短期離職を防ぎたい 退職理由と具体的対策について

 

はじめに

さまざまな業務に取り組んでいる人事部においては、採用業務も重要な業務の一つです。このところ売り手市場と言われて久しく、良い人材を採用するには時間も費用も費やしているのが実情でしょう。しかしながら最近ではせっかく良い人材を採用してもすぐに辞めてしまうといった悩みを抱えている人事担当者も少なくありません。短期離職をした人の退職理由を抑え、具体的対策についても知っておきましょう。

1.短期離職者の現状について

入社してすぐに辞める若者は根性がない、そう思っている人は少なくありません。しかしながら実際は大学卒業の学生であっても依然入社1年未満のうちに退職する学生の割合は30パーセントと長年これくらいのペースで推移しています。それぞれにさまざまな理由がありますが、人事部においては短期離職をする人が一定の割合でいて、今後もなくなることはないでしょう。

若者の短期離職は、労働意欲や生産性の低い社員が自主的に退職したり、即戦力となる中途採用に切り替えられるというメリットもなくはないでしょう。しかしながら採用コストが無駄になるのはもちろんのこと、新たに同じような新人を採用することが困難である、部署が新卒の社員を歓迎しなくなるといったデメリットもあります。そのため、若者の短期離職の原因を把握し、対策をとることは企業側の責務といってもよいでしょう。

2.短期離職の理由①給料や勤務条件に不満がある

就活生として就職するときは内定をもらうことに一生懸命になっていてその後が二の次になっている人も少なくありません。しかしながら、やはり入社して給料をもらってみると、手取りが安くて生活できない、といった人も少なくありません。特にアルバイトに明け暮れていた学生は、アルバイトでも手取りで言えば正社員並みの給料をもらっている人もいて、正社員として働く意味がわからない、という場合もあり短期離職へつながってしまうのです。

また、勤務地に不満のある場合もあります。全国に支店があるような大きな会社であれば予想と違って住んだことがないようなところに配属されることもあります。勤務条件が良ければそういった場所でも過ごすことができるでしょうが、勤務条件も良くなくそして慣れない土地で暮らすのは、それなりに精神力がいるものです。ストレスを感じてしまって短期離職につながることもあります。

3.短期離職の理由②仕事上のストレスがある

新入社員は学生時代とは全く違うストレスを感じることもあります。学生時代には成績がトップクラスで、褒められてばかりいた人が社会人になって全く違う環境になるとストレスを感じることもあります。学生時代には多少の寝坊や遅刻が許されていた人も、社会人になるときちんと毎日決まった時間に出社しなければなりません。それだけでもストレスを感じることもあるのです。

トップクラスの学生であっても、会社に入社するとその道のスペシャリストにはかなうことがありません。それを自覚せずに入社すると、まるで自分がなにも「できない人」のように感じてしまいます。そういったことが、この仕事は自分に向いていないのではないか、と思って短期離職をするケースもあるのです。

4.短期離職の理由③会社の安定性や将来性が不安

いくら就職活動時に企業の情報をしっかりと集めたとしても、入社してみなければわからないことはたくさんあります。就職活動時には、企業の「よいところ」しか伝えない企業もたくさんあるからです。いざ入社してみると現場の雰囲気が悪かったり先輩社員には気がみられなかったりすることもあります。そして会社に対して肯定的な意見を聞かないところから、この会社にいても大丈夫かどうか心配になってしまうこともあります。

もちろん、特定の部署で数か月働いただけで会社のことがわかるとは到底思えません。しかしながら、会社の雰囲気が悪い、この先見込みがないという話ばかり聞く、というのは新入社員の立場からすればこんな会社はサヨナラして若いうちにもっと安定性のある企業に入社したほうがよいのではないか、と思ってしまうのです。

それだけでなく、会社の風土や経営理念が合わないということもあります。経営理念が自分の性格とかけ離れている場合、それをカバーできるくらいの職場の雰囲気や仕事上の意味がないと会社にいても意味がないと思ってしまい、短期離職につながることもあるのです。

5.短期離職の理由④労働時間に不満がある

短期離職の大きな理由の一つとしては、労働時間に不満があるといったこともあります。たとえば、最初の求人票では一日8時間働いているとなっていたのに実際は朝から夜遅くまで働かなければならない人からすれば、この状況を早く脱したいと思うのは仕方のないことかもしれません。特にプライベートな時間を削ってまで仕事をしなければならないのは、まだまだ学生時代の付き合いが残っている新入社員には不満があるものです。

まだ残業手当として対価に見合った労働であればましなのですが、入社して数か月は演習でなかなか労働時間、残業時間として給与に反映することは少ないでしょう。プライベートな時間がなければ考え方も後ろ向きになり、休養も取れずにストレスが溜まってしまうということもあります。そういった毎日が新入社員の短期離職の原因となります。

6.短期離職の理由⑤求められる成果やノルマが厳しい

学生時代の勉強や論文は、基本的に努力をすれば成果が上がることが多いです。しかしながら社会人になるとやはり相手がある仕事なので学生時代のようにうまくはいきません。親友社員のうちから求められるノルマや成果が厳しすぎると、仕事がうまくいかずにストレスを感じてしまうこともあります。

仕事の仕方も特に教わらないうちから売上を出したり新たな受注をするといった目標を与えられると、当然ほとんどうまくいきません。そのうまくいかずに気持ちが折れてしまうと仕事のやる気が低下してしまいます。そうすると自分の存在意義がわからなくなり、この会社にいても仕方がないので退職しようと思う新入社員も少なくありません。

7.短期離職の理由⑥仕事にやりがいを感じない

入社したばかりの新入社員の多くは、仕事をさあやろうとやる気になるものです。その仕事にやりがいを感じていたのに日々単純作業やアルバイトと変わらない仕事を任されると、仕事が面白くないと考えてしまいます。

新入社員の多くは給料のためだけに仕事をしているのではなく、やりがいや意味を求めています。確かに、先輩社員と同じようにノルマがきつい仕事を任されてしまうともちろん反発心も生まれてしまうのですが、だからといって意味がない仕事をずっと続けていくのもつらいものです。仕事にやりがいを感じず先が見えないと、それだけで退職をしたいと考えてしまうのです。特にキャリア志向の強い人だと、自分がこの会社でキャリアを積んでいくという未来が見えないと、短期離職につながってしまいます。

8.短期離職の理由⑦職場の人間関係がうまくいかない

人間関係を理由に転職する人は少なくありません。毎日一緒に仕事をする人だからこそ、タイプの合わない人と仕事をするのは大変なことです。ある程度社会人経験があればどんな人でもビジネス上の付き合いとして割り切ることもできますが、新入社員にとっては大変骨の折れることです。

また、部署自体が新人を歓迎していないので雰囲気が悪いということもあります。新入社員をあからさまにお荷物扱いしたり、あまり仕事を親切に教えてくれなかったりということです。もちろん、環境に恵まれることが当たり前だと思っている新入社員にも非はありますが、あまりにもあたりがきつい人ばかりいるのも職場の雰囲気としては考え物です。

9.短期離職への対策①給与や処遇に関してはしっかりと伝える

新入社員はまだまだ給与についての知識はないので、初任給がそのままもらえるお金だと勘違いしてしまうこともあります。実際は法定福利費などが差し引かれるので、手取りが少なく感じられます。奨学金の返済などを抱えているとそういった悩みは深刻です。

給料に関しては特に伝えていない会社であっても、採用面接や内定者研修などでしっかりと伝えるようにしておきましょう。わからないなら質問すればよいではないかと思う人もいるかもしれませんが、採用試験中になかなかそういった質問をできる学生は少ないのです。内定する前か入社する前に年の近い先輩と懇談する機会を設けたりして、自分が社会人として暮らすというイメージを持たせれば、早期離職する前に入社して大丈夫かどうか考えられますので短期離職を防げます。

10.短期離職への対策②採用段階でのミスマッチをなくす

仕事内容や労働時間の件が説明と違っていたり休息の時間がないと、どうしてもストレスを感じてしまいます。特に労働時間については採用面接の段階では所定労働時間しか伝えない会社側にも問題があります。これは、残業手当を支払えばよいとかそういった問題ではなく、休息してリラックスをする時間を持たなければどうしても後ろ向きに物事を考えがちになり、早期離職につながります。就業条件については、きちんと採用の段階で伝えておきましょう。

新入社員が長時間労働を強いられている、これは何も新入社員だけではなく、職場全体の問題として考えないといけません。特定の部署だけがそうであるならばもちろん人材の配置などを考えて、改善するように努力しましょう。また、労働に応じて対価が払われないのであれば、規則を変えるなど人事側が努力しなければならないでしょう。社員の短期離職だけでなく、コンプライアンスにもつながりますので、人事としてはきちんと確認しておきたいところです。

11.短期離職への対策③会社についての情報をある程度オープンにする

会社の上層部が何を考えているかわからない、こんな会社で長く働き続けたいという新入社員は多くはないでしょう。採用面接の時は格好の良いことばかり言って現場で花にも反映されていないというのでは失望してしまいます。また、自分のキャリアが積めない、長く勤務した自分がイメージできないというのでは、これはまた失望してしまいます。

入社研修では会社の先輩はもちろんのこと、経営陣とも話をすることができる機会を設けるとよいです。また、キャリアについてはロールモデルとなる先輩とコミュニケーションを取ることで、入社してからの自分をイメージできます。また、会社で取り組もうとしていることがあれば、イントラネットなどでしっかりとアピールすることが必要です。経営陣や諸先輩が新入社員を大事にしていこうという姿勢を打ち出すことで、安心感が芽生えて早期離職を防ぐことができるのです。

12.短期離職への対策④仕事にはやりがいを与える

入社してからの新入社員の仕事は、会社に利益をもたらすというよりも、会社のことや仕事のことを「学ぶ」ということがほとんどです。これももちろん会社にとって必要なことですが、新入社員にとっては何を目指したらよいかわからなくなります。また、配属された仕事が単純労働などあまりにも退屈なものであると、その仕事を行う意味が感じられません。

人事部としてはその部署の責任にせず、新入社員がどのような仕事を行っているのかをしっかり把握する必要があるでしょう。また入社してすぐの新入社員にはもちろん難しい仕事は任せられませんが、かといって入社して意味がない仕事というわけにもいきません。人事部が主導権を持って、誰にどのような仕事を任せていくのかを含めて、きめ細かなケアが必要となるでしょう。新入社員を配属したら終わり、ではなくどういった仕事をしているのか、そこにやりがいがあるのかを含めて皆で考えていかなければならないことなのです。

13.短期離職への対策⑤新入社員への接し方を教える

新入社員に対する研修には力を入れているのに、新入社員を迎えるほうには何のレクチャーもしていない、これでは新入社員が歓迎されずに疎外感を感じて退職するというケースも考えられます。確かに、忙しいから新入社員を必要としているので、そういった渋所の先輩社員たちを拘束して研修することはできないという気持ちもあるでしょう。しかし、Webなどを使って効果的に新入社員に対する接し方などを学べる機会があると社員の定着率も上がるでしょう。

特に、新入社員の仕事は利益に直結するものが少ないので、モチベーションを上げるのが難しいです。しかしながら若手の新入社員はモチベーションが上がらないと仕事をするのも難しく感じてしまうふしもあります。そのためには新入社員を「褒める」ことが重要になります。どういったときに何を目指して褒めればよいか、このようなことをケーススタディとして先輩社員や上司となる人に気づかせることが、若手の社員のモチベーションアップにもつながります。結果、短期離職する社員を防げるだけでなく、その職場の成果をアップすることにもつながるのです。

14.短期離職への対策⑥ 職場の雰囲気、人間関係に気を付ける

職場の雰囲気が悪いと早期退職につながってしまいます。新入社員の早期離職はほとんどの会社が経験していますが、それを個人の問題と片付けてしまうと、問題のある職場や上司が放置されてまた早期離職につながってしまいます。職場が新入社員を歓迎しようとする雰囲気があるか、新入社員に対して厳しく当たってしまう人がいないかは事前にきちんとしておきましょう。

なかには、人間関係で悩みを抱えて早期離職につながってしまうケースもあります。そういったときは年次の近い社員や人事の若手などに相談できる相談機会を設けるようにしましょう。相談員は新入社員の目標となるような人にすれば、何を目指したらよいのかわかるのでより仕事をしやすくなるでしょう。ストレスや悩みは一人で悩んでいても深刻になるだけですし、今後の影響を考えても同じ職場の人にはなかなか相談できない、ということもあるでしょう。こういったときに 若手社員が相談に乗ってくれれば、後先考えない退職を防ぐことができます。

適度なコミュニケーションも時には必要です。プライベートの時間を犠牲にしない程度に、会社の他の人と交流できる機会を作りましょう。会社施設を使ってスポーツをしたり懇親会をするなど、人事部が率先して機会を作りましょう。他部署の人と交流することが若者の心をひきつけ、仕事のモチベーションにも影響するからです。

おわりに

会社にとって若手社員の退職は大きな打撃です。その理由としては、仕事にやりがいがなかったり、キャリアプランが思い描けなかったり、人間関係に躓きを感じたりすることです。会社とのミスマッチということもあり得ます。若手の短期離職は会社にも大きな影響を与えるので、しっかりと対策をすることが必要です。

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