応募者の本当の姿を見抜く採用制度について

はじめに

早期離職したり、突然の内定辞退をする就活生がいることが、採用面接サイドにとってはもはや社会問題となっています。そのようなミスマッチを生む原因は、採用面接において応募者の本当の姿を見抜くことができない、本音を引き出すことができないといったことにあります。応募者の本音を引き出し、本当の姿を見抜く採用制度について知っておきましょう。

1.なぜ応募者は本当の姿を見せないのか

せっかく面接では高い評価をつけていても、入社すると使い物にならない人材もいれば、かなり志望度が高いように見受けられても、結局選考自体や内定辞退をしてしまう人もいます。こういったミスマッチを減らすためには、応募者の本当の姿を見抜くことが必要です。

昨今では「内定を得るためのノウハウ」が独り歩きし、そのノウハウに沿って受け答えをすれば内定を得られる、といったように内定を得ることが一つのステータスになる傾向があります。確かに内定を得ないと入社できないのでそういった気持になることもわかります。ありとあらゆる状況に対策をして内定を得たい、そう準備するからこそ本音を言わないのです。

もう一つの理由が、SNSの普及などにより人事部と就活生の垣根がなくなろうとしています。企業側も若い社員をリクルーターとして配置するなど、距離感を詰めるのに苦心しています。それは、会社との距離が近くなった反面、「嫌われたくない」という気持ちが作用し、本音を語らせなくします。特にフレンドリーな関係であったと思うのに辞退されたのはこういったケースもあります。

2.応募者の本当の姿を見るには、何度か面接をすること

採用面接は通常何回も行われますが、不思議なことに同じ質問を複数の面接でしているケースはさほど多くはありません。志望動機などのポピュラーな質問であればいろいろな面接用に対策をしていますが、志望動機や学生時代頑張ったこと、自己PRといった3大質問以外の質問を、複数の面接でやってみるのがよいです。

同じ質問を一次面接や三次面接で聞いてみて、答えに一貫性がない場合はそれはその人の本心ではないかもしれません。本心を知るには、いくつかのプロセスで同じことをできれば角度を変えて聞いてみるのがよいでしょう。

その時のポイントとしては、あえて同じことを聞いてみるだけでなく同じ答えが出る質問をすることです。比較的ポピュラーな質問であれば、「学生時代に一番頑張ったことは何ですか」のように一つしか答えようがない、一番○○といったような質問をしないと、同じ答えで比較して揺るぎのない本音を探るといった本来の意図と反することになります。同じ答えを導き出し、その答えを同じように言う、すなわち本音であるという方程式を成り立たせるためには、あえて一つしかない答えを書くようにしましょう。

3.まず採用側が求める人物像を明確化する

実は、採用しても思うような成果が出なかったり、この学生こそは、と思って採用してもうまく活躍しなかったりすぐに退職されたりするのは珍しいことではありません。そういったミスマッチを起こす理由の一つとして、企業自身が「求める人物像」を明確化していないことにあります。

求める人物像を定めて面接すること自体は普通のことであり、ポピュラーな手法です。ですが、自社の社風や仕事の進め方に対して求める人物像を明確化にせず、どのような企業でも通用するような人材を求める人物像、としている人は少なくありません。また自社の求める人物像があまりにも抽象的であるがゆえにどういった基準で人を選んだらよいかわからず、学歴やアルバイトなど目で見える指標をわかりやすく採用してしまうのです。

そのため、自社で成果を上げている人をピックアップして、どういった要因や共通点があるのかを明確化しておく作業が必要になります。より具体的に採用基準を明確化し、優秀だけれども自社ではちょっと、といった人材もピックアップしておくと、よりミスマッチが防げます。求める人物像は明確化しているようで実はしていないのだ、ということを採用関係者が肝に銘じておくだけでも違います。

4.リクルーター制度などで広く求める人物像を明確化する

最近の採用活動は、リクルーターによる面談やインターンシップなど多様化しており、そして若手社員とも接する機会が多いです。これは、学生にとっても会社を判断できる良いことですが、それだけ面接官の前に見る人が多いということも示しています。

求める人物像を明確化し、それをきちんと共有していなければ、そのリクルーターなり若手社員のバイアスがかかった状態で就活生を見ることになります。求める人物像を明確化したのであれば、リクルーター面談のロールプレイングゲームをするなどして、どういった面をアピールし、どういった面を見ればよいのかを知っておきましょう。

求める人物像というのは、書面だけで明確化するのは大変難しいことをまずは採用側が同じく自覚しておくことが大切です。面接をする人やジャッジをする人、就活生と接する人に共有できればよいでしょう。

5.面接での質問は「なぜその質問をするのか」しっかりと考えておく

面接官が面接での質問をするときはなんとなく今までの慣例に沿って質問をしているということもおもちろんあるでしょう。しかし、それだけではその人の本当の姿を見ることはできません。特に初対面に近い面接という場であることや、応募者がある程度自分を良く見せたいと思って仕方がない場面であることから、本当の姿は見えないくらいに思ったほうが良いかもしれません。

質問をするときはある程度臨機応変に対応することも必要ですが、あらかじめベースとなる質問を決めておくのが必要でしょう。価値観やヒューマンスキル、課題解決能力やどのように困難に取り組むかというのは、ある程度質問でわかります。準備ができそうでできないものです。

また、企業文化に対する理解を得ることも必要です。一番簡単な方法は、答えにくい質問で本音を測ることです。たとえば面接の前にインターンシップや就業体験を経ていますが、それに対する回答を求めてそこから深く追及する質問をするとよいかもしれません。すなわち一般的には答えにくい質問を用意しておくのも必要です。

一番典型的に聞くことができる質問としては「実際の会社での体験を経たうえで当社に対する課題は何だと思うか」といったようなことです。それが、会社が理想とするところと近ければ、ある程度本質的にも近い人材を採用できるということでしょう。質問だけを考えるのではなく、質問を投げかける「意味」を考えることも必要です。

6.価値観やコアとなっていることをまず大事にするとよい

採用面接となると、どうしても自社に対して志望度が高いか、とか他の内定先はどんなところがあるのかなどといった目先のことが気になります。それはやはり企業側が採用計画に沿って採用面接を実施し、そしてそれに従って内定者の数を確保しなければならないからです。最近では内定辞退が増加していて、しかも理由を言わないサイレント辞退も見受けられるようです。

そういった他社の状況や内定辞退の可能性は二の次にして、まずはその人の「人となり」を聞くような質問をすることです。たとえば、「日頃大切にしている言葉」や「座右の銘」「困難に陥ったときにどのように乗り越えていくのか、具体例も添えて」といったような感じです。一次面接など比較的早い面接や、就職活動がまだ始まっていない段階でこういった質問をすることで、作られていない、就活生の本音を聞き出すことができます。

座右の銘や大切にしている言葉や価値観といった質問には正解はありません。こういった正解のない質問において、どのように回答を導き出すのかといったことは作られた回答ではなく本音を引き出すことが必要です。しかしながらこういった質問についても準備をして対処している人はいます。そこで本音を聞き出すためには、そう思った経験談や裏付けをあわせて引き出すことです。

特に、志望動機や他社の面接状況など重要なことを質問したあとで、面接が終わるような雰囲気を見せてからその質問をすることもポイントの一つです。大事な質問だからと言って最初のほうにすると、やはり就活生は身構えてしまいます。身構えてしまうと、本音を引き出すことがもはや困難になるからです。

7.どんな風に思っていても就活生の言葉を否定しない

採用面接において就活生が本音を言わないのは、嫌われたり評価を低くしたりすることを恐れるのも要因です。質問の内容と言うよりは、雰囲気が本音を言えなくしているといった側面もあります。面接では、就活生に少しでも多くしゃべらせて、間違いがあっても否定しないという姿勢が大事になります。

昨今ではすぐに圧迫面接などと言われることから、就職活動においても否定をしたり頭ごなしに怒鳴ったりする面接官は絶滅したと言っても過言ではありません。ですが、話を聞かなさそうな素振りを行ったり、興味がなさそうにする面接官はいないわけではありません。とにかく否定をせずに聞く、それから言った言葉の「三文目」くらいに本音が出るといってもよいでしょう。

そうすると、メモの取り方も大切になってきます。多くの面接では言ったことの一文目をメモします。しかしながら本音が出るのは三文目くらいです。メモを取る時には就活生の本音となる意見を書くのが大切になります。

そのため、出来事を端的にメモするのではなく、そういった思考に至った過程を探るようにすることが大切です。出来事よりも思考のベースや価値観を知ることで面接者の本音に迫ることができるようになるからです。何よりも重要なことは、本音を引き出すにはこちらも真摯な姿勢でいることです。そのために大切なのは、面接で「ちょっと違う」と思ったとしても否定しないことです。自分の価値観や大事にすることを否定されると、就活生はそれだけで心を閉ざしてしまい、面接の過程において本音を引き出すことは不可能に近くなるからです。

8.二択で質問をすることにより、ぎりぎりの本音を引き出す

本音を引き出す質問は、まだ慣れていない面接官にはとても難しいことです。もちろん心理検査などである程度どういう考え方をする学生か、というのを判断することはできますが、あくまで統計上の話であり、本当のジャッジをするためには会って話をすることが不可欠になります。

とはいえ、面接で質問をしたとしても面接者が本音で話してくれるかどうかはわかりません。本音を引き出すには、より選びづらい二択の質問を面接ですることです。このような方法をとることで、饒舌に話をする学生もおとなしい学生も公平にジャッジメントができるからです。

そして、二択の質問を迫って比較的すぐに答えが出ることがその人の本音に近いと言ってもいいでしょう。実際に面接をするときは答えと次の質問に少しタイムラグを設け、そう答えた理由などが知れれば、よりその人の本音に迫ることができます。

9.二択でしたい本音に迫ることができる質問

最近では面接対策に力を入れている就活生も多いことから、普通に面接していては中々本音で話してくれないことも少なくありません。そういったときには二択で質問して本音を引き出すのがおすすめです。

たとえば「感情のこもった意見と理路整然とした意見、どちらを支持するのか」という質問では、論理的な人間か感情的な人間かを判断できます。「落ち着いた環境が好きか、めまぐるしく変化することが好きか」という質問では、安定志向をつかむことができます。

困難に当たった時も「人に相談をするか、自分で乗り越えるか」といったことでコミュニケーション能力や粘り強さを知ることができます。そういった二択を採用面接制度に取り入れることで本音に迫ることができます。

10.応募者の本音を見抜く採用試験前面談

応募者の本音を見抜くには、採用プロセスを明確化することも必要です。本音を見抜くのであれば、ファーストコンタクトは面接ではないほうがよいです。面接と言うと身構えたり準備をしたりするからです。

応募者の本音を見抜くには、面接の前に面談などをしてみるというプロセスを設けることがまず大切です。カジュアル面談にすることで合否に関係がないため応募者も本音を言いやすいからです。ただし、一方で選考はスピーディーに行うことも大切です。応募者の本質を見抜こうとするがあまり、あまりにも長いプロセスをかけてしまうと、会社に対して不信感が募ることや、他社に先んじて人材を確保されることもあります。

通常の採用プロセスの前に面談や就業体験などを設けるのも良いのですが、そういったときは冗長に長くせず、多くても3回程度にとどめておくようにしましょう。

11 人の本質が現れる共同作業について

人の本質を見抜くことは大変難しいものです。そういったときには共同作業をすることで、ある程度物事への取り組み方やチーム内での立ち位置などがわかるからです。大人と会話するだけではなかなか本質を見せなかったとしても、同じ年齢層の人と何人か集まって作業をするのであれば、その人の本質を見抜くこともできるからです。

グループディスカッションでも組織内での動きや本質がある程度は分かりますが、最近ではグループディスカッションに対してはきっちりと対策を仕込んでくる場合もありますし、組織における役割で「こうであったほうが評価されるな」という部分を自分で演じる場合もあります。それであれば、なかなか応募者の本質を見抜くことが難しくなります。

余裕があれば、グループワークなど数人で一つのことに取り組む課題を採用プロセスの中に取り込みましょう。グループの中でどのような立ち回りをするかによって、その人の本質が分かります。

12社会に向けた関心もその人の本質が現れる

その人がどのような考え方をするのか、価値観を持っているかは会社への着眼点ではなく社会の出来事をどのように切り取り、消化しているかによってもわかります。そのため、特に時事問題のような視点から切り込んでいくと、どういった見方をするのかがわかります。

そのため、採用プロセスのなかに、「気になる社会問題とその考察を述べよ」や「気になる時事問題となぜその問題を選んだか」といったような質問を入れると、その人の本質的な価値観、考え方がわかります。

まとめ

採用試験のプロセスにおいて、その人の本質を見極めることは、大変重要なことです。本質を見ずに採用してもうまくいかずミスマッチが起こるからです。それと同時に、本質を見るためには自らが目的のある採用活動をすることが重要です。採用する人物像を明確化し、それをリクルーター含めて採用に関わる全ての人に具体的にイメージさせることです。そのように自社が目的ある行動をしていると、就活生にとっても本心をさらけ出したくなるからです。採用プロセスの中にグループワークや時事問題への考察を取り入れることも、価値観を知るのに役立ちます。

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