求職者が納得できる採用プロセスとは

 

はじめに

少子高齢化による労働人口の減少や、企業競争力強化のためにも人材採用は人事業務をするうえで最も大事な業務の一つです。しかしながら近年問題になるのは、入社後、会社とのギャップを感じ戦力になる前に離職したり、多大な採用コストをかけたにもかかわらず、内定辞退をしてしまうというものです。どうしてこのような問題が発生するのか、今後どのようにすればよいのかを知っておきましょう。

1.若者は納得感を大事にする

入社後早々にギャップを感じてやめてしまう、内定者が内定辞退をして同業他社に流れてしまうというようなことは、珍しいことではありません。しかしながらこれでは多大な採用コストをかけても無駄に終わってしまいます。だからといって必ずしも会社の体制に原因があるわけでもありません。一つ言えるのは、採用するときに「自分がどうして内定したのかという納得感がない」ということも大きな原因なのです。

特にゆとり世代やそれ以降の若者を採用するにあたっては、競争社会ではなくそれぞれの「個」を重んじられてきたので、自分をはかる価値観、ものさしが多様化し、それゆえに「必要とされる」場を探しています。偏差値や競争原理という物差しから脱却したので、内定だけでは満足できません。自分でなければならない、と認められて入社するとそれだけでモチベーションも上がります。

逆に、いくら大企業に内定しても、自分でなくても他の人でもよかったのではないかという疑念を抱いてしまうと途端にモチベーションが低くなります。モチベーションが低くなってしまう年ごとに設け身になってしまい、どうしても自社の悪いところばかり見つけてしまいます。そのようなときに、「あなたのこういうところがこの仕事に向いている」という見方をされれば、自分の個、価値観とマッチすることになりより社会に出ても前向きに仕事をします。それが成果へとつながることも多いので、早期離職を避けられるのです。

2.早々に内定を出す就職活動は終わっている

就職難が続き、少しでも安定した企業から内定をもらいたい、一昔前はそう思う学生が少なくありませんでした。しかしながら、学生が企業を選ぶ時代になると、たとえ内定を得てもよりよい企業を求めて長期的に就職活動をする学生が少なくありません。インターネットや就職サイトの目覚ましい普及により、学生が応募できる企業の総数は増えてきています。だから、内定を出しても誓約書を書いても、それで終わり、ではなく自分にはもっと合う企業があるのではないか、と探し続けることが普通に行われています。

そういった学生のことを「青い鳥症候群」と揶揄する動きもありましたが、今は新卒で就職した企業が自分の社会人生活の基礎となることから、むしろ慎重に選ぶべき、と言われるようになりました。加えて、一昔前にはややもするとコンプライアンス違反ではないかというような内定学生の囲い込みが行われていましたが、今はコンプライアンスが重要視されているので、内定者の酷い拘束はできなくなっています。

そのため今企業の人事部には早々に内定を出して学生を囲い込みするのではなく、学生に納得して来てもらうことが重要視されています。学生だけでなくその家族にも良い印象を持ってもらって就職するには、まずは学生自体の納得感をあげる必要があるのです。そのためには、少ない選考で早々に内定を出してしまうのではなく、学生と企業の双方向がじっくりとコミュニケーションを深めてから内定を出す必要があるのです。ただ、いたずらに長く就職活動をするのでは、学生も疲弊しますしその間に他の企業に良い学生が流出してしまうこともあります。選考プロセスを増やすのではなく、限られた選考プロセスの中で、学生の納得感をあげる選考が必要なのです。

3.公平な採用活動をするためには

学生が納得する採用プロセスに最低限必要なのは、公平な採用活動をすることです。もちろんこれは機会の均等を言っているのではありません。遠隔地の学生には第一次面接、第二次面接を同日にやることで効率化したり、大学説明会に行く学校と行かない学校と言ったような区分をすることはむしろ効率化のためには必要なことです。実は、あまり気づかないところに公平でない採用活動の現状があります。顕著に表れるのが、面接官により差がつくことです。

一次面接や二次面接など、最初の方の面接においては面接官が複数いるのが当たり前であり、会社によっては面接官のスキルに差がある場合があります。したがって面接官の当たりはずれ、運の良し悪しといったものも当然存在します。採用に関する準備をしっかりしていても、面接官のトレーニングをしている会社は多くはありません。最近であれば、就活サイトなどで面接のフィードバックを書き込む学生も増えてきており、面接官の当たり外れがある会社だと、当然学生の納得感も少なくなります。

このような事態を打開するために、面接官のトレーニングに力を入れている企業もあります。工夫としては、同程度の会社、同業他社の内定者を集めて面接官の面接をしてトレーニングをするということが挙げられます。そこからのフィードバックで学生のどういったところを見てどう判断したらよいかという基準、すなわち価値観が一致していくので面接官による当たり外れがなくなります。第一次面接での評価をあえて第二次面接の評価者に伝えないということも有効で、実際に取り入れている会社もあります。

面接官の経験が少なかったり、自分が太鼓判を押した学生が入社後活躍するという成功経験を経ていない若手の面接官はどうしても面接に際し事実で判断しがちです。言い換えれば、前の面接者の評価、学生の学歴や成績、部活動やアルバイトの経験など書面でわかることを判断の基準にしがちです。そのようなことがつづくと面接を受けている学生からも「この会社は人を肩書だけで判断するのではないか」と思われてしまい、納得感につながりません。まずは面接官のスキルアップや求める人物像の共有を行い、誰が面接をしても評価の基準がぶれることの内容にする、この一連の動き、それこそ求職者が納得感をあげるための第一ステップです。

4.採用試験をあえて長くするメリット

面接は見た目が勝負、だから短い時間で終わらせてもよい、そう考えている面接官も少なからずいます。しかしながら、お互いに納得する採用活動を行うには、相互のコミュニケーションが重要であり、短時間でできるものではありません。最近では求職者の納得感を高めるためにあえて選考を「長く」「重く」している会社も少なからずあるのです。たとえば、選考の過程でグループワークを設ける、特にインターンシップをして職場を実際に体験することや、面接ではなく面談を設けて相互にじっくりと話をするというものです。

結果的に一日拘束されることになりますし、内定を出すまでのリードタイムも延びてしまいます。しかしながら、最終選考前にそういったプロセスをとることで、就活の辞退率もきわめて減っているのです。しんどい採用過程にしたからこそ離脱者が減ったという会社のほうが多いくらいなのです。

まず、従来「企業側が学生を選ぶ、という目的で行われていた採用活動では、企業への理解が不足しているがゆえに「採用しても実際に働いたら思っていたのと違っていた」という理由で離職する人が一定数出てきます。確かに、会社説明会などで会社への理解を促すような質問はかなりしているのですが、やはり会社説明会の時点では「数ある会社の一つ」に過ぎず、会社側がどんなに力を入れて説明しても脂肪度が高くない限りそんなに印象に残るということはありません。

しかしながら採用フローの中、最終面接など重要な曲面になって改めて会社に対する理解を得る時間をとるのは、同じ説明をしていても求職者の理解度が変わってきます。本当に内定を目前にすると、「この会社で働いてよいのか」「自分に合っているのか」をすごく真剣に考えるようになります。そうすることで入社後のミスマッチをかなり防ぐことができるようになるのです。

一方で採用試験の最終局面でグループワークや1日インターンシップを取り入れて選考することも、かなりメリットがあることです。選考のためのグループワークや、就職活動前のインターンシップと違い、学生一人一人をより鮮明に判断できるようになります。仕事のやり方は何を優先していくか、課題解決能力はあるか、仕事のやり方やものの考え方、価値観が自社と近いところにいるのかなど、本来は入社時研修や内定者研修でしか判断できないところを、実際の選考で判断できることはかなりプラスになります。実際のその人となりだけでなく仕事の仕方もわかるので、入社してすぐにその人にあった部署に配属できます。ジョブローテーションしてその人にあった部署を探すのではなく社員を文字通り即戦力として招き入れることができます。

5.採用試験を長く重くするにあたり大事なこと

採用試験を長くすると相互理解が進むなどさまざまなメリットがあります。しかしながらいたずらに冗長に長くしても、「この企業は単に採用がノロノロしているのかな?」と思われれば評価が上がることは無く逆効果となるでしょう。その時に大切なことは、やはり「目的を持つ」ことです。入社後のミスマッチや内定辞退は多かれ少なかれどこの会社でもあることです。何が課題で早期離職や内定辞退が発生するのかをしっかりと考えなければなりません。

そのうえで自社の採用にどういった課題があるのかをピックアップすることが大事です。活躍する社員と、早期離職した社員の選考の過程を集めてなにか気づきを共有するということも良いですし、会社説明の時間を改めて取る、職場体験をすることによって、より入社してからのイメージをわかりやすくするといった方法があります。いろいろな例があるなかで自社にあったものを確立することがよいでしょう。

人事部の意識改革においては、採用における納得感を高めるために公平性を保つことも大事で、面接官の研修などを考えなければならないでしょう。採用にあたって根底に「学生を選別する」という意識がある面接官は、「学生を選ぶだけでなく学生は企業を選ぶ。選ばれる企業にする」というように意識改革をしていかなければなりません。なぜ、どこを改革するのかをしっかりと意識しないといたずらに採用期間がのびるだけです。

求職者に企業を選んでもらう、という意識を身につければ、選考の場を増やすだけでなく、内定者と若手社員の懇談会、役員との懇談会など、求職者に企業のことを知ってもらい入社に対する疑問を解決してもらおうというようにフローが変わります。確かに社員、もしくは役員の貴重な時間を使うことにはなりますが、選考ではなかなか聞くことができない職場の雰囲気や福利厚生など、就活生の効きたいが選考が絡むと聞けない事、について知識を得られます。結果的に福利厚生が不十分、職場の雰囲気が悪い、などといった理由で離職したり内定辞退をする人を防げます。

6.求職者に結論を急がせないことも大切

採用フローを改革するにあたって陥りがちなのは、選考を長く重くはするけれど、学生の返事を急ぐ、という企業があります。コンプライアンスの面から学生の青田刈りが禁止されていることを考慮すると、例年通りのスケジュールでやろうとするとやはり無理がきてしまうからです。こうした場合陥りがちなのが、これだけ詳しく会社のことを知る機会があるのだから、すぐにでも返事ができるだろう、という内定承諾、入社の返事を急がせることです。

あえて選考フローを長く重くするからこそ、就活生、求職者にもしっかりと考えてほしいと期限を長めにしたほうが結果的に内定辞退を減らすことができます。また、余裕のある会社、理解をしてくれる会社、ということで就活生の納得感も上がるでしょう。内定を出すときも、単に内定、と言う文書を送るのではなく、どういったところを評価して入社してどういった活躍をしてほしいかを具体的に知らせることが必要です。そのうえで、一生を左右する問題だから慎重に考えて、家族とも相談して結論を出してほしいとはっきりということが大切です。

特に、最近では家族の反対にあって入社する気持ちが薄れてしまう内定者も少なくありません。企業のあり方も求職者とその親世代ではかなり変わってきます。そのために父兄対象の説明会や内定式をやっている会社もあるくらいです。このような点において、採用時には必ず親の了解を得られるように内定辞退から承諾書提出までの間をしっかりと1か月程度は開けることが必要です。そのときに疑問などがあったらいつでも受け入れるという体制をつくると、より選びやすくなります。

7.採用選考をあえて「長く」「重く」するためには

採用選考業務については、毎年行われていることであり、人事部の業務の中でもウェイトの高いものです。従来の採用選考では、工数を削減するためにどうしたらよいかということには主眼が置かれていましたが、内定者の納得度や幸福度、内定辞退率や離職率との関連性については議論が後回しにされていた傾向があります。そういった意味においては採用フローを見直し、内定辞退や早期離職を避けるのは求職者にとっても企業にとっても双方に良い傾向であるのは間違いないでしょう。

しかしながら、だからといっていたずらに採用選考を長く重くすることが良いとは思えません。今現在、内定辞退率を予測するサービスが人気であることや採用コストが毎年増大していること、離職率が決して少なくないことを考えれば、採用する過程でなにか抜本的な見直しをしたほうがよいのは確かでしょう。単に小手先の改革で採用選考を長く重くしても、求職者や協力する各職場の人に負担をかけるのでは元も子もなく、それぞれの選考フローがもたらす「意味」を考えながら改革していく必要があります。

求職者に負担をかけない採用方法が良いのではなく、内定を出す人、すなわち内定者一人一人に意味を与え、そして「大事にされている」「納得して入社ができる」と思わせるために改革することに意味があります。期間や費用に制約がありながらも、工夫をして人材を大切にする、納得感をあげる採用を実践するとよいでしょう。

おわりに

内定辞退や早期離職の原因として考えられるのは、採用試験時でのミスマッチです。納得をして入社をした人は、少々想定外のことが起きても耐えられますし、モチベーション高く仕事ができ、成果にもつながりやすいです。効率化の求められる人事業務ではありますが、採用試験をあえて「重く」「長く」することで相互理解やコミュニケーションが進み、求職者にも企業にも良い影響をもたらすことがあります。

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