Google for Jobsとは何か?その特徴やindeedとの違いを説明

世界中で利用されているGoogle for Jobsのサービスがついに日本でも運用開始となりました。実際にその影響は既に出始めており、求職者は無意識のうちにGoogle for Jobsを経由して求人に応募しています。Google for Jobsはこれまでにあったindeedとも違うサービスです。Indeedは求人検索サイトとして日本では非常に大きい影響力がありますが、早くも過去形で語られることになるかもしれません。

今回はGoogle for Jobsとはどのようなサービスであるのかということを知り、indeedと比較することでその特徴を明確にしていきたいと思います。また、日本の採用システムを変える可能性があるといわれているのは一体どんな点であるのかを探りGoogle for Jobsが日本に与える影響について考えてみたいと思います。

Google for Jobsとは何か?

はじめに「Google for Jobsとは何か」ということについて確認しましょう。Google for Jobsとは、Googleが運営している、求人をしている企業と求職者を結びつけるサービスのことです。その歴史はまだ浅く、アメリカではじめて実装されたのは2017年6月のことです。その後は瞬く間に世界中で運用されるようになり、南米・中東・アフリカ・アジアなどの多くの国でその求人サービスは活用されています。そして2019年1月についに日本で「Googleしごと検索」という名称で運営を開始したのです。

なぜ、このニュースがこんなにも話題を集めているのでしょうか。これまで日本ではindeedという求人検索サイトが数ある媒体の中で「一人勝ち」という地位を占めていたのですが、そのindeedを駆逐する可能性があるからです。日本の求職者がGoogle for Jobsを経由して求人情報を探すということになると、求人する企業もそれに対応したやり方で情報を掲載しなければなりません。そのため、日本の各企業ではGoogle for Jobsに対応するために自社のサイトを変更するなどの対応に追われています。

では、なぜGoogle for Jobsがindeedを超える可能性があるのかということについて考えてみましょう。最も大きな理由は「日本人のほとんど(約7割)が日常的にGoogleを使用しているため」です。これは端末がパソコンでもスマートフォンでもほぼ変わらないという統計結果があります。インターネット検索で自分が求める情報を見つけ出すという作業は、日常的に行われるようになりました。日本においては最も使用頻度が高い検索サイトはGoogleで、圧倒的な地位を築きあげているのです。それに比較すると、indeedでの検索件数は微々たる数字になるでしょう。もちろん、これはそもそも比較の対象になるものではありません。

Googleが「全ての検索のスタートライン」であるのに対しindeedは「求人情報」という限定された区域での検索サイトだからです。こうした圧倒的な基盤の差がある中、GoogleはGoogle for Jobというサービスの運用をはじめたのです。Google for Jobの最も画期的な特徴は、Google検索画面で求人するキーワードを検索をすると、その結果でGoogle for Jobによる求人情報が表示されるということです。もちろんindeedの情報も表示されるのですが、上位表示されるのがGoogle for Jobの情報であれば求職者はそちらをクリックすることになるでしょう。そのため、将来的にはGoogle for Jobが求人サイトを独占していく可能性があるといわれるのです。

Google for Jobsで何ができるのか?

具体的に求職者の視線で、「Google for Jobsで何ができるか」ということをみていきましょう。前述したように何かを検索しようとする際にはGoogleを使うという人が多いと多います。例えば、新宿で本屋のアルバイトを探すときにはどのようなキーワードで検索するでしょうか。実際にGoogleで「新宿 本屋 アルバイト」で検索してみましょう。その表示結果は、一番上にリスティング広告が表示され2番目には青枠で「求人 東京都新宿区付近」と書かれたいくつかの求人情報が出てきました。これが、Google for Jobsです。もちろんクリックすれば、無料でこの情報詳細を見ることができます。求職者はクリックするとGoogle for Jobsのページに飛びます。ここで重要なのが、求職者は「Google for Jobsを利用しよう」という意識がないのに、結果として自然にGoogle for Jobsを利用しているという点でしょう。

Google for Jobsでは、これまでの求人サイトと違いキーワードの検索結果でその職種や地域を絞り込んだ求人情報を表示してくれるため、求人を探す時間が削減できます。求人情報にはその企業のロゴマークと必要な情報が掲載されます。またアラート機能もあり、アラートを「オン」にしておけばそのキーワードに関連した新しい求人情報を知らせてくれます。さらにGoogleならではのシステムもあります。それは地図と評価です。

<地図>

Google for Jobsの求人情報には求人会社周辺の地図が表示されています。これはGoogle mapにも連動しており、クリックすることで更に詳しい位置情報を確認することができます。

<評価>

Google for Jobsには求人を出す会社の客観的な評価が求人情報とともに掲載される仕組みになっています。こうした評価は求職者が最も気にする部分でもあり、良い評価のある企業には応募しやすくなるでしょう。評価の低い会社は「ブラック企業」である可能性もあるため、積極的に応募する人が減少します。そのため、「転職会議」、「Vokers」、「カイシャの評判」などの評価の需要が高まり、求人を出す会社はその評価をある程度気に掛ける必要が出てきます。

求人する企業はGoogle for Jobs対策が必須となる

Google for Jobsは、企業も無料で掲載させることができるのですが、ここまで述べてきたように求人を出す企業はGoogle for Jobsに対応した情報掲載をしなければならなくなります。でなければ、優良な人材を確保できない可能性があるからです。企業が考えなければいけないのは大きく3点に分類することができます。①Google for Jobsに掲載されるように求人ページを作成する、②Google for Jobsから経由してくる求人ページのデザインや情報のブラッシュアップ、③企業評価を高めるサービスの提供、という3点です。それぞれ詳しくみていきましょう。

  • Google for Jobsに掲載されるように求人ページを作成する

Google for Jobsは独自の求人情報ページを持ちません。そのため、企業が作るインターネット上の求人情報ページをGoogle for Jobsの規定に沿ったものにする必要があります。具体的にはGoogleのクローラーがその求人情報にたどり着くようにページの設定をしなければなりません。これだけを聞くと、専門の知識やスキルが必要な気がしますが、実際にはそんなことはなくホームページを作る技術がある人であれば簡単に理解できるレベルです。実際にクローラーが巡回できるようになれば検索結果で表示されるようになりますが、求職者は上位表示されている求人を優先してみる傾向があるために企業は「いかに上位表示させるか」ということを研究し始めています。

  • Google for Jobsから経由してくる求人ページのデザインや情報のブラッシュアップ

前述したようにGoogle for Jobsは情報の掲載だけを行うものであり、求職者がその求人に応募する際にはその企業のHPの求人ページか、求人サイトの掲載ページに飛んでもらう必要があります。この場合、求職者が求人サイトに飛んでしまうと他社の情報などと比較検討して目移りしてしまう可能性があるため、できるだけ自社HPに飛ばしたいというのが企業の本音でしょう。そのため、その導線を確保することと、自社の求人ページがその求職者にとっての「玄関」になるためにHPのデザインや情報のブラッシュアップが必要になるでしょう。HPは単なる企業の情報を掲載するものから、企業の雰囲気や働き甲斐や将来性がしっかり伝わるものへと変化することになります。

  • 企業評価を高めるサービスの提供

「食べログ」などのように実際にその店で食事を食べ、サービスを受けた内容が「評価」によって客観的に見ることができるシステムはユーザーの視点では非常に便利です。Amazonなどでも、商品の評価点とコメントを参考にして購入を決定する人も多いでしょう。Google for Jobsでは、企業の評価が求人情報のページに掲載されます。そのため、企業評価を高めるための見直しをする必要がある企業も出てくるかもしれません。評価が著しく低い企業には人材が集まらずに、企業成長に深刻な問題となってしまう可能性があります。

一方、良質なサービスを提供している企業には優秀な人材が自然と集まるようになるのです。この評価制度は日本でも既に馴染みのある制度になっており、ヤフーオークションなどでも出品者や購入者が相互に評価することができ、評価の高い人は信頼性があるということが、初めての取引でも客観的にわかるようになっています。このように企業評価制度はより活性化することが予想されます。企業評価がこれまで以上に露出されることにより「ブラック企業」などに求人が集まらないようになり、やがて人材が集まらないために淘汰されるようになるでしょう。

indeedとの違いは何か

indeedとは日本ではリクルートが買収して運営を行っており、その広告戦略をきっかけに軌道に乗り飛躍的な成長を遂げました。Indeed登場前は、ハローワークや各求人サイトなどを渡り歩き、自分の欲しい情報を探していました。これを劇的に変化させたのがindeedです。Indeedは求人サイトではなく、「求人検索サイト」というカテゴリーを新たに作りそれぞれに散ってしまっていた求人情報を一括で検索できるシステムを作りあげることに成功しました。この結果、求職者はindeedで職種や地域などのキーワードで検索すれば「リクナビネクスト」「マイナビ」「フロムエー」「ハローワーク」などを横断して一気に検索することができるようになったのです。

また、indeedにはindeed独自の情報掲載ページがあり、どんな企業でも無料で求人情報を掲載することができたのです。これは零細企業でもアルバイトの情報を気軽に掲載することができたため、どんな企業でもindeedを積極的に活用するようになりました。求人費用をかけられる企業はindeedに広告料を支払いその情報が上位表示されるようにしました。これも費用対効果を見極めることができたため、これまでの求人サイトとは大きな違いとなったのです。ではindeedの特徴をまとめてみましょう。

・「求人検索サイト」で、求人情報を一括で検索することができる

・求人情報を無料で掲載することができ、費用をかければ上位に表示される

・indeedに情報掲載ページがあるため、求人ページを作る必要がない

では、このindeedとGoogle for Jobsを比較してみましょう。Google for Jobsもindeedと同じように、求職者も求人をする企業も無料でサービスを使用することができます。しかし、indeedは広告料を支払えば上位表示させる仕組みがありましたが、Google for Jobsは広告料のシステムは採用していません。また、Google for JobsはAIに自動クロールをさせ、求人情報を掲載させるのみの機能ですので、Google for Jobs内に求人掲載ページは存在しません。

企業評価の掲載もGoogle for Jobsのみのものです。しかしながら、最も大きな点は、既に述べたようにそのバックグラウンドとしてGoogleの巨大な検索サイトであることでしょう。Indeedは求人検索サイトとして画期的なシステムを日本に定着させることに成功しましたが、今後Google for Jobsの登場によりその地位が失われる可能性もあります。

これからの日本の採用システム

Google for Jobsの登場によりこれからの日本の採用システムは、大きな転換期を迎えたといえるかもしれません。Google for Jobsの目的は「人材と企業をより良く結びつける」ものです。Google for Jobsはこれまで日本の求人システムになかった「全くの無料サービス」であることから企業評価を掲載することを可能にしました。これによりGoogleは「求人のインフラ」という地位の獲得を目指していることは明白です。これは、日本においてハローワークの役割だったものです。第三者からのアドバイスは、企業評価に変わるものでありその情報量はハローワークを大きく凌駕するものです。

また、これまで採用情報だけではその企業の体質や評判というものはなかなか判断ができないものでした。それに客観的な評価情報を入れることで、良い企業には多くの優良な人材が集まりやすい社会を再構築するという効果があります。Google for Jobsの現在の日本のシステムでは、「しごと検索」の機能のみですが、当然ここから拡張されていくことが予想されます。例えば、仕事をしている人でも「良い話があれば聞いてみたい」と思う人も多く人もいるでしょう。そういった人が個人情報を伏せて経歴を掲示しておくことで、企業がヘッドハンティングをしやすくしたシステムは今後搭載される可能性もあります。

また、求人に関連したサービスの提供を今後Googleが手がけることになれば、新卒採用や、転職、人材派遣、人材紹介、アウトソーシングなどの日本の採用システムを変える可能性があります。企業の採用の在り方が変わるということは、会社の在り方を変えることにも繋がります。Google for Jobsの日本でのサービス開始は単純に採用サイトの問題だけでなく、社会に影響を与える可能性もあるのです。

まとめ

さて、今回はGoogle for Jobsとは一体どんなシステムで、その特徴やIndeedとの違いを説明してきましたがいかがだったでしょうか。最後にまとめてみたいと思います。

・Google for Jobsは世界中で運用されているサービスである

・Google for Jobsがいよいよ日本で「Googleしごと検索」として運用開始となった

・Googleで求人に関するキーワードで情報検索するとGoogle for Jobsが表示される

・Google for Jobsは上位表示されやすいため、注目を集めやすい

・Google for Jobsはこれまでになかった会社の評価を掲載させた

・求人情報を出す企業は、Google for Jobsが必須となった

・企業はGoogle for Jobsの仕様に合わせた採用ページを作成することになる

・企業は客観的な評価を高めるサービスの提供をこれまで以上に意識するようになる

・indeedは求人情報検索サイトとして、一括横断検索を可能にした

・indeedとGoogle for Jobsの決定的な違いは、Googleそのものが巨大な検索サイトであること

・Google for Jobsはまだ日本では運用が始まったばかりで、今後は機能が追加される

・今後はGoogleが日本の採用システムを変える可能性がある

いつも時代でも、組織をつくるのは人でありそれは現在でも変わりません。優秀な人材を確保できる会社は成長しやすいために、資金を得やすくなります。資金を得やすい会社は人材に対して有益な福利厚生や報酬を提供することができます。好条件での就業は更に良い人材を集めやすい環境の構築を促します。組織に優良な人材をいかに集めるか、これがどの時代においても根管であるのです。Googleは「他社の求人サイトと競合するという気持ちはない」と発表していますが、この日本での「しごと検索」が他社に及ぼす脅威は計り知れないものがあります。もし、Googleが本腰をいれて人材関連のサービスを始めることがあれば、どの企業もこれまで以上にその動向に対して注目する必要があるでしょう。Google for Jobsの日本でのサービス開始にはそういった予感を感じさせる出来事なのです。

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