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企業には、多くの従業員が働いています。企業の規模によって、従業員の数に違いはありますが、個人が集まり、組織となって、企業活動をしています。ビジネス以外でも同じことを言うことができ、チームスポーツも組織になって、戦うことが勝利の鉄則です。
一方で、企業やチームに所属していても、組織力が弱いと、個人の力が結集されません。人材が同じ方向を向いて取り組む組織力が大切です。今回は、企業の成長に欠かせない組織力を高めるための方法について解説していきます。企業の実践例も紹介するため、自社の組織力強化の参考にしてみましょう。
1.企業における組織力とは

まず企業において、組織力とは何かをおさえていきましょう。企業に所属しているだけでは、組織と言うことはできないでしょう。能力の高い人材が多くても、方向性がバラバラだったり、対立したりしている状態では、企業の成長は望めません。自社の状況と照らし合わせながら見ていきましょう。
1-1 人が集まるだけでなく、同じ方向を向いていること
企業における組織力とは、企業に所属する個人が同じ方向を向いていることです。企業理念や企業目標を理解し、実現に向けて全員が仕事に取り組むことが求められます。
企業には、さまざまな人材がいます。人材それぞれ、性格や得意なこと、価値観などが異なり、個人の目標も違うでしょう。個人に、仕事への取り組み方、思いがあるため、組織力が低いと、何に向かって取り組むかがバラバラになってしまいます。
多様な人材をまとめ、同じ方向に向かって取り組むことで、仕事への取り組み方や課題意識が統一され、企業の成長を実現する力になっていきます。
1-2 コミュニケーションが活発にとれていること
人を結びつけるのは、コミュニケーションです。コミュニケーションを交わさずに、意思を伝えられることもありますが、言葉で伝え合うことで、より円滑に仕事に取り組みことができます。
コミュニケーションをとることで、仕事の進捗や問題点などを把握でき、仕事への意識を共有することができるでしょう。チームでコミュニケーションを活発にとることは、方向性を確認する意味もあります。
コミュニケーションは、仕事面だけでなく、人間関係づくりにも欠かせません。上司と部下、同僚同士など、信頼できる人間関係ができることで、働きやすい環境になるでしょう。日常から組織力を高めることで、業務にも良い影響を与えます。
1-3 組織内で個性を発揮し、切磋琢磨していること
企業の成長には、組織として働くことも大切ですが、人材それぞれが個性を発揮することも不可欠です。さまざまな能力を持った個人がいる中、組織を意識させることで個性を発揮できなければ、組織力が高いとは言えないでしょう。
同じ方向を目指した上で、個性を発揮できる企業であることが求められます。また個性をぶつけあって戦うのではなく、刺激を受け、切磋琢磨できる環境づくりも大切です。若手が高め合うことで、将来を担う人材が育ち、企業の成長を後押ししてくれるでしょう。
1-4 従業員同士が助け合っていること
組織力には、助け合いも含まれます。苦手な部分を補ったり、緊急時に代わったりするなど、助け合うことで、組織力が上がっていきます。助け合いがない組織では、ミスを恐れたり、重大なミスに気づくのが遅れたりするなど、力を発揮できず、判断が遅れることもあるでしょう。互いの苦手な部分を理解し、助け合うことで、課題に直面したときに乗り越えられることができます。
2.組織力のない企業で何が起こるのか

組織力のない企業では、目標意識がそれぞれ違ったり、コミュニケーションが希薄になったりするなど、企業の成長に向けて、方向性が定まりません。従業員それぞれが与えられた仕事をこなすだけという状態にもなりやすいです。組織力がないことによる影響を解説していきます。
2-1 業績アップなどの同じ目標に向かって進むことができない
組織力がないと、個人がそれぞれの思いで仕事に取り組むため、同じ目標に向かって進むことができません。企業目標に向かっているメンバーがいても、他のメンバーは業務をこなすことだけを考えていることもあるでしょう。
組織力のなさは、モチベーションの低下を引き起こす可能性もあります。目標が定まっていない、能力を発揮できないなどから、モチベーションを見失ってしまうでしょう。モチベーションの低下は、周囲にも影響を与えるため、組織全体の生産性が落ちてしまうことも考えられます。
2-2 コミュニケーション不足によって人間関係が希薄になる
組織力を高めるためには、人同士がよい人間関係をつくることが大切です。よい人間関係をつくるためには、コミュニケーションが欠かせません。言葉を交わすことで、メンバーの価値観を理解し、人間関係づくりやチームづくりに生かすことができます。
組織力のない企業では、コミュニケーション不足になりやすく、人間関係が希薄になっていきます。コミュニケーションによる目標・課題の共有や助け合いがなく、日常的な関わりも少ないです。信頼関係をつくることができず、業務の効率が下がるだけでなく、職場の雰囲気にも影響を与えます。
組織にいる仲間という意識も希薄になるため、他者を蹴落とそうという考えもでてくるかもしれません。ミスにつけこむなど足を引っ張り合い、企業の成長から離れていってしまいます。
2-3 ルーティンワークを回すだけで企業に良い変化が起きない
従業員が与えられた仕事をきっちりこなす組織は、一見組織力が高いように見えます。ただルーティンワークになってしまうと、個性が発揮されず、新たな発想など良い変化は起きないでしょう。
組織として、同じ方向を目指しながら、個人の力を発揮するのが理想ではないでしょうか。組織の取り組みの中で、個人を生かすことで、企業の成長に良い影響を与える変化を促すことができます。ルーティンワークを管理するだけが組織力ではないという意識が必要でしょう。
3.組織力が必要になった背景

組織力は、時代を問わず重要ですが、近年の社会の動きによって、さらに重要性が増していると言えるでしょう。人材不足などによって、既存人材の生産性を高める組織力が求められています。なぜ組織力がより重要視されている背景を見ていきましょう。
3-1 人材不足・人材獲得難の時代の到来
現代は、人材不足が顕著で、人材獲得競争が起きています。若手従業員の早期離職や転職市場の活発化によって、人材流出に悩む企業が増えているようです。
人材不足に対して、有効求人倍率は、2019年1月時点で1.63倍となっており、求職者の数を求人が上回っています。人材不足に悩む企業同士の人材獲得競争が起き、人材を獲得できずに人材不足に陥るというのが現状です。
人材を獲得しにくい現状では、人材を確保し、既存の人材で企業の成長を目指す必要もあるでしょう。企業の組織力を高め、業務の効率化、人間関係づくりをし、生産性を上げていくことが大切です。
3-2 個々の能力の発揮を目指す時代
ランサーズ株式会社の2018年度調査によると、フリーランス人口は3%増の1.119万人、経済規模は9%増の20.1兆円と示されています。副業解禁の流れによって、副業やパラレルワークなどに取り組みやすくなっているとわかります。
副収入を得たいという思いもありますが、自分のスキルを発揮したい、新たなキャリアをつくりたいといった思いで、フリーランスを選択する人も多くいます。個人の能力を生かせる時代になりつつあると言えるでしょう。
副業解禁の流れが強まることで、どの企業も従業員が副業を始めたり、フリーランスを選択したりする状況に直面するでしょう。企業の組織力がなければ、従業員が副業に重きを置いたり、独立を選んだりする可能性があります。組織力を高めることで、本業へのモチベーションの維持などによって、企業の成長を目指すことができるでしょう。
4.企業の組織力を高める取り組み

企業の組織を高めるためには、従業員の向かう方向を示すことが大切です。明確な目標設定や人間関係づくりなどが、組織力の強化に必要になるでしょう。組織力を高める3つの方法をそれぞれ解説していきます。
4-1 企業理念・目標を全体で明確にする
組織力を高めるためには、明確な企業理念や目標が必要です。企業が何を目指しているかという企業理念を明らかにします
企業理念に基づいて、企業が何を目標にするかを明らかにすることで、従業員それぞれが何に向かって取り組むかが明確になります。具体的な数値目標などがあると、目標達成に向けて、組織がまとまりやすくなります。
組織として動けていない場合は、目指すものが明確になっていないことがほとんどでしょう。まずは基本となる企業理念・目標の設定・共有から取り組みましょう。
4-2 コミュニケーションを活性化する
組織にいる人同士の関係が良いことも、組織力のある企業に欠かせません。同じ目標に向けて取り組んでいても、上司と部下、同僚同士の仲が悪ければ、業務を円滑に進めることができないでしょう。
組織力を高めるためには、コミュニケーションを活性化させましょう。従業員同士がコミュニケーションをとることができるミーティングや面談などを積極的に取り入れます。
日々のコミュニケーションも大切であるため、コミュニケーションスペースやオフィスレイアウトの変更など、コミュニケーションをとりやすい環境づくりも効果的です。
4-3 教育体制を整える
従業員の教育は、組織力を高めるひとつの方法です。組織力を高めるためには、企業について理解した人材が必要になります。教育体制を整えることで、仕事に生かせる能力を身に付けるだけでなく、企業理念や人事制度などを共有することができます。
教育体制の整備は、人材の確保にもつながります。教育によって準備した上で、仕事に取り組むことは、現場と教育のギャップを埋めることができます。若手にしっかり教育することで、これから入ってくる人材も同じ方向を見られるよう、教育することができるでしょう。
5.企業の組織力を高めるリーダーの役割

従業員を引っ張る経営者や管理職などのリーダーの役割も重要です。リーダーが従業員をまとめ、同じ方向に導くことで、組織としてまとまることができます。組織力を高めるためのリーダーの役割を見ていきましょう。
5-1 リーダーが先頭にたって方向性を示す
リーダーは、従業員の手本となる必要があります。指示や指導をする立場であるリーダーが企業目標に向かって取り組んでいる姿が、従業員も同じ方向へ進むきっかけになるでしょう。
リーダーが手本になれないと、従業員も仕事への取り組み方が怠慢になり、モチベーションが下がることも考えられます。まずリーダーが目標に向かって実践し、方向を示すことが大切です。
5-2 組織の課題を発見し、解決に導く
リーダーは、組織をまとめる存在であり、組織を導く役割があります。先頭にたって従業員を引っ張るだけでなく、組織を俯瞰して、課題を発見することも求められます。見つけた課題に対して、解決に導くことで、組織を同じ方向に向かわせる軌道修正をおこなうことができます。
課題を発見するためには、広い視野を持って変化に気づくことが大切ですが、コミュニケーションによって課題を知ることも必要です。従業員との定期的なミーティングや1対1の面談などから、素早く課題に気づき、働きやすい組織を整備することで、組織力を高めることができるでしょう。
5-3 従業員の能力を生かす
従業員の能力を生かすことも、リーダーの役割です。個人の能力を生かせるように、環境を整えることで、個人が活躍した上で、企業目標に向かって取り組むことができます。スキルを発揮できることは、組織やリーダーへの信頼につながります。
リーダーだけが頑張るという状況も回避でき、組織全体で目標に向かって、取り組む姿勢が生まれます。
6.組織力向上を図る具体的な企業例

組織力は、企業の成長に欠かせない要素のひとつです。組織力を向上し、企業を成長させようと取り組む企業は多くあります。具体的な企業の取り組みから、組織力向上のヒントを見つけましょう。
6-1 株式会社ZOZO
ファッション通販サイトZOZOTOWNを運営する株式会社ZOZO。株式会社ZOZOは、目標を達成できた場合の15時退社を制度に導入しています。15時退社に向けて、目標を達成しようと取り組むことができます。
15時退社によって、仕事以外の時間も増え、従業員のワークライフバランスも実現しています。ワークライフバランスの実現によって、会社への信頼も高まり、企業目標に向けて取り組む組織力を上げることができます。
6-2 Yahooジャパン
Yahooジャパンでは、1on1ミーティングを組織力強化に生かしています。上司と部下の1on1ミーティングを定期的に行い、部下の話を聞く機会をつくっています。部下の才能や適している仕事を見つけることを目的としています。
1on1ミーティングによって、部下個人が力を発揮できるようになるだけでなく、組織にも変化が起きました。会社への定着や信頼、指示への納得など、組織力が高まり、企業の成長を実現しています。
組織力に不安を感じている企業は、まず従業員個人とのミーティングの機会をつくってみましょう。個人の意見から個人の適正や組織の問題点が見えてくるかもしれません。
6-3 小松製作所
小松製作所は、組織力を強化するための方法として、リーダーの育成に力を入れています。部下が接する機会の多いリーダーを育成することで、上司と部下の関係から組織力の強化を図ることができます。
経営者に従業員と接する機会がない場合は、リーダーの育成は効果的です。従業員を引っ張る立場であるリーダーから組織力の強化に取り組んでみましょう。
7.まとめ
組織力の強化は、企業の成長に必須です。明確な目標設定やコミュニケーションの活性化によって、従業員の意識が統一されることで、同じ目標に向かって取り組むことができます。
組織力の強化には、リーダーの役割も重要です。リーダーが手本を示し、課題の発見・解決や個人を生かすことで、より組織力が上がるでしょう。企業の実践例も参考にして、組織力の強化を図りましょう。
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