企業の成長×HRテックの関わり

「HRテック」についてニュースなどでよく目にするけれど、HRテックの導入が企業にどのような成長をもたらすのか、いまひとつ分からない方も多いのではないでしょうか。 この記事では、HRテックの活用によって、離職率の低下・短期離職しない人材の採用・リーダー育成など、企業として成長できた会社について紹介します。HRテックと企業の関わりについての理解を深めるうえで、ぜひ参考にしてください。

 

「カオナビ」導入で離職率が全国平均以下に

「カオナビ」とはHRテックの一種であり、顔写真などによって、従業員の特性を一覧把握できる人材管理システムです。

顔写真を軸に、従業員の基本情報、評価履歴、資格や研修履歴などのスキル、性格診断やストレスチェックなどのパーソナリティー、キャリアプランなどの一元管理が可能です。そうした情報を経営陣や現場の管理職などと共有でき、適切な人材配置や育成などに有効活用できます。

グローバルキッズは、東京をメインに全国116拠点で認可・認証保育所を運営する企業です。カオナビの導入により、保育士の離職率を下げることができました。

導入した背景

保育事業者の大半は、人手不足問題に悩んでいます。原因のひとつとして、保育所は国などの補助金で運営しているケースが多いため、募集時に待遇面で他企業と差別化を図ることが難しい点が挙げられます。

同社は、保育事業に携わるうえでの考え方や姿勢を伝えて差別化を図り、信条である「輝いた大人を魅せる」ために従業員満足度の向上に努め、「チーム保育」を大事にしています。しかし、大切なチーム員である従業員が1,000名を超えると、顔と名前が一致しづらくなり、従業員の顔を一覧できるカオナビの導入を決めました。

導入による成果

カオナビの導入により、主に次の成果が生じました。

・従業員の離職率低下

・従業員のキャリアパス形成

・行政監査への迅速な対応

カオナビを導入した時点(2014年)での離職率は約16%でしたが、2017年度はパート従業員を含めても10%より下で推移しており、全国平均の12%よりも低い数値を保持できています。

離職率を下げることができた原因は2つあります。1つは、カオナビ導入によるコミュニケーションの活発化です。従業員の顔と、名前や出身地など様々な情報が一致したことで、経営陣や管理職からのコミュニケーションが取りやすくなりました。

もう1つは、離職者の情報共有による採用ミスマッチの回避です。カオナビで一元管理している離職者の経歴や面接時の情報から、たとえば「職場環境」という退職理由で前職を辞めている場合、同じ理由で辞めやすい傾向があることが分かりました。採用担当者とのそうした情報の共有が、ミスマッチ回避に貢献しています。

参考:カオナビを2年半活用した結果、 職員2,439人の従業員満足度が向上し、 離職率は全国平均以下になりました|カオナビ

「カオナビ」導入で入社3年間離職率が20%台から10%以下へ

エムティーアイは、女性向けヘルスケアサービス「ルナルナ」などのスマホ向けコンテンツ事業を運営する企業です。カオナビの導入により、離職率を20%台から10%以下へと激減できました。

導入した背景

カオナビを導入する前は、他社のシステムを5年リースで使っていました。不満だったのは「重くて動作が遅いシステム」「使いづらいUI」「価格が高い」の3点です。起動までが非常に長い、情報の検索結果までに踏むステップが多い、ログインも面倒と、情報検索がおっくうになっていました。

カオナビは、システムが軽くシンプルで、管理画面もカスタマイズでき、経営層や現場の社員でも使えるほど分かりやすい点が魅力でした。加えて、決め手となったのは、従来のシステムより費用が安い点です。

導入による成果

導入後、システム費用は半減し、作業時間は6分の1にまで短縮されました。以前は人事情報は属人化されていたのが、カオナビに面談などの情報を入力し蓄積することで、情報を人事部内で共有でき、社員のフォローアップも各人事担当者から人事部全体で可能になりました。

また、新卒従業員における入社3年間の離職率を、20%台から10%以下へと激減させることができました。これは、カオナビ導入によって人事部全体で情報共有しやすくなり、育成やフォローアップなどのコミュニケーションが活発化されたためだと実感しています。

参考:カオナビを活用して2年。 コミュニケーションが活発化したことで 離職率が20%から10%に激減しました

「Talknote」導入でサプライズ退職が減少

「Talknote」はHRテックの一種で、関連するメンバーと必要な情報を共有・蓄積できる、シンプルなコミュニケーションツールです。アクセス時間や投稿量などTalknoteの利用データ解析によって、従業員の離職可能性を早い時期に見つける「アクションリズム解析」や「オーバーワーク検知」など、従業員の課題をAIが解析してアラームを出してくれます。

プレシャスパートナーズは、就転職サイト「アールエイチナビ」などを運営する人材サービス企業です。Talknoteの導入により、いわゆる「サプライズ退職」減少の効果がありました。

導入した背景

同社は、社内連絡ツールとしてメールを利用していましたが、定型文なしでもタイムリーなやり取りが可能なLINEへと移行しました。しかし、社内端末を支給されている営業メンバー以外は、個人アカウントでの利用やセキュリティを懸念したため、営業メンバーとそれ以外で、連絡ツールが異なる事態が発生します。

結果として起こったのは、口頭や電話での連絡増加による「言った言わない問題」の発生や、情報の属人化といった問題です。そうした状況を改善するために、機能面やUIが優れているTalknoteに社内連絡ツールを統一し、情報整備を図りました。

導入による成果

導入後は、社内のコミュニケーション量が10倍程度に増えた実感があります。情報が可視化され、トラブルの場所や内容が把握でき、対応スピードも上がりました。現場から挙がる声に対し、上層部が応答するコミュニケーションも増えてきています。

本社と支社間、上司と部下など、異なる立場間のコミュニケーションも活発化しました。東京から転勤したメンバーの日報に、東京の元上司がコメントし、それを代表取締役が知ることができるのもTalknoteの素晴らしさです。

本社にいても、支社メンバーの投稿内容や反応スピードから状況を把握できケアも可能です。そのため、従業員が突然退職する「サプライズ退職」も以前よりも減少してきました。

また、Talknoteを通じて情報や知識が共有・蓄積されるため、顧客への提案時にも、過去実績から類似案件を探して参考にするなど、業務効率も改善されてきています。

参考:「サプライズ退職」が以前より減少してきた理由 株式会社プレシャスパートナーズ|Talknote

「IBM Kenexa職業パーソナリティー調査」の導入で、採用基準を刷新し短期離職率の改善へ

「IBM Kenexa(ケネクサ)職業パーソナリティー調査」はHRテックの一種で、AIが導き出す洞察をもとに、適切な人材をスピーディーに見つけ出す適性調査システムです。評価対象者の特性や強みを把握でき、最適な配置や育成に活用できます。

「外向性」「組織的」「調和性」など6つのカテゴリ別に、23の性格特性における傾向値がグラフで可視化されます。採用担当者や上司などの評価者には、「予想される傾向」として、同等のスコア取得者に見られる性格などの傾向や「能力開発の方向性」、面接時に使えるフォローアップ用質問などが提供されます。

ソラストは、医療事務や介護・保育サービスを運営する企業です。医療事務事業において、1年以内に採用者の約4割が離職する状態の改善を目指して、IBM Kenexaを導入しました。

導入した背景

同社は、メインの医療事務事業において、全国1,500以上の医療機関で、2万人を超える社員が医療事務サービスの提供を行っています。年間で約5,000人を採用していますが、1年以内に退職する短期離職者が約4割発生するため、その削減が事業課題でした。

推測される理由として、一般的な適性診断を利用しているため、同社の特徴とマッチングするような応募者のパーソナリティー評価ができていないという現状がありました。そこで、採用したい人物像にあてはまる基準を独自に作成して適性診断を行うために、IBM Kenexaと分析システムであるBBCIの導入を決めました。

応募者はIBM Kenexaのパーソナリティー調査を受検すると、外向性や調和性など23の性格特性を軸に、人格の傾向値が算出されます。BBCIは、蓄積された過去の調査結果をもとに人材モデルを作成、そのモデルを基準に応募者のスコアリングを行って短期離職の確率などを割り出します。

同社は導入準備期間中に、従業員の約4割にパーソナリティー調査を受検してもらってデータを蓄積し、試行錯誤しながら統計的にも裏付けをもつ人材モデルを作成しました。短期離職者のパーソナリティーも分析でき、2017年8月から、IBM KenexaとBBCIを採用した新システムを導入します。

導入による成果

新システムでは、応募者がWebからパーソナリティー調査を受検すると、BBCIが応募者の人格傾向値と人材モデルを照らし合わせ、適性や短期離職の確率などをリアルタイムで算出します。採用担当者はその結果にもとづいて客観的に、採用判断や応募者対応を行えるようになりました。

今後は、たとえば、管理職向けや業務別の人材モデルを作成し、入社後の配置まで見込んだ採用など、新システムの更なる活用を考えています。

参考:お客様事例「ソラスト+IBM」IBM Kenexa職業的パーソナリティー調査|IBM

「IBM Kenexaリーダーシップ・アセスメント」の導入で、リーダー候補の能力見極めを客観化

「IBM Kenexaリーダーシップ・アセスメント」はHRテックの一種で、キャリア開発にAIを活用して、パーソナライズされたキャリアパスを明確にし、定着率を高める手法です。産業組織心理学者約200名との30年以上にわたる研究開発や、グローバルな規模の人材データベースなどに基づいた評価を行います。

難しい環境下でも成果を上げるオリジナルのリーダー像をもとに、オンライン上で多様な観点から人物を評価します。リーダー候補の可視化や、ベンチマークデータとの対比により、リーダーの育成計画や戦略的な人材配置を提案可能です。

同アセスメントは、オンラインアセスメントと集合研修の評価をもとに、育成計画を作成します。オンラインアセスメントは、行動特性や性格、他者評価などをもとに「リーダーシップ行動評価」「リーダーシップ選好」「360度フィードバック」を行います。集合研修では、リーダーシップの発揮度合を仮想空間におけるシミュレーションによって測定します。

ふたつの結果を踏まえて、育成計画を作成し、メンターによるコーチングや、上司によるフィードバックを行います。

帝人は、世界でトップレベルのシェアを誇るアラミド繊維などの高機能素材や、ヘルスケア、ITなど多角的経営を展開している企業です。グローバルに活躍できるリーダー育成のため、IBM Kenexaリーダーシップ・アセスメントを導入しました。

導入した背景

同社では、2002年から役員候補向け人材育成プログラム「STRETCH」を行っていました。このプログラムは2種類に分かれ、1では部長層をメインに年10人、2は課長層から年20人を選抜します。各プログラムは3年間で、研修や挑戦としての配置転換、経営への提言などで構成されています。

リーダー候補の能力やポジションの妥当性を見極めるために、能力・資質評価に客観的な要素を加えたいという経営陣からの要望があり、外部アセスメントの導入を考えました。

外部アセスメントの採用要件は、次の点を前提としました。

・アセスメントの結果を受講者にフィードバックすることで、自らのリーダーシップ開発に役立てられる

・外国人も受講でき、グローバル共通基準での評価が可能

・社長候補向けの別アセスメントとの整合性

そのうえで、受講しやすさを重視して、IBM Kenexaリーダーシップ・アセスメントの採用を決定しました。

導入による成果

同社では、2015年8月から17名に対して、オンラインアセスメントと集合研修を実施しています。集合研修のひとつである演習は、仮想空間におけるビジネス上の課題に対して、短時間で大量の資料を読み込んで考えをまとめるという難度の高いものです。

結果については、受講者2人に対してIBMのアセッサーが1人つき、スコアリング結果やリーダーとしての能力開発における方向性について、個別に提案とフィードバックを行います。

受講者からは、研修内容の素晴らしさや、アセッサーからの提案に対して満足の声が挙がっています。人事部門においても、受講者の人物像の多面的な把握や、従来の社内評価の正しさを裏付けるデータなどが得られました。

今後は、IBM Kenexaを役員候補における能力の見極めにとどまらず、戦略的な人材配置のための客観的データとして更なる活用を考えています。

参考:IBMお客様事例 帝人株式会社|IBM

まとめ

紹介した事例では、HRテックの導入によって主に次の成果を上げることができました。

・情報の一覧化、社内連絡ツールの統一化、情報の蓄積・共有などによる、コミュニケーションの活発化

・離職者のパーソナリティ分析・情報共有による、採用ミスマッチの回避や短期離職率の低下

・客観的な能力評価による、リーダー候補の能力見極めや能力開発

企業が成長するためには、情報をどのように管理するかが重要な鍵となります。情報管理において、人力では難しくテクノロジーを大いに活用したい点として次が挙げられます。

・情報の一元管理

・情報の分析

・情報の共有

HRテックの導入により「一元管理した情報を分析し、結果を共有する」という流れを生み出すことができれば、コミュニケーションの活発化や離職率の低下、優秀な人材の採用や育成などの成果につながります。

自社が成長するためには、現在散らばっている情報をどのように管理するのが理想的なのか、そして、そのためにはどのようなHRテックを導入すれば効果的かという観点から、情報管理を再考してみてはいかがでしょうか。

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