HRテックを取り入れる理由を導入事例とともに読み解く!

HRテック導入するメリットは非常に多くあります。今回はその導入例を見ながらHRテックの活用を考えてみましょう。また、HRテックの導入が日本企業でなかなか広まらない理由について問題提起したいと思います。最後までお付き合いください。

なぜHRテックの導入が急速に進んでいるのか?

人事にHRテックを導入する動きは、日本に急速に広まりつつあります。その背景にはどのようなことがあるでしょうか。大きく分類すると3つの動きがあると思います。①2016年政府の提唱「働き方改革」の実践化、②人材不足、③テクノロジーの進化、この3つが複合的になったことにより、その気運が高まっています。それぞれについて詳しくみていきましょう。

<働き方改革の実践化>

政府の調べによると日本の労働人口は1995年に8000万人を超えていましたが、それ以降は減少し続けています。これ以降、2027年には7000万人、2051年には5000万人にまで減少するという予測も発表されており、国全体の生産力が低下する恐れがあります。その対策として考えられたのが「働き方改革」であり、その柱が①働き手を増やす、②出生率を上げる、③労働生産性を上げる、ということです。HRテックの導入はこの③の「労働生産性の実現」という部分に大きく関わってきます。日本の産業は製造業からサービス業へと変化しました。サービス業は人が提供するものであり、人材の育成・評価・適格化が極めて重要な意味を持ちます。これらの生産性を上げるためには的確な人材の配置が必要不可欠です。そのためには、膨大なデータによる分析やそのデータを社内で「見える化」することが重要な役割を持つのです。これらの分野は全てHRテックが得意とする分野です。

<人材不足>

前述したように労働人口の現象はこれからの働き方に大きく影響する重要なものです。近年では「人手不足が原因で企業が倒産」するケースも起きています。完全失業率が下がり、有効求人倍率が上がる中で人材を十分に確保できない企業が増えているのです。これらを回避するための施策として考えられているのが、AIやHRテックといったテクノロジーの導入です。ローソンなどのコンビニエンスストアでは無人レジ店舗などの実験がスタートしています。物流業界でも無人搬送ロボットなどの導入が積極的に行われていますが、そういったテクノロジーを導入できる企業は大手企業に限定されていました。これは設備投資などが高額であることが原因ですが、テクノロジーが一般化することでより安価なサービスが提供されるようになります。AIやテクノロジーの進化が人手不足解消に大きな役割を果たすことになるでしょう。

<テクノロジーの進化>

原始時代には、毎日の食糧の確保で人間の労働力は限界でした。しばらく食糧を確保できないことも日常的にあったでしょう。しかし、現在の日本では時給800~900円あればお弁当など食糧の確保が可能です。これはテクノロジーの進化による結果です。人間の労働価値が上がったことで、食料などの物の価格が落ちたためです。つまり、テクノロジーの進化というものは労働価値を高めるものです。テクノロジーが進化するほど、人は少ない労働力によってより多くの食糧や生活に必要な物を手に入れることができるようになります。HRテックの導入は人事の労働価値を高めるものです。もしかしたら、その「テクノロジーの進化が人事の仕事を奪う」と考えている人もいるかもしれませんが、決してそうではありません。現在人事が行っているルーチンワークを自動化することができれば、ミスも少なく、効率的に業務を運用できます。空いた時間で「戦略人事」という人事部が本来やるべき仕事に取り掛かることができるようになります。「労務管理」はHRテックの導入により軽減化できるものですし、そうすることで人事の労働価値を高めることが可能です。

HRテック導入によって得られること

では次に、HRテックの導入により得られるメリットをわかりやすくお伝えしたいと思います。これも大きく3つ分類できます。それは①ルーチンワークの業務削減、②コミュニケーションの向上、③人材活用のための精度を向上させる、ということです。そのメリットについて詳しくみていきましょう。

<ルーチンワークの業務削減>

人事では労務管理を主なルーチンワークとして上げることができますが、HRテックの導入により大幅な業務削減をすることが可能となります。特に注目を集めているのがRPA(Robotics Process Automation)と呼ばれるルーチンワークを自動化するテクノロジーです。人事での活用は大手不動産会社の大和ハウス工業の導入例が知られており、勤怠データ収集業務、社会保険加入の状況集計や分析業務などをこのRPAの導入により半分近くの業務短縮に成功したという効果が実例としてあります。「休まず、文句も言わず、仕事が正確」なこのRPAの導入は人事に大きな影響を与えることになるでしょう。

<社内コミュニケーションの向上>

人材不足の課題の1つでもある「社員の定着化」という問題があります。これをコミュニケーションの向上により解決しようとする動きがあります。これはHRテックのコミュニケーションツールを活用し、社員同士の交流の機会をより創出しようとするものです。社員がお互いにどんな相手と仕事をしているのかを知ることは、良質なコミュニケーションを生み出すことに直結します。

<人材活用のための精度を向上>

HRテックの導入により、人事における意思決定の精度を向上させることができるようになります。もちろん、最終的に人事案などを決定するのは人ですが、その決定に関するデータを活用することで、より企業を活性化させることが可能になるのです。これまでの人事は、人事担当者の経験などに頼った主観的なものが大きい割合を占めていました。しかし、データを活用することで、客観的な意思決定が可能になるのです。

HRテック導入事例1「採用」

人事では要となっている業務が採用活動です。HRテックの導入により独自の採用活用を行う、より効率的な採用活動をするなどの企業が増えています。

セプテーニグループの例を見ていきたいと思います。インターネット広告事業を行うセプテーニでは、独自の人材育成を行っておりその理論を基に採用活動を行っています。その育成理論とは「個々の相性が高いほどチームが成長する」という考え方であり、2009年から蓄積している約6,000人もの人材データを用いて採用を行っています。HRテックを採用活動で導入しており、性格診断テスト・アンケート・経歴・選考プロセス評価・個性・環境・行動などの情報をデータ化し、将来セプテーニに入社したとして「どのように成長、活躍」するかという度合いを予測していきます。こういった独自の人材採用の基準によるために求職希望者が一般企業で定例的に行われている「志望動機」「自己PR」「就活対策」というものを必要としません。これまでの採用活動を大きく変える試みがセプテーニでは既に始まっているのです。

ソフトバンクでは、「なんでもいいからNo.1の実績がある人」「地方創生」「グローバル」「就活インターン」という採用テーマを決定し、エントリーシートの選考にAIを導入しています。採用テーマに重点を置いた選考では、人事が様々なアプローチを必要とするために、既存業務を効率化する必要があります。そこで人事が膨大な時間を費やしているエントリーシートのAI化に踏み込んだのです。人が採点をAIによるジャッジはより公平性があり、時間を削減できるという大きな成果を上げることができたのです。

HRテック導入事例2 「育成」

育成の分野でHRテックは非常に効果的な役割を果たすことができます。人材採用後には各部署での教育以外にも目的に応じての教育が必要です。現在では、同一の研修を全員にするというのは非効率的です。HRテックのe-ラーニングのシステムを導入し、階層別・職種別・テーマ別に研修内容を作成しておき、社員データを基に適切な研修を選別してくれるようにすることも可能です。

IT・ものづくりエンジニアに特化した人材会社パソナテックでは、schoo(スクー)というオンライン動画サービスを導入しています。schooは既に400社もの企業が導入している実績があり、タイムラインによる双方向性コミュニケーションが可能で、生徒の反応をみながら授業を行うことができるツールです。2015年からパソナテックでは登録者が自由に講座を受講できるようになりました。これにより、エンジニアが自分で学びたいと思ったことをすぐに学べる環境を整えることができるようになりました。与えられる教育ではなく、自らのスキルを積極的に学べる環境というのは社員の教育だけでなくモチベーションアップにもつながります。

キャノンでは、コーナーストーン・ラーニングという学習支援のためのシステムを導入しています。コーナーストーン・ラーニングは、社員がいつでもどこでもノウハウやスキルを勉強できるシステムで、モバイル学習にも対応しています。キャノンでは世界各国の社員の研修を統一し、一元管理をすることに成功しました。研修を統一するだけでなく、社員が足りないと感じた分野について自発的に学習することができるようになりました。

HRテック導入事例3「社内コミュニケーション」

日本の企業では、働き方も多様化しています。同じオフィスで同じ時間を共有するという働き方だけでなく、リモートワークなどの普及により社員が別の空間、別の時間で仕事を行うことも珍しくなくなりました。それに伴い、社内コミュニケーションの減退を招く恐れがあります。これを解決するための手段としてHRテックの導入をすることはもはや必然ともいえるかもしれません。チャットアプリなどはその最もわかりやすい例でしょう。また、前述したように社内コミュニケーションの充実、質の向上は離職率の低下に大きく影響するものです。互いに認め合い、励まし合う社内コミュニケーションを活性化させることは企業においても非常に意味のあることです。

RECOG(レコグ)というチームパフォーマンスアプリがあります。これは、社内SNSの1つですが使い方は非常にシンプルなもので、仕事でお世話になった相手に感謝メッセージと「称賛」を贈るというものです。その「称賛」は全社員に開示され、社員同士でエンゲージメントを高めるシステムです。同時にRECOGはそのコミュニケーションの結果をデータ分析できるようになっており、人事評価でも活用できるようにもなっています。

新入社員の内定辞退などの防止対策としてHRテックの社内SNSを使用した取り組みにより成果を出している例があります。パナソニック産機システムズはエアリーフレッシャーズというサービスを使い、内定者の新人育成と双方向コミュニケーションを行っています。内定が決まり、入社するまでの期間は比較的時間もあることからその時間を利用し、入社後のギャップが出ないように、会社の業務を伝えたりしているのです。このHRテックの導入により内定辞退や早期退職の防止策として効果を発揮しています。

HRテック導入の障壁は何か?

前述したHRテックの種類以外にも、多くのツールがあり人事では導入しない手段はもはやないと思われるのですが、実際のところ多くの企業でHRテックの導入が実現しているわけではありません。なぜ日本の人事ではHRテック導入が進まないのでしょうか。その理由は大きく分けて3つあります。①「アナログ人事」に慣れているから、②価格が高いから、③活用、導入できる人材の不足、これらを詳しくみていきたいと思います。

<アナログ人事が人事の仕事だと思っている日本企業>

日本の企業は製造業を中心に発展しました。そこで人事が担ってきた役割は「労務管理」や「勤怠管理」などの業務でした。そこではデータ管理を行い、客観的な基準を基に組織の判断精度を上げるという取り組みは皆無で、人事の経験則といわば「勘」というもので決定が行われていきました。社員のパーソナリティ管理は行う必要性もなかったのです。しかし、企業が製造からサービス業へと産業が変化する上で、社員のキャリアや、個性、プライベートの状況などを知ることは人事の業務として必須になったのです。しかし未だにそういった社員のパーソナリティ情報などの管理は、直属の上司だけが行っているケースが多くそれを人事の仕事として捉えていないことも多いのです。では、どのような業務を行っているかというと相変わらず労務管理と勤怠管理を行い、残業時間を電卓で計算していたりします。このような仕事はHRテックを導入すれば一挙に解決できることなのですが、「自分の仕事を奪われてしまう」「慣れない仕事が与えられてしまう」「退職までこのまま平穏に終わりたい」と考えている人事がその導入の障壁になってしまっている実情があるのです。

<HRテックの導入には費用がかかる?>

HRテックの導入には莫大な資本投資が必要と考えている人が多いようです。大手企業のカスタマイズされた複合的HRテックの導入であればもちろんそれなりの投資が必要になりますが、1つのツールを使用するのに多くの費用は必要としません。月額数百円で使用できるサービスも数多くあり、そのようなHRテックであれば中小企業でも導入のハードルは低いのです。また、現在では多くのHRテックがあり価格も安価で良質なサービスを受けられるものが数多くあります。人事の問題を全て解決する複合的なHRテックを検討するのではなく、部分的な問題を解決するサービスの導入から検討するのが良いでしょう。

<HRテックを活用、導入できる人材がいない?>

HRテックという言葉から非常に難しいものだと考える人も多く、統計学やプログラムの知識などが必要とされるものだと誤解されている側面もあるようです。 ですが、決してそんなことはありません。 人事が本質的に理解しなければいけないのは「人事の果たす役割」であり、それを果たすためにHRテックを導入するのが効率的であると考えることでしょう。どんな決断でも最終的には人が行うのです。そのための情報として活用するという本質を理解すれば、導入への壁が少なくなるでしょう。

まとめ

さて、今回はHRテックを取り入れる理由を導入事例とともにみてきましたがいかがだったでしょうか。最後にまとめてみたいと思います。

・「働き方改革」の実践化、人材不足、テクノロジーの進化によりHRテック導入の気運が高まっている

・HRテック導入には多くのメリットがある。

・ルーチンワークの業務削減、コミュニケーションの向上、人材活用のための精度を向上させる、というメリットは非常に大きい

・「採用」「社内教育」「コミュニケーションの向上」などで絶大な成果が出ている

・HRテック導入の障壁は人事そのものであることもある

テクノロジーの進化が人事を助ける時代に突入しているにもかかわらず、それを理解できないことは非常に問題です。問題だけでなく、企業の成長を妨げる可能性すらあるのです。まずは原点に立ち返り、人事の役割などについて考えることが重要でしょう。

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