HRテックを使って採用するとどのような利益が見込めるのか

採用活動を効率化する手段のひとつとして「HRテック」を最近よくニュースなどで目にするかもしれません。しかし、HRテックは実際にどのようなメリットをもたらすのか、ピンとこない方も多いのではないでしょうか。

この記事では、採用活動に領域を絞って、HRテックを活用したツールの紹介とその概要、導入によるメリットなどを解説します。

HRテックが採用活動にどのようなメリットを与えるかを考えるうえで、ぜひご活用ください。

 

採用業務におけるHRテックの活用例

HRテックとは、AIなどの最新技術を活用して、人事業務上の問題を解決する手法です。

近年は人手不足のため、優秀な人材の獲得競争が激化している状況です。

そうしたなか、HRテックによる業務時間削減で採用のコア業務に注力する時間を捻出したり、HRテックを活用した新しい採用方法を模索したりなど、人事部門も様々な試みをしています。

採用業務においてHRテックを効果的に活用している例として、主に次のツールなどが挙げられます。

  • 採用管理システム
  • オンライン面接システム
  • 書類選考AIツール/AI適正検査
  • ビジネスSNS

各ツールの機能と、導入によって得られるメリットを、順に紹介します。

採用管理システムの機能

採用管理システムは多くの企業がサービスを提供していますが、各社に共通する一般的な機能について解説します。

採用管理システムがもつ機能は、主に次の4種類に分けられます。

  • 母集団の形成
  • 各担当者とのやり取りを一元化
  • 求人チャネルの一元化
  • すべての採用データを可視化

母集団の形成

採用活動において、母集団の形成は重要です。

母集団(候補者集団)とは、自社の求人に関心があり、応募したいと思っている候補者を集めることです。

とはいえ、やみくもに人材を集めればよいのではなく、採用したい人物像を事前に想定し、その像にあてはまる人材を集めないと意味がありません。

人手不足のため、優秀な人材、特に新卒学生や第二新卒など若手の人材獲得における競争が激化しています。

また、HRテックの導入などにより、従来の採用手法が大きく変わりつつあります。

従来は、ダイレクトリクルーティングを行うには研究室訪問など足に頼る活動がメインでしたが、現在では優秀な人材に直接コンタクトを取ることが可能になりました。

優秀な人材を集めるために、マーケティングの考え方を採用活動に取り入れたのが、母集団の形成です。

母集団を形成する方法には、主に次のふたつがあります。

  • Web上の求人ページや人材紹介会社などを通して、広く応募者を募る手法
  • 研究室訪問やリクルーター制度などを通して、候補者に企業側からアプローチする手法

採用管理システムは、主に前者に対応しています。

たとえば、システム上で簡単に求人ページの作成・編集ができます。

従来は、インターネット上に求人ページを掲載するには、自社サイトであればデザイナーなどに、転職サイトであればサイトの運営企業に依頼するなどの手間が必要で、迅速な掲載は困難でした。

しかし、システム上で人事担当者が求人ページを直接作成できれば、頻繁な掲載や求人状況に応じた修正、急な募集などにも柔軟な対応が可能になり、従来より母集団を形成しやすくなっています。

各担当者とのやり取りを一元化

これまで人事担当者は、応募者や人材紹介会社、面接官や募集部門など、各担当者にそれぞれ個別に連絡を取っていました。

つまり、人事担当者が、応募者と募集部門などをつなぐ中継地点(ハブ)になっていたともいえます。

採用管理システムを導入した場合、人事担当者はシステムを通して、応募者などの各担当者に連絡します。

つまり、システムが、人事担当者と応募者などをつなぐ中継地点を担ってくれます。

従来は電話やメールソフトを立ち上げてその都度アドレスなどを入力し、履歴はExcelなどで管理するといったように、何種類ものアプリケーション画面を開く必要がありました。

しかし、システムを経由すれば、人事担当者はシステムの画面を開くだけで、すべての作業を完了できます。

さらに、メールのやり取りだけでなく、各担当者にタスクを飛ばして仕事の依頼や進捗確認が可能なシステムもあります。

各担当者とのやり取りの履歴はシステムに自動保存され、後述するようにデータの分析や可視化も可能です。

求人チャネルの一元化

母集団を形成するには、求人ページや人材紹介会社、イベント開催など、様々な求人チャネルを通じたアプローチが不可欠です。

しかし、チャネルの数や種類を増やすほど、連絡やデータ管理は煩雑になります。

採用管理システムを導入した場合、各担当者とのやり取りと同様に、各求人チャネルへの募集掲載や採用データなども一元化できます。

すべての採用データを可視化

各担当者とのやり取りや求人チャネルごとの応募すべてを、採用管理システムを通じて行うため、すべての採用データがシステムに蓄積されます。

応募者ごとの、プロフィール・進捗状況・メール履歴・面接などの日程・面接官からの評価などのデータや、職種や部門ごとの進捗状況などが可視化され、簡単に確認できます。

採用管理システムを導入するメリット

採用管理システムを導入するメリットは、大きく2種類に分けられます。

  • 採用業務の効率化
  • 採用データの一元化・可視化

採用業務の効率化

採用管理システムを通して各担当者とやり取りすることで、これまでかかっていた、候補者や必要な情報を探す時間や、メールやExcelなどの各種ソフトを開く時間などが削減されます。

人材紹介会社とのやり取りもシステムに一元化されているため、スピーディーなやり取りが可能です。

また、システム上から求人ページを直接作成・公開できるため、外注に費やす時間が削減され、公開までのスピードが上がります。

採用業務の効率化によって生み出された時間は、採用活動の改善や応募者など各担当者とのコミュニケーションといった採用におけるコア業務に費やすことができます。

成果例として挙げられるのは、会社の広報活動への注力による応募者数の増加や、人材紹介会社とのやり取りの迅速化による紹介件数の倍増などです。

採用データの一元化・可視化

採用に関するデータの一元化・可視化により、改善策の立案や実施を行いやすくなります。

応募者数や面接実施回数、求人チャネルごとの採用状況や費用対効果などがリアルタイムで可視化されるため、結果を踏まえて効率的にリソースを配分でき、コスト削減につながります。

人材紹介会社についても、紹介実績や紹介人材の面接通過率などを把握でき、よりよい人材紹介のためのフィードバックが可能です。

また、面接官ごとの評価傾向も分析でき、評価の目線合わせなど、面接官との円滑なコミュニケーションにも役立ちます。

オンライン面接システムの機能

オンライン面接システムは、インターネット上で採用面接を行えるシステムです。

採用管理システム内で一機能を担っているものと単体システムの2種類があります。

インタビューメーカー」は、PCやスマートフォンを通して、時間や場所を選ばずに面接ができる機能がついた採用管理システムです。

面接官による評価は、スマートフォンなどの画面内でリアルタイムに行うことができます。

面接は自動録画され、その場にいない他の担当者と簡単に共有が可能です。

そのため、面接官個人に左右されがちな評価基準の均一化など、対面での面接を上回る効果を上げることもできます。

また、オンライン面接でも参加が難しいという応募者のために、あらかじめ撮影した動画でのエントリーといった、画期的な応募方法も可能です。

事前にいくつか質問を用意しておけば、回答形式の動画をアップロードする形式で応募できます。

「インタビューメーカー」は採用管理システムのため、面接の日程調整や、応募・求人の一元管理機能も備えています。

オンライン面接システムを導入するメリット

オンライン面接システムを導入するメリットは、大きく3種類に分けられます。

  • 優秀な人材の獲得
  • 採用業務の効率化
  • 面接の記録化

優秀な人材の獲得

従来の対面面接は、地方など遠距離に住む応募者にとっては交通費などの負担が大きいため、優秀な人材でも応募をためらうケースがあります。

オンライン面接システムは場所を選ばないため、そうした優秀な人材の獲得につながります。

また、オンライン面接は時間や場所の融通がききやすいため、従来発生していた面接直前の辞退者を削減する効果も期待できます。

採用業務の効率化

対面面接や選考会は、人事担当者にとっては場所の確保などの煩雑な業務が発生します。オンライン面接システムの導入により、そうした業務は一気に削減されます。

面接の記録化

オンライン面接システムでは、面接の過程を映像で簡単に記録できます。

面接官が録画を自身の振り返りに使用したり、ほかの面接官と共有して評価基準を均一化したりなど、面接スキルや評価の向上に活用できます。

書類選考AIツール/AI適正検査の機能

採用における判断の一部をAIに委ねて自動化するツールとして、書類選考AIツールやAI適性検査などがあります。

書類選考AIツールの「PRaiO(プライオ)」は、応募者のエントリーシートに書かれた文章から、人物像や辞退可能性、採用優先度などを判定します。

過去におけるエントリーシートの文章と、辞退実績などとの関係性を、AIが学習して診断モデルを構築する仕組みです。

さらに、インターネット上の文章データに基づく人物像のスコアリングや、エントリーシートにおける剽窃診断もできます。

また、AI適性検査の「GROW360採用」は、応募者の適性検査結果から気質・行動特性・スキルなどのデータを収集してAIが分析し、応募者の採用リスクや成長性を判定します。

収集データは、採用のほかにも社内評価や研修などの人事領域における分析に活用可能です。

気質は「外向性/内向性」など5つの特性で表され、応募者における無意識下の態度を計測します。

行動特性は、組織で活躍する人の行動などから導かれる特性で、「論理的思考力」など25項目にわたります。自己評価・他者評価の両側面から正確に計測します。

書類選考AIツール/AI適正検査を導入するメリット

採用における判断の一部をAIに委ねるツールを導入するメリットには、採用の中立化が挙げられます。

面接官は人間のため、面接に際して無意識下で思い込みなどのバイアスがかかることから免れません。

AIによる判断は、個人的な感情が入る余地はないため、中立性の高いものとなります。

総合的な判断は人間が行うとして、データを蓄積していくことで、より客観的な判断やマッチングが可能になっていきます。

ビジネスSNSの機能

「WANTEDLY」はビジネスSNSのひとつで、企業側は採用や企業広報に活用でき、応募者側は企業の情報収集や選考エントリーなどに活用できるSNSです。

「WANTEDLY」では、人事担当者と応募者とで、直接メッセージなどのやり取りができます。

応募者は「WANTEDLY」経由で関心のある企業に直接応募でき、人事担当者とのやり取りで日程を決め、気軽な気持ちで会社訪問も可能です。

ビジネスSNSを利用するメリット

ビジネスSNSを利用するメリットには、母集団の形成が挙げられます。

従来、応募者個人にアプローチするダイレクトリクルーティングを行うには、社員や大学からの紹介など、方法が限られていました。

しかし、ビジネスSNSを利用すれば、プロフィールから検索して優秀な人材に直接コンタクトが取れるため、自社の採用ブランドで獲得できる層を上回る人材採用の可能性もあります。

HRテックを使って採用活動を行うメリット

ここまで解説してきた、HRテックの各種ツールにおけるそれぞれのメリットを、ひとつにまとめます。

  • 採用業務の効率化
  • 採用データの一元化・可視化
  • 母集団の形成
  • 優秀な人材の獲得
  • 採用の中立化(面接の記録化含む)

最大のメリットは、採用業務の効率化です。

本来、採用業務において最も大切なのは、優秀な人材を獲得するために必要な、企業広報や応募者とのコミュニケーションなどのコア業務です。

しかし現実は、採用業務の煩雑さに大半の時間を割いている人事担当者も多いのではないでしょうか。

HRテックの導入により、採用業務が効率化されて業務時間が短縮化された結果、コア業務に充てる時間が捻出されます。

その時間を、可視化された採用データをもとにした改善案立案など、HRテックの導入により生じたその他のメリットを活用するために使えば、さらなる相乗効果が生まれます。

ほかにも考えられるのは、一元化により蓄積された採用データをAIで分析するなど、HRテックを掛け合わせて使う方法などです。

HRテックをただ漫然と利用するのではなく、実現したい目標のためには何をどのように活用すれば効果的か、戦略的に考えることが求められます。

まとめ

採用業務において、HRテックを効果的に活用している例としては「採用管理システム」「オンライン面接システム」「書類選考AIツール/AI適正検査」「ビジネスSNS」などが挙げられます。

採用管理システムの機能には、主に「母集団の形成」「各担当者とのやり取りを一元化」「求人チャネルの一元化」「すべての採用データを可視化」などがあります。

採用管理システムを導入するメリットは、「採用業務の効率化」「採用データの一元化・可視化」などです。

オンライン面接システムの機能には、ネット上で採用面接を行うことができ、面接官によるリアルタイム評価、面接の自動録画と共有、動画での応募エントリー可などがあります。

メリットは、「優秀な人材の獲得」「採用業務の効率化」「面接の記録化」などです。

書類選考AIツール/AI適正検査の機能には、採用における判断の一部をAIに委ねて自動化などがあります。メリットは、採用の中立化などです。

ビジネスSNSの機能には、応募者と直接メッセージのやり取りといったダイレクトリクルーティングなどがあります。メリットは、母集団の形成などです。

HRテックは、ツールごとに多種多様な機能と特徴があります。

採用業務においてHRテックを活用するには、やみくもに使うのではなく、何のためにどのようなメリットを享受したいのかを戦略的に考えると、より効果的です。

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