日本の人手不足、HRテックが解決の手段となるか?

HRテックは人手不足を解決するテクノロジーとしてようやく日本でも認識され始めました。HRテックの導入はアメリカや欧米諸国で進んでおり、その導入までの経緯は日本と違い複雑化した人事の負担軽減をする目的が主な理由となりました。日本ではやや事情が異なり、人口減少による人手不足と企業の離職率の高さを解消する手段として導入を検討する企業が多く増えることになりました。今回は、こうした人手不足の時代にHRテックを導入することで企業や人事がどのように変わるのかを考えていきたいと思います。

日本の「人手不足」はどのくらい深刻なのか

日本の人口は2008年の1億2800万人をピークに減少しています。予測では2060年には9000万人を下回るとされていますが、こうした人口の減少は労働人口の減少に比例します。一般的に生産年齢人口は15~64歳とされており、2013年にはこの生産年齢人口は8000万人を下回り2060年には4400万人まで減少するという恐ろしい予測数字が国立社会保障・人口問題研究所から発表されています。単純に働く人口が半分になるのであれば、生産力を維持するには1人が2倍働かなくてはなりませんが、そんなことは不可能な話です。働く人口が減少することと比例して、企業数も減少していきます。現在でも企業が倒産する理由の1つには「人手不足」という項目が必ずあがってきます。こうした人手不足を解消する手段として大企業は早くから「海外支店」という日本人を雇用する以外の方法を模索してきましたが、中小企業であれば大掛かりな資金投資ができないために日本国内でどうにか解決できる手段を探すことになりました。経費をできるだけかけずに日本国内で人手を解消する手段としては「非正規雇用者」を採用することでした。フルタイムで社員を採用するのではなく、1日のうち短時間での働き手を採用しようとするものです。派遣社員、パート、アルバイトの採用はこうした背景で増え続けてきました。2017年のデータによると、日本の雇用者のうち、3400万人が正規雇用であるのに対して2000万人がこうした非正規雇用で全体の約40%近くを占める割合となっています。これがいかにアンバランスな数値であるのかは他の国と比較するまでもありません。こうした現状を打破するために2016年9月に提唱されたのがいわゆる「働き方改革」だったのです。その働き方改革の3本柱となるのが①女性や高齢者の労働促進、②出生率の増加、③労働生産性の向上、の3つです。つまり、日本が将来的に目指す動きとして女性や高齢者に適切な仕事を提供し、正規雇用と非正規雇用の格差解消を図ることで出生率を増加させ、AIやHRテックを導入して1人当たりの労働生産性を向上する、ということになります。国をあげて解消しなければならない「人手不足」の問題は、日本の生産力や国力の低下を招く非常に深刻なものなのです。

求人を最適化するHRテック

では、ここからはHRテックを導入することで企業がどのように変わっていくのかを考えていきたいと思います。最初のテーマは「求人」です。自社に最適な人材を探すことは、人事にとっても最大のテーマです。企業と人材の最適なマッチングは、離職率を下げ企業の成長を促す活力になるものです。求人に関してのHRテックを紹介したいと思います。

<LAPRAS>(https://scout.lapras.com/)

LAPRASはAIによるHRテックで、エンジニアに特化した採用サービスです。優秀な人材を転職市場から探し出すのではなく、転職洗剤層への採用アプローチを行うものです。LAPRASはオンライン上に公開されたエンジニアの情報を自動的に収集し、分析を行ってくれるため、人事はその作成されたプロフィールを企業によりマッチした順番に確認していくことができます。AI学習で、その情報は蓄積されていきマッチングの精度は高まっていきます。AIがその転職層が活動する時期へのアプローチするタイミングを知らせてくれるために無駄のないアプローチが可能となります。優秀なエンジニアを採用する手間を削減し、企業にマッチした人材を供給してくれるテクノロジーです。

<HRogチャート> (https://chart.hrog.net/)

HRogチャートは、日本にある130もの求人媒体をテキストマイニング手法により素早く分析するHRテックです。地域別、雇用形態、求人案件数、給与額などの様々なデータを正確に集計することができるため、採用マーケットの動向を調べることが容易です。日本の求人情報を客観的に分析することができるため、自社が採用を行う際にも競合企業の情報などを調べ、明確な差別化ポイントを打ち出した戦略的な活動を行うことが出来るようになります。

<MyRefer>(https://i-myrefer.jp/)

MyReferは、社員が知人に対して自社へ人材紹介を行う「リファラル採用」を促進するHRテックです。日本でもリファラル採用という言葉は徐々に認識されつつありますが、採用の効率化・コスト削減などに優れた効果があります。MyReferは日本でも400以上の企業に導入されており、中途採用・新卒採用・アルバイト採用・パート採用などにも利用することができます。人事が採用を行うのではなく、社員全員がリクルーターになって積極的に優良な人材を集めることを促進していきます。社員はSNSやメールなどで簡単に紹介を行うことができるために負担が少ないことが特徴です。

HRテックの導入により、求人の仕方も大きく変化します。これまでは求人広告を出すために、企業の人事は原稿や素材を準備し大きな資本を投じて広告をアウトソーシングしていました。HRテックはこれらの業務を最適化し、より少ない資本で効率化させることができます。特にAIを使ったマッチングについては、企業と求職者のより良い関係を導くものとして注目を集めています。企業の視点で考えると、入社する人材が事前にどのような活躍をしてくるのか、チームで良好な人間関係を築くことができるのかということを知ることができれば非常に効率的な採用をすることができます。HRテックに求められているのは単純に作業を効率化してくれるということではなく、蓄積されたデータからよりマッチングする人材を企業へ供給することなのです。また、MyReferのようなHRテックは日本の採用のカタチを変えてしまう可能性もあります。これまで、リファラル採用は日本の採用の主流からは遠い存在でしたが、こうしたHRテックの登場によりリファラル採用を積極的に行いたい企業も増えています。

採用管理の効率化するHRテック

採用の管理は人事にとっても煩雑な業務でもあります。良い求人媒体で多くのエントリーを集めたとしても、それらを有効的にするには多くの時間を必要とします。しかし、改めて考えてみると人事の仕事は庶務業務ではなく会社の根幹となる優良な人材を採用し、適切に配置することです。そのため、HRテックで管理を効率化し時間削減ができるのであれば積極的に採用すべきでしょう。まずは、どのようなテクノロジーがあるのかを見ていきましょう。

<talentio>(https://www.talentio.co.jp/)

talentioは、履歴書管理や面接評価、選考過程の人事業務を一元的に管理するテクノロジーです。客観的に採用活動の効果も分析することができ、ダイレクトリクルーティング、リファラル採用などの機能も備えています。Talentioが特徴的なのはあらゆる外部サービスとの連携がしやすいことです。自社採用ホームページ・労務管理・スケジュール管理などの連携を容易にすることで、幅広い人事業務を効率的に管理することができるようになります。

<ジョブオプ採用管理>(https://jobop.jp/ats/)

ジョブオプ採用管理は、自社の採用ホームページを開設するためのHRテックです。求人サイトであるIndeedと連携をしており自動的に求人情報を転送してくれます。また、面接管理、応募者への採用結果の自動通知などを行うこともでき、複数の媒体のから集まった応募者の情報を一元管理、媒体別の効果レポート機能など人事の業務を効率的・効果的にしてくれるHRテックといえるでしょう。月額の費用は定額制でコストの管理も安心して利用できるテクノロジーです。

採用管理系のサービスは、人事にとっても非常に有効的なHRテックです。膨大な時間をかけて行う管理業務の負担を軽減し、効率的な業務を行うことができるようになります。これまで繁忙期には大人数で行ってきた業務を、少人数で実施できるかもしれません。

企業のエンゲージメントを高め、健康的な働き方を提供するHRテック

人材不足を解消する要素として重要なのが、社員を定着させることです。つまり、離職率をいかに下げるかということです。離職率に大きく影響を与える用語として「社員満足度」という用語がかつて流行語のように使われましたが、企業で働く社員の働く環境の不具合や評価制度を見える化することで、そうした問題を解決していこうとするHRテックがあります。現在では「社員満足」という観点から一歩進化させた企業と社員の双方の成長を促そうとする動きを「エンゲージメント」と呼び、これからの企業はエンゲージメントを高めるための施策が採用されています。HRテックではどのようなテクノロジーが開発されているでしょうか。

<wevox>(https://wevox.io/)

Wevoxは組織のエンゲージメントを可視化するためのテクノロジーです。経営者や人事が設定したスケジュールによって社員へアンケート調査により、社内のトラブルや施策を計測することで的確な組織改善に活用することができます。2015年から日本でもストレスチェックが義務化されましたが、社員の抱える不満や問題点を組織として把握することでトラブルを未然に防ぐことが可能になります。社員への調査は1~2分程度で終わる簡易的なもので、回答する側にも負担が少ないという特徴もあります。

<FiNC for Business> (https://corporate.finc.com/business/)

FiNC for Businessは、社員の健康管理を行うためのHRテックです。ストレスチェックをより具体的に踏み込んだ内容となっており、メンタルヘルスだけでなく社員の生活習慣アンケート・食事・睡眠・健康診断のデータを分析し、健康状態を可視化し1人1人に合った改善プランを自動的に提案してくれるものです。健康状態に悩みを抱える社員が専門家とチャットで話せる機能もあり、企業で働く社員の健康に関するデータを一元化できる管理テクノロジーです。

<Unipos>(https://unipos.me/ja/)

Uniposは、企業内のコミュニケーションを活性化しエンゲージメントを高めようとする評価ツールです。企業で「評価」というと非常に重い印象を受けてしまいますが、「ありがとう」という感謝の気持ちを社員同士が相互的に伝え合うテクノロジーというとわかりやすいでしょうか。Uniposでは、社員同士がスマートフォンからお互いの成果や行動を評価し、少額のボーナスを分け合うことができます。給与以外でのフィードバックがないことに不満を募る社員を抱える人事の悩みを解決してくれるHRテックとして注目を集めています。一見すると経営陣からは見えにくいのですが、企業エンゲージメントを高める効果が期待できます。

誰もが健康で前向きに仕事をしたいという希望はありますが、企業においてメンタルヘルスやストレスを可視化することは、これまでの時代は困難でした。しかし、HRテックを使い社内サーベイからの結果を分析することで、そうした問題に対処できるようになるのです。また、企業と社員が双方的に成長をする「エンゲージメント」もこれからの時代では注目される要素でしょう。エンゲージメントを高めることで社員の定着率を上げることもでき、それが企業の長期的な活性化につながるからです。

勤労・労務管理を効率化するHRテック

これまでの日本の人事は、この「勤労・労務管理」に大きな時間を費やしてきました。しかし、HRテックによりこれらの業務は簡易化・自動化することができるようになりました。その削減できた時間で、人事はより多くの時間を戦略的な業務を行うことができるようになるのです。こうした業務はHRテックの得意とする分野であり、HRテックの導入をここから始める企業も多いでしょう。

<人事労務 freee>(https://www.freee.co.jp/hr

人事労務 freeeは、既によく知られているHRテックです。会計・給与計算の自動化と労務管理を一元に行うテクノロジーです。入社手続きの書類、残業代、税金、保険料など煩雑な給与計算を正確に行うことができます。振込や納税に必要な書類についても自動的になるため、これまでの人事の仕事が効率的に行えるようになります。

<AKASHI>(https://ak4.jp/)

AKASHIは、クラウドで勤怠を管理するHRテックです。多様な打刻の方法に対応することができるため人材が増えていく企業などにおいて、勤怠の申告業務などが煩雑と感じ始めた人事を助けてくれるでしょう。働き方が多様化する社会においてリモート勤務などの様々な働き方が増えていますが、そうした従業員の勤怠管理をスマートに行うことができます。AKASHIは他のサービスとも連携が可能であることも特徴の1つです。

製造業であれば人事の主な仕事は「勤労・労務管理」を行うことになるでしょう。しかし、日本ではサービス産業が発展し、人事は社員1人1人のスキルやパフォーマンスを最大限に発揮することができる「戦略的な人事」へと変革を求められています。これまでのように手作業で打刻管理や給与計算などをするのではなく、HRテックによる業務自動化をすることで時間を確保していかなければならないでしょう。

HRテックを導入することでどう変わる?

日本はかつてないほどのスピードで超高齢化社会を迎えることになりました。そうした社会で長期的に企業の業績を維持するのは極めて困難なことです。HRテックは人事の業務負担を軽減してくれるだけではなく、分析や企業が抱える問題に対して提案をしてくれるテクノロジーです。しかし、AIやHRテックはあくまで「補助ツールに過ぎない」ということも忘れてはいけません。人事は抱える煩雑なルーティンワークから解放されたのちに、企業の経営戦略を経営者の目線に立ち、組織を創り上げていくという役割を担うべきでしょう。人事がこれから企業で行う業務は、「人手不足をどのように解消すべきか?」「企業のエンゲージメントを高めるにはどのような施策があるか?」「アウトソーシングにより業務効率化できる部分はどこか?」「新しいプロジェクトで必要な人材をどのようにチームにまとめるのか?」というまさに経営者の右腕としての手腕が必要になります。また、HRテックが提供するデータを読み取り、合理的な判断をするケースが求められることになります。HRテックを導入することで、人事は「人にしかできない」仕事をする役割へと立ち返ることになるでしょう。これからの時代、企業は強い人事のいる組織を創り上げることが成長への鍵となるのです。

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