転職市場のトレンド「職場スカウト採用」とは?メリットや方法をご紹介

人材採用において、企業は厳しい状況に直面しています。新卒採用で十分な人材を採用できるかわからず、採用できても離職してしまうことも増えています。人材獲得難、人材流出が、企業活動に影響を与えることも待ったなしの状況と言えるでしょう。

人材採用にあたっては、中途採用も人材獲得のチャンスの一つです。リクルートホールディングが発表した2019年トレンド予測では、中途採用領域に触れられ、「職場スカウト採用」がキーワードに挙げられました。今回は、職場スカウト採用とは何かを詳しく解説していきます。中途採用の効果を上げる採用方法を見ていきましょう。

1 転職市場の変化している理由とは

中途採用領域が注目される理由には、ビジネスシーンの変化によって、転職市場も変化していることが挙げられます。人材を獲得することはもちろん、人材を定着させるという視点も必要です。まず転職市場の現状を確認しておきましょう。

1-1 深刻化する人手不足

企業が直面している最も深刻な問題は、人手不足でしょう。獲得した人材がすぐに辞めてしまったり、人材が獲得できなかったりするなどから、「人手不足倒産」という言葉も聞くようになってしまいました。

厚生労働省が平成30年6月1日に発表した「人手不足の現状把握について」では、人手不足の深刻さが記されています。金融業を除くほとんどの業種で4割以上の企業が人手不足を感じているという結果が出ています。運輸業やサービス業を特に顕著で、欠員率も深刻な数値です。

賃金以外に、職場の人間関係、労働条件などが企業を見る基準になりつつあるため、業種によっては、新卒採用では採用を望めない場合もあります。そのため中途採用で人材不足を補おうという考え方が出てきているのです。

1-2 加熱する人材獲得競争

人手不足という状況である中、平成30年12月時点で、有効求人倍率は1.63倍となっています。求職者に対して、仕事の数が上回っている状態です。求職者にとっては、企業を選ぶことができる状態と言えます。

優秀な人材を獲得するためには、労働環境の良さや賃金などで、他社よりも魅力を伝える必要があります。人材獲得競争が激化し、自社に合った人材を獲得できないことも増えています。

働き方の変化も人材獲得競争に影響を与えていると考えられます。フリーランスなどの選択肢も増え、企業で働くことだけが就職と言えなくなってきています。働き方が増えることで、獲得できる人材の絶対数が減っていると言えるでしょう。

1-3 人材の定着率の低さ

獲得した人材が定着しないことも問題の一つです。34歳以下の離職率が高く、業種によっては2割を超えています。離職率が高い反面、34歳以下の人材が流入する割合も高くなっています。転職をする34歳以下の人材が多いことがわかります。

終身雇用などの慣習が崩れ、ワークライフバランスの実現やスキルアップなどを目指して、条件に合う企業に転職する傾向が高まっています。

ただ若手の活発な転職があっても、離職率が高いことは問題です。定着せず転々としている例もあり、企業と人材がマッチすることが求められています。

2 従来の転職市場での採用活動を確認

人材不足や定着率の低下を解決するために、中途採用領域に「職場スカウト採用」が取り入れられようとしています。ただ中途採用は、これまでも採用活動にあった手法です。これまでの中途採用をまず理解していきましょう。

2-1 人事主体の採用活動

これまでの採用活動は、人事主体で行われていました。人事部は、HRテックの導入などで変わりつつありますが、企業において、現場ではなく、縁の下で人材管理をするのが一般的です。

現場の声が人材採用に取り入れられなかったり、獲得した人材が職場にきて戸惑いを感じたりすることが多くなっていました。採用後にズレを感じた人材は、早期離職をするなど、企業と人材のミスマッチが起きてしまいます。

採用を人事が一任していると、離職理由などを分析することも難しくなるでしょう。次の採用に生かすことができず、採用と離職を繰り返すことも考えられます。現場のメンバーも人材採用に加わるというのが、これからの中途採用です。

2-2 会社概要や仕事内容メインの情報開示

中途採用などの採用活動では、企業の基本情報や仕事内容、待遇などを伝えるのが、従来の方法です。職場の雰囲気や人間関係、環境などの現場情報はないため、どうしても入社前と入社後でズレがでてしまっていました。

リクルートのトレンド予測にある「求職者からの面談・面接の要望」では、「配属される職場長と直接会話ができる場」「配属される職場メンバーと直接会話ができる場」が、上位2位となっています。

中途採用で入社する人材にとって、職場との相性は最も気になる点です。求職者目線の情報公開によって、職場を知ってもらう中途採用が求められます。

2-3 求職者の選別が主な目的

これまでの採用活動では、求職者が自社に必要かという観点での選別が主な目的でした。自社の基準で不採用となった人材の中には、自社とマッチしていた人材がいたかもしれません。

これからの中途採用では、求職者との相性を重視する方向に変化していくと予想されています。企業と人材がマッチすることで、人手不足の解消と人材の定着という2つのニーズを満たすことができるでしょう。

3 2019年のトレンド「職場スカウト採用」とは

人材とのマッチが重要になっている中途採用領域で登場した考え方が、「職場スカウト採用」です。職場全体でスカウトに関わることで、自社と人材の相性を確かめます。職場スカウト採用とは、どのような採用か解説していきます。

3-1 現場が関わる採用活動

職場スカウト採用は、これまでの人事主体の採用ではなく、現場主体の採用方法です。管理職や社員が採用に関わる中で、採用するかどうかを決めていきます。企業としては、人事目線だけでなく、現場の目線も取り入れ、必要な人材を見極めることができます。

求職者から職場スカウト採用を見ると、職場のリアルな情報を知ることができ、入社後をイメージしながら、求職活動を進めることが可能になります。

管理職だけでなく、社員との関わりを増やすことで、人間関係や社内の雰囲気を伝えられます。人材の定着にも効果が期待できます。

3-2 面接・面談にとどまらないリアルな採用活動

中途採用などの採用活動は、面接で合否を決めるのが一般的です。面接での対話のみで採用を決めるのは、業務がある中で採用を行うには最適な方法と言えます。ただ求職者は、合格するために、面接に使えるテクニックや用意した答えなどで取り繕うことも考えられます。

企業は職場、人材は人物像といったリアルをさらけ出すことがないため、ズレが生まれていました。職場スカウト採用は、職場での体験を通して、採用を決めます、互いにリアルを伝えることで、企業にとって合うのか、求める環境であるかを判断することができます。

3-3 転職活動の中心になる可能性が高い

職場スカウト採用は、転職活動の中心となっていくと、リクルートホールディングの発表を中心に予想されています。人手不足や人材獲得競争に置かれている企業が、中途採用に力を入れることが考えられます。

人材を獲得すればよいという時代は終わり、人材を定着させることが必要になっています。職場全体が関わる職場スカウト採用では、人材が定着するかどうかを、リアルなかかわり合いをヒントに判断することができます。

これからの時代は、いかに獲得した人材を確保するかが大切です。人材不足に悩む企業は、人材との出会いを大切にする職場スカウト採用の導入の検討を迫られるでしょう。

4 職場スカウト採用のメリット・デメリット

職場スカウト採用に対して、「現場が関わることは難しい」などのデメリットを感じる企業もあるでしょう。導入面でデメリットはありますが、人材採用の面では大きなメリットがあります。メリット・デメリットを参考に、導入を検討してみましょう。

4-1 【メリット1】現場目線で企業に合う人材を見つけることができる

職場スカウト採用では、人事部だけでなく、現場が採用に関わります。現場目線で「こういった人材が欲しい」「こういう人材が足りていない」といった目的を明確にして、採用に取り組むことができます。中途採用において、人材と関わって、マッチする人材を見つけることが大切です。

また求める人材要件を詳細に決めるのも方法の一つです。直接関わることができなくても、現場目線の採用基準で採用・不採用を決めることができます。書類選考や面接から現場が関わり、企業のマッチ率を高めます。

4-2 【メリット2】人材の定着率を上げることができる

人材が離職する理由には、選考時の情報と実際の条件が違った、社風と合わなかったなどの理由が挙げられます。転職や独立が活発になっている現代では、企業に合わないと判断すると離職してしまいます。

その反面、企業で自分のスキルが発揮できる、やりたい仕事ができることが重視され、マッチした企業には長くいることも多いです。あらかじめ企業の情報を開示することで、自分と企業が合うかを見極めることができ、求職者が定着するための土台を作ることができます。

4-3 【メリット3】職場の雰囲気や仕事を知った上で入社できる

中途採用における求職者は、前職での経験を持っているため、転職先の雰囲気や仕事をできるだけ知っておきたいと考えています。これまでは、人事主体であったため、入社後前職との違いに戸惑うことが多かったと答える転職者が多くいました。

職場スカウト採用では、面接や面談以外にも、オフィス見学などで職場を直接見ることができます。職場の雰囲気や仕事について、見たり、聞いたりすることで、入社後の戸惑いを減らすことが可能です。

「職場ならではの慣習や規範になじめない」という転職者の声もあるため、できるだけ詳細に情報開示することが、転職者にとって有益な情報となります。

4-4 【デメリット1】業務内で採用活動を行う必要がある

職場スカウト採用では、現場が採用活動に参加するため、業務と並行して、採用活動を行う必要があります。現場に負担がかかり、業務に支障がでることも考えられます。

事前の準備も現場が関わる必要があります。資料の準備だけでなく、職場スカウト採用に備えたミーティング、人材育成も大切です。職場スカウト採用を業務と両立するためには、まず体制づくりが必要でしょう。

4-5 【デメリット2】人材の特性が偏る

現場主体の採用活動では、求める人材の特性が偏る場合があります。職場スカウト採用では、企業として欲しい人材よりも、チームや部署に欲しい人材を求めるため、似た人材が集まりやすいです。

人材の特性が偏ると、組織にまとまりがなくなったり、発想に変化がなくなったりするなどのデメリットが考えられます。

現場にどのような人材が必要かという視点と現場にどのような人材がいるのかという視点を持って、職場スカウト採用をする必要があります。バランスのとれた中途採用ができると、組織力も上がっていくでしょう。

5 職場スカウト採用を行うためには

職場スカウト採用を行うためには、リアルに企業を知ってもらえる機会を作りましょう。今回取り上げる方法は、体験入社、社会人インターンシップ、ディスカッションの3つです。それぞれのメリットなどを見ていきます。

5-1 体験入社

体験入社は、入社前に就業を体験する選考方法です。半日体験や1日体験などの期間が設けられます。選考の過程に、体験入社を取り入れるため、企業は転職者に適性があるのかを実務から判断することができます。転職者としても、仕事や人間関係などを見ることができるため、企業を見極める機会となります。

体験入社を有効な選考にするためには、転職者が見るポイントをしっかりと体験入社で体感してもらうことが必要です。仕事内容や人間関係、社風、残業などのありのままを見せましょう。

仕事への適性や人間性が評価対象となることで、選考に時間がかかるのはデメリットと言えます。合否決定前のフォローなどに取り組むことで、不安な期間をケアすることができるでしょう。

5-2 社会人インターンシップ

社会人インターンシップは、体験入社よりも長期間に渡る採用方法です。数ヶ月に渡るインターンシップによって、優秀な人材の確保、ミスマッチの防止を狙っています。インターンとして入社する人材にとっても、じっくりと企業との相性を考えることができます。

仕事内容を一通り体験してもらいたいという場合は、短期インターンもおすすめです。2週間ほどの日程で、様々な部署やチームの仕事を体験できます。課題を与え、能力を問うという方法もあります。

求職者が長期間職場にいることになるため、受け入れる体制を整えることが必要です。社会人インターンシップの目的の共有や計画などをしておくことで、企業と人材双方にとって、充実した機会となるでしょう。

5-3 社員とのディスカッション

中途採用の選考過程でディスカッションが行う企業も多くあります。職場スカウト採用でのディスカッションは、社員と人材とのディスカッションです。企業に関わるテーマに対して、ディスカッションをすることで、企業を理解するとともに、社員と交流することができます。

仕事に対する価値観を知るきっかけにもなり、社風との相性を見ることができます。体験入社や社会人インターンシップに比べて、短時間でできるため、職場スカウト採用に取り入れやすい方法です。

6 まとめ

リクルートが中途採用のトレンドとして発表した職場スカウト採用は、これからの転職市場で主流になっていくと予想されます。現場主導の職場スカウト採用は、企業と人材のマッチ率を上げ、人材獲得、人材の定着を実現する可能性を持っています。人手不足に悩む企業は、選考方法に職場スカウト採用の導入を検討してみましょう。

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