内定辞退対策をしよう!辞退理由や求職者の目、対策法を解説

人材不足・人材獲得競争の現代においては、採用活動で良い人材を獲得することが企業に求められています。説明会や面接などを経て、出会った人材をしっかり確保することが大切です。

しかし、採用する人材を内定したにも関わらず、内定辞退されてしまうことも増えているようです。採用活動の結果が出ないだけでなく、人材計画にも影響が出てしまいます。

今回は、内定辞退を防ぐ対策を解説していきます。内定辞退にどのような理由があるのか、求職者が企業の何を見ているのか、取り組んでいる事例なども合わせて、チェックしていきましょう。

1 内定辞退はどのくらいの割合であるのか

厚生労働省が発表した有効求人倍率は、平成30年12月時点で1.63倍とされています。求人に対して、求職者が多い状態で、求職者優位と言えます。企業と合わないと感じたり、良い企業が見つかったりすると、内定を辞退する求職者も多いようです。

では、内定辞退はどのくらいの割合であるのでしょうか。内定辞退の現状を知り、企業の置かれている状況などを把握していきます。

1-1 「2019年卒マイナビ企業新卒内定状況調査」から内定辞退率を見る

就職活動などで著名なマイナビでは、2019年卒マイナビ企業新卒内定状況調査を発表しています。国内8000社にアンケートを配布し、3013社の回答があった調査です。内定状況と合わせて、内定辞退率についても調査項目があります。

内定辞退率とは、内定を獲得した人材のうち、内定を辞退した人材が占める割合のことを指します。2018年卒の内定辞退率が64.6%にのぼったこともあり、注目される数値として知られています。

1-2 内定辞退率が3割以上の企業が56.0%

マイナビの2019年卒の内定状況調査によると、内定辞退率が3割以上にのぼった企業が、全体で56.0%となっています。内定者の約3人に1人が内定辞退をする企業が約6割あり、内定辞退が企業にとって深刻な悩みであることが伺えます。

さらに内定辞退率ごとに見ていくと、4割を超えた企業が22.6%と高い数値を示しています。人材獲得が難しく、獲得できても離職率が高い現代では、内定辞退は大きな痛手でしょう。選考途中の辞退も加わるため、現状はさらに厳しいと言えます。

1-3 小売・商社・金融は内定辞退率が高い

内定辞退率を業界ごとに見ていくと、全体の数値よりも高い業種として、小売・商社・金融が目立ちます。内定辞退率3割以上の企業の割合が、小売66.0%、商社59.6%、金融58.4%となっています。特に小売は、人材不足が深刻な業界で、約7割の企業が内定辞退に悩まされていることがわかります。

2 内定辞退にはどのような理由があるのか

企業にとって、内定辞退の現状は深刻なものです。就職が決まったにも関わらず、内定を辞退する求職者には、どのような理由があるのでしょうか。理由を理解することで、自社の採用活動の問題点が見えてくるでしょう。「エン 人事のミカタ」の調査から、3つの理由について、解説していきます。

2-1 労働条件や待遇に納得できなかった

企業で働きたいと思い、応募し、内定を獲得したものの労働条件や待遇に納得できなかったという理由が多いようです。内定後の連絡や届く書類によって、条件や待遇が詳しく伝えられることもあるようで、折り合いがつかず、内定辞退を決意することもあります。

他社で内定したからという理由も多く、求職者は労働条件や待遇をしっかり比較しています。説明会や面接とのズレがないように、求職者が入社を決意できる十分な情報開示が求められます。

2-2 企業に合わないと感じたから

企業に合わない、社風に合わないと感じたという理由も多くありました。内定者は、内定が決まった後に、本当にこの企業で良かったのか悩む「内定ブルー」に陥ることが多いと言われています。

悩みが解決されないと、内定辞退に踏み切ってしまうため、内定者の不安に寄り添ったフォローが欠かせません。他にも内定者の評価などを伝えることも内定の納得感につながり、入社を決意するきっかけになるでしょう。

2-3 担当者の対応など印象が悪かった

面接担当者などの対応や態度が悪かったという理由も10%程度であります。求職者は、賃金など報酬だけでなく、人間関係なども応募にあたって見るようになっています。

企業の人間と会う機会である面接では、面接官の対応次第で企業のイメージが変わってしまいます。求職者を迎えいれる体勢をしっかり整え、選考活動に取り組むように改めて意識しましょう。

3 求職者は企業の何を見て求人応募をするのか

求職者が企業の何を見ているか知ることも内定辞退を防ぐために欠かせません。求職者目線で、採用活動をすることで、企業と内定者のミスマッチを防ぐことができるようになるでしょう。ダイレクトリクルーティングサービスを提供しているOfferBoxやマイナビの調査から、主な求職者の目線を見ていきましょう。

3-1 自分のやりたい仕事ができるか

マイナビの2019年就業意識調査は、これから就職活動を始める大学3年生、大学院1年生を対象に行われました。15,894人の回答があり、企業選択のポイントについての項目もあります。

回答全体で「自分のやりたい仕事ができる会社」が38.1%で1番割合が多くなっていました。給料の良い会社、勤務制度・住宅など福利厚生の良い会社をおさえての1番です。自分の力を生かして働きたいという思いが強いことがわかります。

やりたい仕事ができそうと応募して、内定後待遇などが異なると、内定辞退につながります。業務内容などをできるだけに明らかにすることで、入社後をイメージしやすくなるでしょう。

3-2 ワークライフバランスを実現できるか

OfferBoxの調査も見ると、やりたい仕事ができるなど自己実現の次には、労働環境や休日・休暇が多いか、長時間労働・残業の有無などから、求職者は企業を見ているようです。

仕事と生活を両立したワークライフバランスの考え方が広まっているためと捉えることができます。仕事だけでなく、生活も充実させたいと求職者は考えています。労働条件は、内定後知ることの多い部分でもあります。

ワークライフバランスを実現できるかを判断してもらうためには、条件の開示が必要です。求人情報とのズレがないように、しっかりと伝えましょう。

3-3 社内の雰囲気や人間関係が良好か

社風や人間関係も求職者は重視しています。パワハラなどが社会問題になったこともあり、人間関係に苦労せず、働きやすい職場環境かどうかが企業選びの目線にも加わっています。

社内イベントなどの様子を発信したり、丁寧な対応をアピールしたりすることで、働きやすい職場であることをアピールできるでしょう。内定後や入社後、実際と違ったとならないように、社内環境の改善も採用活動には欠かせません。

4 【対策1】内定ブルーを防ぐ内定者フォロー

求職者にとって、内定は嬉しい出来事ですが、内定後に不安を感じる内定ブルーという期間があります。就職に対して、企業と合っているか、上手くいくかどうかという不安や条件面の不信感などを抱きます。内定ブルーは、内定辞退につながりやすいため、不安・不信感を取り除く内定者フォローが不可欠です。

4-1 説明会・面接から内定者フォローが始まっている

内定者フォローは、内定後からではなく、説明会や面接から始まっています。内定後に内定ブルーになり、不安や不信感があるということは、企業の魅力が十分に伝わっていないと捉えることもできます。

企業説明会で魅力を存分にアピールしたり、面接での対応を改善したりすることで、企業に入社したいという思いが確立されるでしょう。他にもインターンやOB訪問など企業に触れる機会で、しっかり魅力を伝えることが内定者フォローのスタートとなります。

4-2 印象に残る内定通知

求職者は、自社1社のみではなく、複数社で求職活動をしていることがほとんどです。内定を伝える通知を複数受け取っている可能性もあります。電話やメールなどが一般的な通知方法ですが、それでは入社の決め手とならないでしょう。

内定辞退が多いという企業は、内定通知を印象に残る方法に変えてみましょう。企業に出向いてもらいサプライズで内定通知を渡したり、社長自ら電話で内定を伝えたりするなど、他社にはない内定通知で内定者の気持ちをつかみましょう。

4-3 SNSを活用した内定者フォロー

内定者フォローでは、定期的なコミュニケーションが求められます。電話やメールをする時間はあまりないかもしれません。そこでおすすめしたいのが、内定者SNSというツールです。

内定者が参加できるSNSで、多くの企業からサービスがリリースされています。内定者と気軽にコミュニケーションをとることができ、細かな内定者フォローを実現します。内定者SNSでは、オンラインでマナー講習など教育をすることもでき、内定者フォローの幅が広がっています。

サービスによっては、ログインやコンタクトの頻度などから内定辞退の兆候がある内定者を明らかにすることもできます。いち早くフォローができ、効果的に内定辞退を防ぐことが可能です。

5 【対策2】内定者と直接会う機会の設定

入社するまでは、電話やメールでの連絡、SNSなどでのフォローがメインになります。顔が見えないため、フォローの効果が少ないこともあるでしょう。より効果的な内定者フォローをするためには、実際に会う機会の設定がおすすめです。

5-1 内定者と社員が出会う懇談会

内定者の不安には、上司と上手くやっていけるのか、同期と仲良くやっていけるのかといった2つの不安が挙げられます。内定者懇談会では、内定者同士をつなぐ役割があります。入社前に関係を作っておくことで、人間関係の不安を解消することができるでしょう。

懇談会に若手社員などが参加することで、社員とのつながりも作ることができます。企業の雰囲気を知るきっかけにもなり、入社後をイメージすることも期待できるでしょう。

5-2 内定者研修

内定者研修は、入社するにあたって必要なビジネスマナーを学んだり、内定者同士の一体感を生み出したりできる機会です。社会人になる心構えを作る機会でもあり、内定後の意思決定にもつながります。

あくまで人間関係づくり、入社前の土台づくりであるため、厳しい研修はNGです。厳しい内定者研修は、内定辞退を促す可能性もあるため、コミュニケーションを重視した楽しくも意義がある内定者研修を開催しましょう。

5-3 社内イベントへの招待

社内イベントへの招待は、社風や社内の雰囲気を伝えることができる効果的な内定者フォローです。忘年会や新年会、パーティーなどのイベントへの招待によって、社員と内定者、内定者同士の交流を促すことができます。企業での交流よりも緊張の少ない交流ができ、企業と内定者の距離が縮まりやすいです。

ただ飲み会などの社内イベントは、内定者すべてが歓迎しているとは言えません。内定者の意見を取り入れ、不公平感や強制がないように運用することが大切です。

6 内定辞退防止に取り組む企業事例

企業の悩みである内定辞退には、多くの企業が対策をしています。なかなか内定辞退が減らないという企業の方は、既に取り組んでいる企業の対策を参考に、内定辞退の対策を考えてみましょう。

6-1 【内定者SNSの活用】マルホ株式会社

皮膚科学を中心に扱う製薬会社・マルホ株式会社では、内定者SNSを活用した細やかな内定者フォローを実現しています。内定者への情報発信に活用し、資格の取得サポートなどの情報を発信し、内定者の疑問や不安を解消できる体制を作っています。

内定者SNSを使っても内定者側から質問しにくいという傾向もあります。マルホ株式会社では、企業側が情報を積極的に発信したことから、内定者からの質問も増えたそうです。疑問や悩みをそのままにせず解決でき、内定辞退を防止しました。

内定者への選考結果のフィードバックにも取り組んでいます。内定につながった自分の強みや改善点がわかり、入社に対する気持ちを確かなものにする効果があったそうです。内定者SNSには、様々なツールがあるため、自社に合ったツールを導入して、内定者フォローに取り組んでみましょう。

6-2 【ワークスタイルトランプを導入】クックパッド

クックパッドでは、株式会社ハートクエイクが提供するツール・ワークスタイルトランプを内定者フォローに導入しています。ワークスタイルトランプには、働き方に関するワードが書かれています。理想とする働き方の書かれたトランプを10枚選び、働き方について発表するというゲーム感覚の自己分析を可能にします。

クックパッドは、内定者研修にワークスタイルトランプを活用しています。楽しくコミュニケーションをするだけでなく、価値観を共有し、より深く内定者同士を知るきっかけになったそうです。

内定者研修をするだけでなく、ツールの活用や企画でコミュニケーションの質を高めることも重要です。内定者研修の内容に注目して、内定者フォローの改善を図ることも、内定辞退対策に必要でしょう。

6-3 【直接的な内定者フォロー】サイボウズ

クラウドを軸にサービスを展開するサイボウズでは、直接的な内定者フォローに力を入れています。主な内定者フォローとしては、内定者ワークショップ、内定者懇親会、会社参観日です。

内定者ワークショップでは、サイボウズ製品の企画などを通して、内定者同士のつながりを深める機会です。自社への理解と内定者同士の理解を促します。内定者懇親会は、社員と内定者との交流を図る食事会で、企業の雰囲気を伝えるために活用されています。

会社参観日は、特徴的な内定者フォローで、保護者も参加可能な会社説明会です。保護書に反対されたからという理由で内定辞退をする内定者も一定数いるため、保護者の理解を得る取り組みとなっています。

直接働きかける内定者フォローは、有効な内定辞退対策です。将来の人材を確保するために、社内イベントや内定者イベントを開催することを検討してみましょう。

まとめ

内定辞退率が3割以上にのぼる企業が約6割となり、内定辞退が深刻になっています。企業の将来を支える人材を確保するためには、内定者フォローによる内定辞退対策が欠かせません。

印象的な内定通知や内定者SNSの導入、懇親会の開催などが主な対策に挙げられます。内定辞退にどのような理由があるのか、求職者は企業の何を見るのかを把握した上で、自社の改善点を見つけることが大切です。効果的な内定者フォローで、内定者をしっかり確保しましょう。

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