ゆとり世代の育て方 世代の考え方に合わせた具体的取り組み

 

はじめに

自分と違う世代を育てるわけですから、いつの時代も新入社員を育てるのは簡単なことではありません。しかしながらもっともそのギャップを感じるのが「ゆとり世代」と言われる人たちでしょう。ゆとり世代は従来の詰込み型教育ではなく、「ゆとり教育」を受けた世代であり、そのため競争するといった経験が少ないまま社会人になっています。そのため、従来の打たれ強い世代のように育ててしまうと、仕事に挫折したり精神的に疲労をしてしまい、退職へとつながることがあります。このようなゆとり世代を厳しい社会の中で育てるにはどうしたらよいのか、知っておきましょう。

1.ゆとり世代とは?どんな特徴があるのか

ゆとり世代とは、2002年から10年ほど続いた「ゆとり教育」を受けた世代のことです。ゆとり教育とはこれまでの詰め込み教育の批判から生まれたもので、具体的には「土曜授業の廃止」「学習内容の三割減」などといった学習内容を必要最低限にとどめるというものです。

学習内容や負担の削減といったこと以上に、無理のない教育をすることになり、自主学習が重んじられました。人と比べない、オンリーワン思考によって競争意識が低下してしまったという弊害があります。このようなゆとり教育を受けた世代と言えば、厳密にいえば1987年生まれから2008年生まれになるのですが、色濃く影響を受けていたのは現在22歳から28歳くらいの方になるでしょう。

このようなゆとり世代は、競争を重んじない教育を受けてきたため、社会に出るとどうしてもマイペースという印象があります。加えて、この世代で大きく発達してきたインターネットの影響もあり、自分で何かを経験するよりも、調べたほうが早いという価値観が確立された年代でもあります。インターネットの目覚ましい普及により、従来からの価値観の転換を若いうちから迫られた世代であるという特徴もあります。

2.ゆとり世代はなぜ社会に適応できないのか

ゆとり世代は、個性を重んじられるようになったため、オンリーワンになるように教育されたと世代という特徴があります。オンリーワンになるためには、従来の枠にとらわれない考え方が必要になり明日。加えて、インターネットが盛んになったことにより、何でも調べて答えを得ることができます。そのため従来の働き方を「非合理」「意味がない」と考えてしまう人もいます。その点、新入社員に必要とされるのは、決められた服装にビジネスマナー、毎日の研修や朝礼、そして報告書などです。これらの新入社員が必ずやってきたことに対して、どこか「非効率的」「前近代的」といった考え方を持ちがちです。そのため、そういった価値観が受け入れられず、扱いにくい新人、と思ってしまうことも少なくありません。

効率的に結果を出したい、正解にたどり着きたいと思うのもゆとり世代の特徴です。インターネットのような簡単なツールを利用して答えを求めてきた世代だからです。そのため、正解がない会社の仕事に対しては戸惑いを覚えることもあります。また、ゆとり教育においては、自由時間をかなり重視してきました。社会人生活においてもそれは簡単に切り替わるも尾ではなく、言われたことをやってそれ以外は自由時間と考える人も少なくありません。それが、社会人から見ると、「言われたこと以外やらない」という印象につながってきます。

言われたことをやる、言われたことをやる以外の時間は自由時間、というのもゆとり世代独特の価値観かもしれません。となると、問題となるのがプライベートの時間の使い方です。ゆとり世代の中には、会社で働いている時間は会社員だがそれ以外は自由時間と考えている人が少なくありません。もちろん、会社の飲み会などプライベートな付き合いを拒絶しているわけではなく、意味があればしたいと思っている人もいるでしょう。しかしながらその意味が分からない新入社員のときには、プライベートを重視して会社の付き合いは拒絶するとみられてしまうこともあるのです。

3.ゆとり世代には褒めて伸ばすことが必要

ゆとり世代の大きな特徴としては叱られ慣れていないことがあります。体罰への過剰な反応で学校現場では律することよりも自由にのびのびさせる教育が流行っていました。彼らの親世代も、厳しくする団塊の世代とは少し違っていて若い人の自主性を重んじています。そして、ゆとり世代の人は競争されて育っていないのでとびぬけて競争意識が低いという特徴もあります。要するに、競争意識が低く、少し叱られるとやる気がなくなってしまう、もしくはメンタルが弱ってしまうのです。

そういったゆとり世代の人は、ストレスへの耐性が低いです。そのため、叱られるとそこで委縮してしまいます。こういったゆとり世代を育てるのには、「褒める」ことが有効です。かといって褒めるというだけでは甘やかしてしまうことにもなります。褒める、評価するにはその人のことをきちんとみて、その人の貢献度について評価するようにするとよいです。オンリーワンの教育を受けてきたゆとり世代だからこそ、自分に対する評価、自分だけを評価していると感じたときにモチベーションが上がるのです。

ゆとり世代を褒める、叱る、というよりもむしろゆとり世代を評価する、指摘する、といったように早くから一社会人として取り扱うようにすると、それだけ頑張ることに意味を感じてしっかりと働くようになるのです。叱るときの注意としては、人格否定に過剰反応する傾向があるので、できていない点を、どういうように改善したらよいか指摘するとよいです。常に冷静に指摘することで、ビジネスパーソンとして取り扱われたことに価値を感じ、素直に指示を聞いてくれるでしょう。

4.目標や意義をはっきりさせる

ゆとり世代の人は言い換えれば常に不安を感じてきた世代です。生まれてから一度も好景気を経験したこともなく、終身雇用制など今まで絶対とされてきた価値観が崩れた世代です。教育現場においては、絶対的価値観であった偏差値といった指標が疑われた時代で、好きなことや自分の価値観を重視されるようになりました。このようなゆとり世代の人には、成長したいと口では言うものの具体的に何をしたらよいのかわからない、と思う人も少なくありません。

そういった人が仕事を気持ちよく行うには、その仕事の目標や意義をはっきりさせることが大切です。自分の仕事にどういった意味があって、何につながっているのかわかればそれだけで仕事をやる気になるのです。インターネットが普及して今までできなかったことが簡単にできるようになった時代に育ったゆとり世代は、効率を重視、結果を重視します。仕事の目標がはっきりすると、驚くべき集中力を発揮することもあります。

ゆとり世代がきちんと会社の仕事に意義を見出し働いて戦力になるためには、その仕事の指示の仕方が大事です。新入社員にやる気を出させるからといって単純作業や面倒な仕事はさせない、というのはその人にとっても良くありません。単純作業であってもそのことが会社の仕事や組織の目標にどのような意味があるのかをしっかりと話すことが必要です。コミュニケーションを取りながら、彼らの特性に着目して仕事を指示すると、どちらも気持ちよく仕事ができ、成果も上がるでしょう。

5.皆の前で失敗をさせない事

ゆとり世代の多くの人は叱られた経験がないので、失敗をするのを極端に恐れます。どうしてもこのままでは失敗してしまう、という場合は失敗する前にフォローをするのは上司の大切な役目です。誰でもしてしまいそうな失敗が退社につながってしまうのも、ゆとり世代の特徴の一つです。

失敗だけでなく叱責も恐れます。職場でやりがちな叱責も、多くの人の前でついやってしまうと周りからどう思われるのか気になって叱られても素直に受けられなかったり、ほかのことを気にしてしまいます。かといって指摘をしないわけにはいきませんので、そういったときは人目に考慮して指摘しましょう。叱るまえに、叱られることは恥ずかしいことではなく、誰にでもあることだと理解してもらうことも必要です。通常であれば学校や家庭で培われる失敗に対する免疫がないのもゆとり世代の特徴です。叱るときはあくまでもソフトに、どういった点を改善すればどういった意味につながるのか、論理的に冷静に教えることが大切です。

上司にはこういった叱責をするのは骨が折れることで、自分は怒鳴られたりして育ったのに、という見方をする人もいるでしょう。しかし、指摘をするときに理由までスマートに説明するというスキルは、今後取引先や自分の上司と交渉するときにも役に立つはずです。叱責するときや指摘をするときはまず一呼吸おいてどう説明すればよいか考えるようにするのがよいです。

6.ゆとり世代の社員の行動には理由をしっかりと聞く

どのような世代の人でもそうであるように、やはり価値観が違うとどうしても行動様式も違ってしまいます。そこを理解しないで自分達と考えが合わないから仕方ない、というように思ってしまってははなからゆとり世代の社員を戦力化することなどできません。自分が理解されない行動をとった場合は、叱ったり注意したりせずまず理由を聞くようにしましょう。

たとえば会議や朝礼などの態度が悪かった時や仕事をあまりしなかった時でも、叱責したり行動をけなしたりするのは余計にゆとり世代の社員のモチベーションを下げてしまいます。まずは理由を聞くことから始め、そのうえで指摘するべき点は指摘します。また、その理由で自分の考え方と違う面があるのなら、素直にそれを受け入れることも必要です。

だからといってゆとり世代の社員にあわせて会社の仕事や行動様式を変える必要はありません。一つの意見として心にとどめておくと、今後の組織運営に役立つかもしれないからです。

6.プライベートを束縛しない

ゆとり世代の特徴は、仕事は仕事、プライベートはプライベートと分けている考え方です。今でこそ働き方改革でそういった価値観が浸透しつつありますが、まだまだ仕事とプライベートを分けられない人は少なくありません。そういった考え方のゆとり世代の社員には、飲み会などの不必要な拘束は避けるようにします。中には、会社の飲み会を出世の場として考えているようなゆとり世代もいないわけではありません。純粋に仕事だから、コミュニケーションだから、と参加しているわけではなさそうです。

そんなゆとり世代の社員には、仕事外での付き合いを強制しないことが大切です。付き合いが嫌いな人は、強制すればするほど反発されてしまいます。そもそも、コミュニケーションとは、プライベートの時間を削らないと成立しないものなのでしょうか。仕事の時間に仕事を任せることを通じてコミュニケーションを取るように柔軟に考え方を変えていくようにしましょう。

どうしても仕事外、業務外に話をするのが必要なのであれば、あまり負担のないようなランチに誘うのも一つの方法です。その時も自分の精神論を押し付けず、相手の話を聞いて理解するようにすると、ゆとり世代の社員の考え方がわかってくるでしょう。

7.ゆとり世代の得意分野にフォーカスを当てる

打たれ弱い、忍耐力がない、マイペース、といったように何かとマイナスイメージを持たれがちなのがゆとり世代の社員の特徴です。しかしながら裏を返せばゆとり世代の社員は、忍耐をするのではなく合理的に最速の解を導き出す、という力に長けていることがあります。インターネットと一緒に育ってきた世代であることを考えるとパソコンを使いこなす力は従来の社員よりもより持っていると考えて良いでしょう。

そのため、何か調べ物を任せたり、パソコンを使って業務を効率化するなどといった業務であれば、驚くほど簡単に正解を出すこともあります。ゆとり世代は確かな指標がなく育ってきているので自分に自信がない人が多いです。だから、自分で何かを考え出すことは苦手でも、そのような事例に他社ではどう対応したかといった具体的な策をインターネットで調べるといった仕事であればよほど上司世代より早く成果を出すこともあります。

ゆとり教育を受けている世代は、指標のない中を自由に、個性を大事に問育てられてきました。そのため、自分を出しきれる突出したタイプか、自分に自信がないタイプに分けられます。突出したアイデアを持つ人であれば、アイデアを出すような仕事であれば、違った視点で切り込んでくるかもしれませんし、自信がないタイプであれば、きちんと道筋さえ示してあげられれば大きな集中力を発揮することもあります。その人の得意分野にフォーカスを当てて戦力化するとよいでしょう。

8.慣習にも意味がある、それをしっかりと教える

ゆとり世代の人は、パソコンやスマホを使いこなしているので、メモを取ることができない、メールを使いこなしているので面と向かって言うべき連絡事項でもメールで済ませる、アクシデントがあっても途中で連絡すれば大丈夫とぎりぎりにしか行動しない、という人もいるでしょう。

そういった点ではあまりにも新入社員にあるべき態度が取れていないと失望する人もいるかもしれません。しかしながら、そういった行動をするには彼らにもわけがあります。また、PCやスマホ、iPadなどで便利にメモを取ったり録音したり撮影したりといったことも、手書きより効率だから行っているのかもしれません。

決して悪気はないのです。彼らに、そういった慣習にどのような意味があるのかを含めてきちんと指導すれば、素直に受け入れてくれるでしょう。PCやスマホを仕事のツールに使うのは賛否両論ありますので、部署を含めて徐々に良いところは取り入れていく柔軟なものの味方をするのも良いかもしれません。

9.ゆとり世代だからと決めつけない

ゆとり世代の社員たちは、就職活動中から何かについて「ゆとり世代だから」とネガティブなイメージでくくられている、考えてみれば気の毒な世代です。そのため、君たち世代は、というように世代で判断するようになると、その言葉だけで反発を生んでしまいます。ゆとり世代だからと決めつけたようなものの言い方をしてしまうのはやってはならないことです。

せっかく個性的に育てられてきた世代だからこそ、その人にフォーカスを当てた指導をするようにしましょう。世代でなくて個人で評価してくれている、ということが相手に伝われば、その人の個性を良い方向で発揮するようになるでしょう。

おわりに

ゆとり世代は、ゆとり教育を受けてきたため非効率的なことを極端に嫌い、旧来の会社の方針と合わないかもしれません。競争社会で叱責された経験があまりないので、強すぎる叱責に耐えられないこともあります。しかしながら、合理的に物事を突き詰めていったり、インターネットなど便利なツールを使って効率的に物事を成し遂げることには比較的優れており、また個性的に育てられたので考え方も斬新な場合があります。この世代の特徴を理解して叱責などのときは注意し、一方でそういった長所を仕事や組織運営に生かすとよいでしょう。これからは顧客にもゆとり世代が増えてくるかもしれません。彼らの考えを理解し、成果を発揮させる環境にすることが、ビジネスチャンスをつかむことへもつながってくるのです。

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