様な働き方を実現」を三本柱としています。

働き方改革を実現するためには、職場単位での努力ではなく人事部全体の意識改革が必要で、会社における働き方として構造的に改革しなければなりません。柔軟な働き方に対応していたり、労働時間や勤務条件と待遇がリンクしている企業は多くの求職者に選ばれるようになります。逆に何も対応していないような企業は求職者に選ばれず、労働力不足に陥ると危惧されています。そのため、人事業務に携わる人としては、働き方改革をいち早く実施しなければならないのです。

働き方改革を実施するためにはまず総労働時間の減少を考えなければなりません。次いで、職務が給与に反映される仕組みを作り出す必要があります。言い換えれば、契約社員やパート従業員の仕事も評価する仕組みや契約社員やパート従業員を教育する仕組みを作りだす必要があります。育児や介護、自ら闘病をしながら働く人のためにも、多様な働き方、体制を作り出す必要があります。とはいえ、働くことができる人数や働き方改革に使う工数は限られているため、生産効率を向上してより少ない労働力で利益を伸ばしていかなければなりません。これからの人事部には、こういった働き方改革に対応するセ策をすることが必要です。

2.HRテックを導入すれば、働き方改革へ舵が切れる

企業が働き方改革を進めていくには、まず仕事の効率化を図ることです。まずは人事部の仕事自体を効率化することが前提になります。働き方改革を推し進めていくには、まずは人事業務自体を圧縮して残りを会社の戦略実現などにつなげなければなりません。そのようなときに役立つのが、HRテックです。採用活動にAIを活用することで、面接や書類選考、スケジュール調整など従来はかなり工数がかかった業務を省力化できます。

それだけではなく、給与計算や労務管理業務など毎月のように発生する業務についても、HRテックを導入することでかなり省力化できます。中小企業の中にはいまだに給与明細を手渡しで渡しているなど事務作業がかなり発生している会社があります。そういったことについても、HRテックを導入することで毎月発生している業務がなくなるので、その分人事部の部員自体も長時間労働を是正できます。

働き方改革をしたからといって会社の業績を下げるわけにはいかないので、行われている業務をリストアップし、そして効率化していうことが大切になります。雑多な業務もあり多岐にわたる人事業務の分野においてもそれは同じであり、まずは人事部から自分達の仕事をリストアップして、テクノロジーの力で省力化すべきところは省力化することで、同じように他部署の仕事についても限られた資源で従来と同じかそれ以上のパフォーマンスができるようにしていくのです。

3.コンプライアンスの面で働き方改革に役立つ

そもそも、働き方改革と言われるようになったのは少子高齢化に伴う労働力不足も背景にありますが、社会問題化していた長時間労働やサービス残業問題に対応する必要に迫られたという事情があります。この問題は不可分な問題ではなく、労働力不足を補うために高齢者や育児介護中のヒトの活用を考えるとき、やはり長時間労働やサービス残業問題があるとそれができないという事情もあり関連づけられていることです。また、長時間労働、サービス残業となると健康状態を悪化させることもあり、労災につながることも懸念されます。そういった事例が発生すると企業ダメージの悪化を招き、企業としても慎重に考えるべきものです。

HRテックを活用すると、出勤や退勤の手続きが即労務管理、給与計算へとつながっていくことも可能です。これは、給与計算事務の効率化にも役立ちますが、サービス残業問題や、長時間労働問題の解決に役立ちます。あらかじめ残業についてボーダーとなる時間を決めておき、それに達成しそうな従業員をピックアップして指導することもできますし、場合によって人員を配置するなどそれにあわせた措置が可能です。コンプライアンスの面からもそうしたシステムの導入が歓迎されており、人事部がすべての職場の状況を把握することが容易です。

従業員とのコミュニケーションツールとして使えば、パワハラやセクハラなど深刻な問題が起こった際に、通報窓口として機能することも出来、ウェブ面談など速やかな対処が可能になります。こういった履歴もクラウドで管理できるので、埋没してしまうということもありません。いずれにせよ、法令順守、コンプライアンス問題から目を背けることのできない企業だからこそ、HRテックを取り入れることに意義があるのです。

4.多様な働き方にHRテックが役立つ

これからの時代は労働力不足に対応するために多種多様な働き方が求められています。育児や介護をしながら働くことができたり、定年を迎える高齢者を活用したりということです。そういったことに役立つのがHRテックであり、システムを活用すればテレワークやリモートワークも可能になります。自宅に居ながらにして仕事ができる環境を作り出すことで、育児や介護といった問題で離職する人を減らせるでしょう。ウェブ会議などを取り入れれば、

育児や介護といった事情を抱えていない人でも、テレワークやリモートワークのシステムを整えることは意義のあることです。たとえ週に1回でも在宅勤務が認められれば、満員電車に乗って疲弊することもありません。また、リモートワークのシステムを整えることにより、支店と支店をつなぐシステムも構築すれば、ウェブ会議などを取り入れて不要な出張を減らすことができます。これにより従業員が持てるパフォーマンスを効率的に発揮して働きやすい職場環境になるのです。

HRテックはもともとアメリカを中心に広がってきました。日本においても欧米に展開するグローバル企業を中心に導入してきました。労働力不足の中で企業がパフォーマンスを発揮するためには、やはり外国との競争力をつけることも必要になってきます。HRテックを導入することで海外出張や海外の支店との連携、外国人の採用から海外赴任する人の労務管理まで、複雑なタスクをまとめてできるようになります。そうすることで海外進出へのハードルが低くなり、また一層競争力の強い会社になり得るのです。

5.従業員の教育研修にHRテックが役立つ

働き方改革においては、正社員と非正規社員の非合理な処遇の差を是正するようにされています。今までは非正規社員については特にその個人個人の能力や資質を測ることもなければ、教育研修は現場任せにしていたところも少なくありませんでした。しかしながら、HRテックを使えば、非正規社員の経歴や職歴も管理できるだけでなく、処遇についてもその人の働きに見合ったものが可能になります。

それだけではありません。注目すべきは従業員教育に利用できることです。HRテックを使えば、イーラーニングを使って従業員を教育することができます。これは正社員だけではなく非正規社員やパート従業員も対象になります。適性検査もできますので、適性にあった配属も可能になります。従来、契約社員、やパート従業員として総数でしか管理されなかった従業員についても個人個人を戦力化することができるので、離職率も低下して人事業務も少なくなりますし、限られた人材で高いパフォーマンスを発揮できます。

従業員教育で言えば、HRテックを使うことで内定者にも教育ができるようになるのも支持される理由の一つです。内定者については、大学生活があるので過度に拘束はできないものの、入社前に基本的な知識を身につけているかどうかで、入社後の現場の手間もかなり違ってきます。イーラーニングを使えば、簡単に教育ができますし内定辞退をする人は早めに知らせることにもつながります。従業員の教育は会社の業績に大いに関係があるのです。

6.人事データを管理することで働き方改革に役立つ

働き方改革を実現するためには、限られた労力で成果を出すことが求められます。従来であれば長時間労働やサービス残業など社員の「頑張り」によってカバーされてきたところがそうはできないようになるからです。しかしながら、HRテックの優れたところは、人的資源管理を一元でできるところです。社員の入社前の経歴から適性検査の結果、それから入社して従事してきた仕事まで一括して管理できます。たとえば、ある仕事に当たらに社員が必要になったとすると、膨大な人事データからその業務に適しており、異動が可能な人をピックアップする仕組みもあります。そのため、新しい仕事を始めるのにいちいち外部から人を雇うこともありません。

また、社員以外の従業員についても一括してデータ管理することが可能です。このようなシステムでは、AIが莫大なデータから適材適所な人を導き出したり、離職率の低いパートのタイプを算出することもあります。したがって採用ノウハウを持たない現場がアルバイトやパート社員を採用する際に、AIが抽出した適性に合致した人を選べばよいので、採用がスムーズに進むだけでなく統計的に離職率も少なくできます。

しかしながら、企業の規模に関わらずたいていの企業は、独自の社員データを持っています。ただ、HRテックの導入以前のデータはエクセルなどで管理されており、今一度データベースとしては使い勝手の悪いものです。住所など個人情報を調べることあできても、職務経歴や適性検査の結果、AIが判断した適材部署までは到底載せられないものです。そのような点においてHRテックの導入は、クリックだけで膨大なデータベースの中から必要なデータをスピーディーに取り出すことができます。外国の支店で働いている人にも対応しているので、かなり便利にできています。

7.日本におけるHRテックの導入について

実は、日本とアメリカでは一人当たりの労働生産性にかなり開きがあります。日本人一人当たりの労働生産性はアメリカの6割にとどまっているのです。この原因の一つと言われているのが、HRテックの導入率が低いことが挙げられています。アメリカでは、多国籍企業を中心にHRテックがかなりの広がりを見せており、人工知能やクラウドを人事業務に取り入れることで生産性をかなり高めています。

特にGoogleなどでは、人事部門にデータサイエンティストと呼ばれるHRテックを扱う専門家を起用しています。そのため、積極的にクラウドや人工知能が活用され、HRテックを使いこなして生産性をあげています。他にもベンチャー企業から大企業に至るまで、いろいろな企業がHRテックを活用して生産性を伸ばしているのです。

日本でも、アメリカやヨーロッパに遅れながらも、徐々にHRテックの導入が進んできています。日本における最大の特徴は、人材サービスの会社がHRテックのプログラムを売球させようということです。本来、転職や派遣を行い、自分達が人材を調達したり、人事業務の代行を行っていたような人材サービス会社が多くのプログラムを日本向けに開発、普及させているのです。

この背景としては、人材サービス会社の競争が激化しており、従来のサービスでは十分な利益を得るのが難しくなってきたこともあります。そこで書く人材サービス会社としてはこれから利益を生む題材としてHRテックが着目されてきたという理由があります。導入側の企業にも歓迎する事情があります。日本の企業の多くは中小企業ですが、これらの企業は自社でシステムを開発するだけの余力がありません。しかしながら、そのような企業でも他社が開発したHRテックのシステムならば、導入するだけの余裕があります。

働き方改革は政府からも求められており、世間の関心も高い企業としては重要視しなければならない課題です。さらに激しい競争にさらされているような会社であれば、そういったシステムを導入することで働き方改革を実現しながら生産性もキープできるのです。

8.これからの働き方改革とHRテックの普及について

働き方改革というと、残業をせずに早く帰ってくる、というくらいの意識で考えているサラリーマンも少なくありません。ですが、労働力不足に立ち向かうために一人当たりの生産性を欧米並みに引き上げるという、根底には果てしなく大きなタスクが隠れています。人材を引っ張ってきたり、社員に無理をさせて業績を上げることはできないのです。今ある人材で生産性を上げるには、今ある人材が離職したり病気などで働けなくなることも避けなければなりません。

現在では採用業務にAIを活用したり、クラウドやデータベースで人事データを管理したり給与計算をしたりということが主になります。ですがこれからはより戦略的に今いる人材を活用するようなシステムが好まれるでしょう。そして、従業員一人一人のパフォーマンスをあげたり、離職しない仕組みが求められます。テレワークなどを普及させてフルタイムで働かなくても企業に貢献できるシステムを作ることも一般的になるでしょう。

また、今後はより発展していき従業員のニーズに合わせた福利厚生の実施や健康診断のデータ管理といったところまでもHRテックのシステム導入が進んできます。定年の年齢が引き上げられ、100歳まで活躍する社会を目指しているのが働き方改革の神髄だとすると、病気などで途中離職しないようにクラウドで健康管理をするのが一般的になってくるなど今後も普及が進むでしょう。

おわりに

政府の方針である「働き方改革」は深刻化する少子高齢化に伴う労働不足を補うためにもかなり考えなければならないことです。そのなかでクラウドやAIを活用して従業員の生産性をあげるシステム、HRテックを導入するのが効率的に働き方改革を実現するコツと言ってもよいかもしれません。今後、大企業だけでなく中小企業にもその導入が進んでくるでしょう。

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