論理的思考力と発想力を強く問うGoogle。 あまりにも独創的な採用方法で求めていた人材とは?

「データベースをあなたの8歳の甥に3つの文章で説明してみてください」これはかつてGoogleが採用面接で出題されていた質問の1つです。さて、あなたなら何と回答するでしょうか。Googleの採用方法は極めて独創的だといわれています。今回はこうした超難問を出題していたGoogleがどんな人材を求めているのかを考えていきたいと思います。

 

Googleは神の代理人になるのか?

Googleは現在人によって神のような存在になりつつあります。Googleはありとあらゆる情報を我々に提供してくれる存在です。Googleは毎日世界中から35億もの質問のデータを収集し、それを分析して提供することで我々の質問に答えてくれる神のような存在になりました。そして我々が日々質問をすることでその精度と価値、Googleに対する信頼感は高まっているのです。このような規模で世界に影響を持つ存在は、人類にとって初めてのものです。かつて我々は自分の悩みを告白する相手は「神」でした。神は我々の秘密を守り、目指すべき方法性を提供してくれたのです。しかしGoogleは、世界中のあらゆる宗教の神を超える存在になっているのです。

もちろん、Google以前にも世界的な検索エンジンは存在しました。Ask.comやOverture、Microsoftなどがその地位に上りつつあった時期はあったのです。Googleがこうした検索エンジンから現在の地位にたどり着いた理由は一言でいうとそれらの企業より「信頼」されたことです。Googleが信頼された理由はオーガニック検索、つまり広告の影響を受けない結果を我々に示したことにあったでしょう。Googleは検索結果を示す際に、どれが広告であるのかを明確に示したのです。その結果、我々はGoogleを信頼するようになりました。誰に対しても公平であり、最適な情報を提供してくれるGoogleはこうしてAsk.comやOvertureとの差別化に成功しました。そのサイトのデザインはシンプルで堂々としていました。もちろんGoogleのページに広告を掲載すれば多くの広告収入がGoogleに入ることは明確です。しかし、Googleはそれを拒否しました。こうしてGoogleは現在の世界インフラと呼ばれるGAFAの中でも最も巨大な影響力を持つことになったのです。

そもそもGoogleとはどんな企業なのか?

採用方法を考える前に、Googleがどんな企業の特徴があるのか情報をまとめましょう。Googleは、2015年に組織変更を行いAlphabetという会社の子会社になっています。Googleといえば、検索エンジンの他にもYou tubeやAndroidなどの運営が知られていますが、他にも投資事業や自動走行テクノロジーや物流、医療や分子生物学なども行っています。あまり知られていないかもしれませんが、「Google Earth」や「Google Drive」、「Google Analytics」「You tube」「Android」などはもともとGoogleで開発されたものではなく、買収したソフトウェアをGoogleに関連付けてサービス提供されたものです。「世界の情報を整理し、どこからでもアクセスできるようにして有用性を高める」というGoogleは今も留まることがありません。

Googleの創設者は有名なラリー・ペイジとサーゲイ・ブリンの2人で、スタンフォード大学で出会い1996年につくった「BackRub」という検索エンジンがGoogleのスタートとなりました。わずか20数年前の出来事です。現在のGoogleの本社は、アメリカのカリフォルニア州にあり通称「Googleplex」と呼ばれています。「Googleplex」では社員に対する福利厚生が非常に手厚いことで知られています。その例をみてみましょう。

<Google本社Googleplexで受けられるサービス>

・食堂は無料

・フィットネスジムとサウナ完備

・広い社内を移動するための電動キックボードやセグウェイ完備

・ローラーホッケーなどのイベント開催

・オフィスにペット持ち込み可

「スーツがなくても真剣に仕事はできる」とはGoogleの「10の真実」として有名な言葉ですが、これらの言葉やGoogleplexで受けられるサービスをみてもその働き方の自由さが良くわかります。

もし、日本でGoogleに採用されたいとしたらGoogleの日本法人会社への入社を目指すことになります。2019年現在のオフィスは六本木にありますが、渋谷への移転が予定されています。日本での平均年収はおよそ1,200万円ほどであり、独自の文化があることが知られています。例えば報酬についは「不公平である」という原則があります。優秀な社員には非常に多くの報酬が支払われています。最も極端な例では、Googleでは同じ業務を担当する社員に対し数十倍の報酬差が出たケースもあるのです。また、社員同士でお互いに褒め合う「gサンクス」制度があったり、1人1回175ドルまで承認や手続き無しに社員が社員にボーナスを支給できる制度など非常にユニークな評価を取り入れているのです。Googleは常に最高レベルの人材を求めています。その人材のために満足できる環境を最大限準備しようとするのが会社としての姿勢なのでしょう。では、Googleはどんな人材を欲しているのでしょうか?

Googleでかつて採用されていた試験問題について考えてみましょう

かつてGoogleの採用試験は非常に特異でした。面接の際に「超難問」が出題されるのです。現在では、あまりに奇抜すぎることもあり廃止されたようですが、こうした質問をまとめることでGoogleがどんな人材を欲しているのか、もしかしたら垣間見ることができるかもしれません。過去に出題された有名な質問を考えてみたいと思います。

<シアトルの全ての窓を掃除するとしたら、いくら請求しますか?>

これは難解な問題です。シアトルには一体いくつの窓が存在するのでしょう?シアトルの人口が約60万人として、窓の数は人口1人に対して5枚あると仮定してみましょう。そうなるとシアトルの窓の数は60万×5=300万枚。窓1枚あたりの掃除代はいったいいくらになるのか?もちろん高層ビルや一般家庭の窓では単価が異なりますが、仮に単価5,000円で計算してみると15兆円?全くわけがわからなくなってきました。もちろん答えは様々です。「時給3,000円で終わるまで足し算します」という絶妙の回答を導き出せる人もいたでしょうか?ちなみに模範解答としては、「シアトルは雨が多いので0円でOK」ということらしいです。

<A地点からB地点に行かなくてはならないが、行けるかどうか不明。どうしますか?>

「行くという気持ちを大事にします!」と答えた人は精神的に強い人なのかもしれませんが、ここでは具体的な回答をしてみたいと思います。仮に今、A地点にいるとしてB地点の情報を集めなくてはならない。B地点を知っている人を探して見つかればOK、見つからなければA地点とB地点の中間であるC地点の情報を聞き出して、その方法を繰り返し何とかB地点を目指す…というのが模範解答ですが、様々な意味において「Google Mapで調べてみる」という回答も正解のような気がします。

<サンフランシスコ市の避難計画を考えてください>

Googleでは、こうした非常にスケールの大きい問題がしばしば出題されました。Googleに入社できたとしても社員は複雑で規模の大きい案件を素早く処理する能力が問われるのです。この問題では回答者がどのように解決までたどり着こうとするのかという姿勢を示すのが正解のようです。つまり、質問に対して質問返して正しい情報を引き出すことから始めるといいかもしれません。「あの、どのような災害に対しての避難計画でしょうか?」「それにかけられる予算はどれくらいありますか?」逆に質問者を追い詰めていくという風景を見てみたくなります。

<ピアノ調律師はこの世界に何人いる?>

Googleの有名な面接試験の質問の1つです。これは「フェルミ推定」と呼ばれる種類の問いで、Googleがこの種類の質問をしたことで広く知れ渡るようになりました。フェルミ推定は、最初の手がかりをもとに理論的に推論しておおよその数字を回答しようとする方法です。この質問の場合、世界にピアノが何台あるのかを仮定することが必要です。世界の人口が75億人だとして、ピアノが100人につき1台あるとすると75百万台となります。そのピアノには月に一回の調律が必要であるとします。調律にかかる時間が移動時間を含めて平均2時間とすると1日8時間勤務で1日4台の調律が可能であるため、週で5日働けば週で調律できるピアノは20台とすると月に調律できるピアノは80台…。となると必要なピアノ調教師の数は…?という仮定を繰り返して正解に近づこうとするのです。ここで問われているのは物事を考え抜く力です。

<データベースをあなたの8歳の甥に3つの文章で説明してみてください>

最初にあげていた問題です。もちろんGoogleにはデータベースを扱う仕事が多数あるでしょう。できる限りその役割を正しく、そして短く簡潔に伝える必要があります。最初に模範解答を示してみましょう。

模範解答

1、お前にもガールフレンドがいるだろう?

2、彼女たちの好きな色や好きな物をお前は知っているはずだ。

3、それがデータベースというやつだ。

非常にわかりやすく「8歳の甥」という問題文を巧みに利用して回答しています。これ以上の回答はないかもしれません。しかし、これを超える可能性がある極めて人間力の高い回答を見つけました。

ある人の回答

  • お前にはまだ早いかもな。
  • 説明してもいいがお前には基本的な情報がないだろう。
  • いや、実は俺もよくわかっていないんだ。

短く、簡潔であることのみが条件に当てはまっていますが、この回答者はGoogleに入社はできないかもしれません。

前述しているように現在では、こうした質問を出題することは廃止されました。Googleの採用ページでもこのように注意書きがされています。

「超難問を面接に取り入れても優秀な候補者の判定にはつながらないことがわかったため、現在は出題しておりません。代わりにサンプルテストを実施し、構造化面接法に基づいた質問を行っています。」(Google採用ページより引用)

Googleではどんな人材が求められているのか?

Googleがこうした質問によって探し求めていた人材は「スマート・クリエイティブ」と呼ばれています。それは、専門知識、経験値、実行力があり、プロトタイプをつくるための人材です。また同時に情熱を持ち、ビジネス感覚に優れ、競争心があり、エンドユーザーの悩みを理解し、リスクを避けずに自発的に仕事を行う人でなければなりません。最初から全てを兼ね備えている人などいません。しかし、Googleはこうした厄介で少し意地悪な質問を投げかけることによって、そうしたスマート・クリエイティブになれる素質のある人を見抜こうとしていました。時代は常に変化しています。テクノロジー業界において最高の品質のサービスを生むためには、スマート・クリエイティブをGoogleに集結させ、そのパフォーマンスが最大限に発揮できる環境を提供することが必要です。現在では、前述したような風変りな質問は廃止されましたが、Googleの採用担当が重視している点はある程度判明しています。これらは、「How Google Works」という書籍でエリック・シュミット氏とジョナサン・ローゼンバーグ氏によって語られています。

・自分より優秀な人材を採用する

・プロダクトと企業文化に付加価値をもたらす人材を採用する

・仕事を成し遂げる人材を採用する

・熱意があり、自発的で、情緒的な人材を採用する

・周囲に刺激を与えつつ、協力できる人材を採用する

・多彩でユニークな興味や才能を持っている人物を採用する

・論理的で、率直に意思を発言する人材を採用する

・最高の人材を見つけた場合のみ採用する

更に、Googleが採用している人事戦略についても「How Google Works」においてそのポイントが5つピックアップされています。

<Aクラスの人材のみを採用する>

Googleは世界でも「働きたい企業」のランキングには必ず上位に名前があがります。その理由は「世界でも最高に優秀な人材と一緒に働きたい」からなのだそうです。そのためGoogleは採用のハードルを高くし、Aクラスの人材のみを徹底しているのです。仮にBクラスやCクラスの人材を採用してしまうと、その人材がAクラスの人材を見抜くことができない可能性があるからです。

<面接時の無駄話に情熱があるかどうか>

スマート・クリエイティブの条件には「情熱」があることがあげられます。しかし、履歴書に「情熱を持って業務に取り組みます」と書かれていたとしてもそれが真実であるかどうかわかりません。何かに情熱を持っている人の話は興味深く聞けるものです。そのため、あえてGoogleの面接官には無駄話を奨励しているようです。

<未完成な人材を求める>

Googleの面接時に重視される点はその人材が「何を知っているか」ではなく、「将来的に何を学んでいくのか」だとされています。Googleでは、求められる役割や知識というものがどんどん変化します。そのため、現在知っている知識は求められなくなる可能性が高いのです。物事をどのように考え、失敗したことから学ぶ力があるのかどうか。積極的に学び続けられる人材を探しているのです。

<30分で面接は終了する>

Googleの面接試験の結果はほとんどが「NO」です。そのため長い時間をかける必要がありません。その30分の間に面接官は4つの評価を行います。それは「リーダーシップ」「仕事に関しての知識」「認知能力」「Googleが職場としてふさわしいか」の4項目で、これらはどんな地位に就く面接であれ徹底されているのです。

<優良な人材にはふさわしい報酬を提供する>

野球選手はそれぞれ成績によって大きく年棒が異なります。一流のピッチャーやバッターには途方もない金額が球団から提示されます。Googleもビジネス界において一流のプレイヤーにはそれ相応の報酬を支払うのです。このことは前述したようにGoogleでは、同じ仕事をしていたとしても両者の年棒は大きく異なる可能性あるのです。特にGoogleでは、プロダクトにおいて他の企業よりも優位性があるものを提供できる人材には莫大な報酬が支払われる傾向にあります。

まとめ

Googleの採用のユニークさを伝えるエピソードは他にも山ほどあります。Googleでは社員全員が採用に関わることも有名です。そのなかでも誰か1人でも「NO」を出せば決して採用しないというルールがあるとも言われています。かつてこんな採用方法をとったこともありました。シリコンバレーに謎の看板が突如現れ、プログラミングをするとその看板の意味が判明するというトリックを行ったのです。その答えは「7427466391.com」であり、ネットにアクセスするとGoogleの求人情報サイトに辿り着きます。そこではこんなメッセージが書かれていました。

「Googleにいて学んだ一つは、自分が何かを探している時、向こうも自分を探している場合の方が見つかりやすいということ。我々が探しているのは、世界最高のエンジニアであり、あなたこそその人だ。」(かつてのGoogle採用ページより引用、現存せず)

ここに辿り着いた人は、すっかりとGoogleの魅力に取りつかれてしまうのでしょう。Googleは現在でも世界中からより優秀な社員を採用しようとしています。もしかしたら、今も我々の目に見えない部分でGoogleはトリックを仕掛けているのかもしれません。

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