人事制度対策で社員の定着率を上げよう!離職率の現状や対策例を解説

 

人材不足の要因の一つには、人材獲得の難しさが挙げられます。有効求人倍率の高さから求職者が企業を選ぶ傾向があり、優秀な人材を獲得するためには、競争に勝つ必要があります。

人材不足には、人材流出も大きく影響を与えています。人材を獲得できても、定着せずに離職してしまうことが近年顕著になってきています。人材の定着率を上げ、人材を確保すること、将来を担う人材に育てていくことが企業に求められています。

今回は、人事制度に注目して、定着率を上げるために必要な人事制度対策を紹介していきます。自社の問題点をイメージしながら、必要な対策を明らかにしていきましょう。

1 日本の離職率の現状を把握しよう

企業に人材が定着しないという現状は、離職率の高さから読み取ることができます。離職率は、期間を定めず雇われている者または1ヶ月以上の期間を超える期間を定めて雇われている者と定義される常用労働者の数から計算されています。

常用労働者のうち、離職者がどれだけいるのかで離職率がわかります。離職率が高いほど、退職する人材が多く、状況は深刻と言えます。日本の離職率の現状を見ていきましょう。

1-1 「平成29年度雇用動向調査結果の概況」では離職率14.9%と発表

厚生労働省では、毎年「雇用動向調査結果の概況」という報告をしています。入職や離職の推移をまとめたデータで、離職率についても詳しく解説されています。

平成29年度の報告では、離職率は14.9%に推移しています。平成27年度、平成28年度からほぼ横ばいです。離職率はあまり改善されておらず、近年の働き方の変化からさらに高くなる可能性も考えられます。

クラウドソーシングサイト・ランサーズによると、フリーランスの経済規模は年々拡大しているそうです。副業の経済規模も増加していることから、パラレルワーカーからの専業化などにともなう離職も今後増えると予想されます。

1-2 新規学卒者(大卒)の3年離職率はさらに高い31.9%

厚生労働省の調査では、学歴ごとにも離職率が明らかになっています。大卒に絞って離職率を見ると、3年離職率は、平成25年時点で3割を超えており、平成25年度の全体の離職率15.6%よりも高い数値です。

平成26年度以降に入社した人材の3年離職率が明らかになると、より高くなっている可能性もあります。新規学卒者の3人に1人は、3年以内に離職してしまうため、人材を確保できず、人材不足の悪循環に陥っています。

企業に求める条件の変化や新たな働き方の登場によって、理想とする企業へ転職していく傾向が強まっています。獲得した人材をいかに定着させるかが鍵と言えます。

1-3 離職に悩む業界・業種

業界・業種ごとに離職率に上下があります。平成29年度のデータで、特に離職率が高いのは、宿泊業・飲食サービス業30.0%、生活関連サービス業・娯楽業22.1%です。

サービス業は、不定期の休暇や長時間労働、残業など労働環境の問題から、離職が多くなっています。宿泊業・飲食サービス業については、入職率33.5%となっており、離職率と合わせて、入職率も一番高い業界です。入職があるにも関わらず、同程度離職があるため、人材が定着していないことがわかります。

2 どうして離職する?定着率が低い企業の特徴

企業への定着率が上がらないと悩んでいる企業には、原因が隠れているかもしれません。人材にとって、働きやすい環境や働きに見合った報酬があれば、長く定着することが考えられます。なぜ離職してしまうのかを明らかにすることで、対策も見えてくるでしょう。定着率が低い企業の特徴を見ていきましょう。

2-1 長時間労働など労働環境が悪い

現代では、仕事と生活を両立するワークライフバランスの考え方が定着しつつあります。仕事にだけ打ち込むことを求める労働環境であると、社員は生活も充実することができる企業へと離れていくでしょう。

長時間労働やサービス残業、休日出勤などは社会問題としても取り上げられています。仕事ばかりという精神面だけでなく、体調管理の面でも問題があります。離職率が高く、これまでの業務体制が定着してしまっている企業は、労働環境の見直しが必要です。

2-2 評価や給与など待遇に不満が多い

自分の仕事に対して、評価や昇給、昇格など適切な待遇がされないと、不満が募り、離職を促します。従来の等級をつけた評価をした場合、成果やスキルに応じた評価をすることができない可能性もあります。

また評価が昇給やキャリアアップに結び付かないことも、モチベーションダウン・離職につながります。自分のやりたい仕事をして評価されたい、スキルを発揮したい、キャリアアップをしたいという思いが多くの人材にあるため、仕事と評価のともなう評価制度や報酬制度などの整備が必要です。

2-3 人間関係が築けていない

企業選びにおいても、求職者は会社の雰囲気や人間関係を重要視するようになっています。企業に在籍する社員にとっても同じです。同僚や上司、管理職の関係性が築けていないと、意見が反映されないことや自分に価値が見いだせないことなどが起き、離職へとつながっていくでしょう。

近年では、給与などのために、人間関係を我慢して仕事に打ち込むのではなく、人間関係の良い企業を見つける、自分に合った働き方を探すという方向に変わってきています。離職理由に人間関係の理由が多い場合は、コミュニケーションの活性化が欠かせません。

3 定着率を上げる人事制度を取り入れるためには

社員の定着率アップのためには、人事制度の整備が必要です。ただあらゆる人事制度を改善すれば良いというものではありません。自社における離職理由に対応した人事制度対策が必要です。まず人事制度とは何かをおさらいし、人事制度対策の準備の観点を解説していきます。

3-1 人事制度の種類

人事制度とは、企業で働く「人」に関わる制度のことを指します。主な人事制度には、評価制度、等級制度、報酬制度、昇格制度が挙げられます。社員に関わる制度全般を含むため、福利厚生や人材教育、人材開発なども人事制度と言えます。

さらに広く捉えると、人同士が関わり合うコミュニケーションが活発に行われる体制づくりも含まれるでしょう。社員は、どのような理由から離職をするのかを明らかにし、人事制度を改善していくことが求められます。

3-2 自社の離職原因を把握する

社員が企業を離れる原因は、社員それぞれです。ただ社員が定着しないと悩んでいる企業の離職理由には、共通点があるかもしれません。離職理由に合わない人事制度対策をしても、定着率を上げるのは難しいです。

人事制度対策をする前に、まず離職理由を把握・分析しましょう。労働環境に問題があるならば、残業のルールを明確にしたり、管理職や上司が定時退社などの姿勢を見せたりするなどの対策が必要です。評価や給与、福利厚生なども理由に合わせて対策を検討しましょう。

3-3 仕事と人材がマッチしているか

現在任せている仕事が社員に合っているかも重要です。スキルを発揮したい、やりたい仕事をしたいと思う人材が増えているため、ミスマッチは離職につながる可能性があります。

人材一人一人が抱く不安や不信感だけでなく、企業全体の人事の問題点が見えてきます。適材適所の人材配置ができていない、自社に合う人材を採用できていないなどが見え、人材に寄り添った体制づくりのきっかけになるでしょう。

4 【定着率が上がる人事制度対策1】福利厚生・労働環境の整備しよう

定着率が上がる人事制度対策として、福利厚生から順に紹介していきます。福利厚生とは、給与以外の報酬のことを指します。安心して働くことができる環境づくりや意欲高く働くきっかけにもなるため、定着率を期待できます。

4-1 福利厚生サービスを充実させる

福利厚生サービスは、法定福利厚生と法定外福利厚生に分けられます。法定外福利厚生は、企業が独自にサービスを提供したり、外部の福利厚生サービスを導入したりして、従業員が利用できるようにします。

福利厚生サービスが充実していると、ライフイベントにおける補助金や通勤費用の補助などによって、従業員の負担を軽減することができます。もしもの時の保険にもなり、安心感を与えます。

お店の割引や宿泊施設の割引などの外部福利厚生サービスを充実させれば、休日をお得かつ有効に活用でき、働きやすい職場として定着率が上がるでしょう。

4-2 休暇制度を充実させる

ワークライフバランスの観点から、休暇制度の重要度は高まっています。制度を利用して、しっかり休むことで、従業員の満足度が上がり、定着率アップも期待できます。育児休暇といった一般的な休暇制度以外にも、定着率アップに取り組む企業には、ユニークな休暇制度が多くあります。

1年に1回5日間休めるリフレッシュ休暇や記念日に休めるアニバーサリー休暇、二日酔い休暇、失恋休暇、エンドレスサマー休暇など様々です。人生の大切なイベントで休めたり、自己啓発ができたりすることは、長く企業にいたいと思うきっかけになります。

ただ休暇制度があっても、利用できる雰囲気づくりができていなければ、効果はありません。休暇を取りやすい環境を作り、積極的に運用することが、定着率アップ、企業の発展につながります。

4-3 ライフスタイルに合わせた労働環境を整備する

社員それぞれに置かれている状況が異なります。育児をしながら働いている、副業をしながら働いているなど、ライフスタイルは様々です。仕事とライフスタイルを両立できなければ、離職につながる可能性があります。

様々なライフスタイルを尊重する労働環境は、従業員を定着させるきっかけになります。自宅でのテレワークや副業容認、柔軟な出勤時間など、様々なライフスタイルを持った社員への対応に取り組んでいる企業が多いです。社員の働き方を理解し、労働環境の整備に取り組んでみましょう。

5 【定着率が上がる人事制度対策2】評価制度を見直そう

評価制度は、仕事ぶりを適切に評価し、モチベーションアップを促したり、キャリアアップを実現したりするための制度です。仕事に対して、公正な評価がされなければ、社員は必要とされる企業への転職を考えるでしょう。離職を防ぎ、成長を促すためにも、評価制度が重要です。

5-1 360度評価などの公正な評価でモチベーションアップ

評価と仕事ぶりが食い違ってしまうと、モチベーションが下がったり、不満が生まれたりして、離職につながりやすいです。管理職の経験などに頼った主観的な評価では、納得の評価は実現できないことが考えられます。

上司と部下の1on1ミーティングや上司だけでなく、周囲の社員も評価に巻き込んだ360度評価などを導入した明らかな評価制度が望ましいと言えます。

また評価と合わせて、フィードバックも重要です。評価された部分、改善したい部分がわかり、モチベーションを上げることができます。評価を上げたい、成長したいという気持ちが生まれ、企業に定着し、貴重な人材になっていくことを期待できます。

5-2 評価をキャリアアップにつなげる

キャリアアップやスキルアップを目指す人材が多いため、評価をキャリアアップにつなげる評価制度が求められます。一つの方法としては、キャリアの道筋を明確にすることが挙げられます。

評価を受けても、いつ昇格できるのか、スキルが活かせるのかがわからない状態は、社員に将来への不安を抱かせます。何年でリーダーになる、何ができることが条件など明確な基準が必要です。

キャリアアップと目標管理制度を組み合わせることで、評価とキャリアアップがかみ合い、企業で努力を続けるビジョンを持つことができます。

5-3 評価に応じた報酬を与える

評価には、上司からの評価などだけでなく、報酬面にも現れます。どれだけ評価が高くても、給与が見合わないと感じれば、離職の決め手となるかもしれません。評価と報酬のズレをなくすことが大切です。

昇給の基準などを明らかにした上で、適切に運用する必要があります。コミュニケーションを密にとって行う評価・昇給は、納得度が高いです。金銭的な不満が目立つ企業は、報酬制度の見直しに取り組んでみましょう。

6 【定着率が上がる人事制度対策3】コミュニケーション重視の体制づくり

広義の人事制度対策として、コミュニケーション重視の体制づくりが求められています。職場の雰囲気や人間関係が良好な企業が望まれているため、働きやすい職場づくりが定着率アップを実現します。コミュニケーションを活性化する取り組みを見ていきましょう。

6-1 上司と部下のコミュニケーションの場を作る

管理職や上司とのコミュニケーションが不足していると感じている社員が多いようです。現場の意見が伝わらなかったり、スムーズに業務が進まなかったりするなど、気持ちよく働くことが難しくなってしまいます。

改善のためには、コミュニケーションを様々な場面に取り入れることが良い方法です。評価やフィードバックを対面で行い、直接的なコミュニケーションで行いましょう。定期的な面談やミーティングも効果的です。離職に至る前に、悩みや不安を察知できる可能性もあります。悩みを持つ社員のフォローを行い、定着を図ることができます。

6-2 社内イベントを開催する

日常的なコミュニケーションは、業務内で行うため、なかなか活性化しないこともあるでしょう。社内イベントは、社員の交流を図ることができ、コミュニケーションを活性化させることができます。

レクリエーションや旅行、飲み会などのイベントを、制度として補助することも、積極的な開催を望めます。上司と部下、同僚同士などつながりを深め、長く働き続けたい居心地の良い企業となるでしょう。

6-3 社内SNSを導入する

社内SNSとは、社内で利用するコミュニケーションツールのことです。スマートフォンやPCを利用して、簡単にコミュニケーションがとれるようになるため、社内のつながりを作りやすくなります。コミュニケーションが活発になり、仕事の意見交換もされ、働きやすい職場に近づくことができます。

社内イベントの開催や悩みを持った社員へのフォローに活用できるため、コミュニケーションに問題を抱える企業の離職対策に適しています。導入にあたっては、チーム単位、部署単位から始め、全体に浸透させていくのが得策です。

7 まとめ

日本における離職率は、特に3年離職率において、3割以上と高い数値で推移しています。業界ごとに見ても、顕著であるため、人事制度対策によって、定着率を上げることが求められています。

人事制度対策をするにあたって、まず自社の定着率が低い原因を明らかにしましょう。原因に合わせて、福利厚生や評価など人事制度の改善に取り組むことが大切です。社員に関わる人事制度を見直して、定着率アップを目指しましょう。

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