「採用×AI」実際の取り組み

 

はじめに

インターネットが普及して10年ほど、パソコンの前で一括エントリーができるようになるなど、就活生にとっては手軽にたくさんの企業に応募できます。その反面人事採用部門においては、採用試験に手間や工数がかかり、大きな負担となっているのが現状です。こういった人事部門の負担を減らし、求める人材を効率的に採用できるツールとして注目されているのが、AI(人工知能)です。採用活動にAIを使った事例やどのように活用するのか、知っておくとよいでしょう。

1.AIを利用した採用活動とは?

増え続ける採用関係の業務負荷を減らすために、現場ではWeb面接のようなコンピューターを使ったさまざまな取り組みが行われています。その中で最近注目されているのが、AI、すなわち人工知能を採用業務に取り入れることです。会社が求める人材をさまざまな形でデータ化し、応募者のマッチング度や志望度をAIエンジンで判断することです。

エントリーシートや履歴書から応募者の志望度合いや会社へのマッチング度を判断するとともに今までエントリーしてきた企業や会社説明会の参加状況、適性検査などあらゆるデータを通して企業とのマッチングやその会社への志望度を科学的に判断することになります。AIを複数年利用すれば、過去の採用者とのデータとも照らし合わせて、効率的に人材を採用することができます。

書類選考だけではなく、面接官にAIを取り入れる動きもあります。スマートフォンやヒト型ロボットが学生を面接することになり、質問に対する答えだけでなく、面接を受ける態度や経過した時間などを含めて総合的に判断することになります。

2.AIを利用した採用活動のメリットとは

AIを利用した採用活動には、たくさんのメリットがあります。最大のメリットは採用に欠ける工数が削減できることです。特に最近ではどのような企業でも全国からエントリーできるようになったからか、一つの企業、採用人数に関するエントリー数がかなり膨れ上がります。AIを使えば、一定の基準を満たさない学生はもちろんのこと、エントリーの状況からいって冷やかしで受けに来ている、志望度の高くない学生をピックアップできます。

また、AIは人工知能なので複雑なオーダーも可能です。例えば、対人スキル、コミュニケーション能力の高い人材を営業で、処理能力が高く、博識で粘り強い学生を経理部で、戦略を立てるのが得意で、行動力のある学生を開発部でなどというように各部署で求める人材が違う場合でも、AIなら複雑なデータを処理するように各部署にマッチする人材をピンポイントに採用することができます。

一方で、採用にAIを使うことは、学生側にとってもメリットがあります。AIが面接に取り入れられれば、アプリを使うだけで自宅に居ながらにして面接を受けられます。また、面接官による当たりはずれはなく、きわめて公正で公平に判断されるようになるでしょう。〇日までに受けてください、と言われて自由に受けられるので、ほかの企業とのスケジュール調整を気にする必要もありません。

3.会社説明会にAIを活用する事例

会社説明会をWebで行うことによって、いちいち会社に行かなくても手の空いた時間で会社のことを知ることが出来るWeb説明会は随分多くの会社に取り入れられています。しかしながら、一方的なWeb説明会では、会社のことを知ってもらうことはできても就活生の質問に答えることが出来ないという欠点があります。

これに対して大手航空会社では、AIを使ったバーチャルOB訪問、OG訪問がライン上で行えるプログラムが好評を博しています。既存のラインアカウントとは別にしているので安全性も高く、24時間いつでもバーチャルな専門社員がスマホの中から疑問に答えてくれるのです。

返答のバリエーションも豊かであり、福利厚生やボーナスなどなかなかリアルな会社説明会では聞きにくいことでも、バーチャルなAIの専門社員になら聞くことができます。会社としても、ほかの部署の業務内容や会社の今後の展開など、普通の若手社員では答えにくいことや、訪問するOB、OGによって違う答えになりがちな質問でも平準化して答えられるというメリットがあります。

4.書類選考にAIを活用する事例

エントリーシートの評価判定にAIを利用する例は、かなり増えてきています。大量のエントリーシートを限られた時間内で採点していくのはとても大変なことです。しかしながらエントリーシートの選考に時間がかかっていては、就活生はどんどん就職活動を進めていくのでよその企業に有能な人材を取られてしまうこともあります。

AIを利用したエントリーシートなら、公平公正に判断できます。大手通信会社では、エントリーシートをAIが判定して合否を分けます。そのうえで、合格のエントリーシートと不合格のエントリーシートをそれぞれ人事が見ることで、エントリーシートの選考に係る業務工数を75パーセントも削減で来ています。エントリーシートは評価に時間がかかります。もちろん、評価基準は会社によって違うのですが、一枚一枚それを反芻しながら読み込むと、かなり時間がかかります。AIが評価をしてそれを正しいかどうかチェックするというプロセスにすると、驚くほど時間が削減できるのです。

大手飲料業者でも、AIを使ってエントリーシートを採用不採用に分けることで40%も労力を削減で来ています。消費者が当たり前に知っているような大企業ア、それだけ冷やかし受験の就活生も多くいます。その人の志望度や人物特性、行動特性だけでなく、内定辞退の可能性も数値化できます。このような選考を利用することでいわゆる「冷やかし受験」の就活生と本当に会社を志望して受けに来た就活生を区分することができるのです。

5.作文での評価にAIを活用する事例

エントリーシートだけでなく、書類選考の中には作文や論文選考を設けている会社も少なくありません。作文や論文といった面倒な選考を設けることでより志望度の高い学生に応募してもらえるからです。また、業務の遂行に必要不可欠な論理的に考える力なども見ることができます。

しかしながら、作文や論文を評価するには、とてもたくさんの時間がかかります。若手の人事社員とキャリアのある人事社員では評価の基準が違うこともあります。特に世代によって使う言葉や言い回しが違っていたりするとその部分にフォーカスが当てられます。評価基準が曖昧だと「字のきれいさ」など本来の採用業務とは関係ないところが評価されがちになることすらあります。

前述の大手通信会社では、作文の評価にもAIを活用しています。「自分の強みやビジョンを書いてください」という作文が出題されたとすると、それを求める人物像とリンクさせて、より自社にマッチする人材を採用できるからです。評価者による評価の基準に対するズレもありません。きちんとすべての作文を読んだうえで評価することもできます。

6.面接試験にAIを活用する事例

まだ数は多くないのですが、面接試験にAIを活用するという企業も少しずつ現れています。Web上、もしくはスマホに向かって面接をして合否を判断するものです。大手通信業界だけでなく、物流業界などにも取り入れられています。面接試験は、遠方から来るにもかかわらず不合格になる学生も多く、時間と手間、交通費の無駄といった問題があります。人事部としても、初対面で会社と合わないと思っても面接を継続しなければならず、お互いにストレスになります。

しかしながらこのAIを活用した面接であれば、スマホさえあれば判定できるので、場所や時間を問わず24時間面接を受けることができます。遠方からの学生も面接できますし、数多く面接をしてもAIだから疲れることもなければ、評価のばらつきもありません。また、面接をやっているうちに面接官は疲れてしまい、同じような質問をしてしまったり質問を飛ばしてしまったりすることもあります。AIを使った面接であれば、そのようなこともなくすべての質問をすることができます。

AIを使った面接では、面接の始めから最後、質問の答えだけでなく入室から退室、マナーに至るまで一貫して評価することができます。評価のばらつきもなければ公平性も保てます。特に一次面接など短時間で多くの面接をこなさなければならない時にAIを活用することで労力を削減している会社があります。現在、さほど多くはないものの、これから増えてくることが予想されます。

7.学生からの問い合わせにAIを活用する事例

AIを使ったバーチャルなOB、OG訪問を取り入れている企業もありますが、学生への問い合わせに使っている企業もあります。たとえば、学生が選考方法やこれからの選考に対する質問、面接日時などスケジュールの変更を言うことがあります。特に選考方法や出された課題への問い合わせなどは、だいたい同じ質問であることが多いです。こういった質問に対して一つ一つ丁寧に対応していると、人事部はそれに労力を割かれてしまいます。

こういったときに役立つのがAIです。AIを活用して、学生から想定されるであろう質問に対しスピーディーに的確に答えていく、学生も質問の答えやスケジュール変更にスピーディーに対応してくれるので助かりますし、企業も採用業務に付随する雑多な仕事にせっかくの労働力を奪われずに済みます。採用活動中は、意外にも人事とのやり取りは多く、そのやり取りの結果次第で信頼できる会社かどうか判断されることもあります。

8.内定辞退の防止にAIを活用する事例

近年、人事採用部門で深刻な問題となっているのが、内定辞退です。採用計画通り採用をしても、予期せぬ内定辞退で必要な新入社員を充足できないこともありますし、逆に内定辞退を見越して多くの新入社員を採用したが思ったより多く入社してしまったこともあり得ます。内定辞退を埋めるために採用し続けた結果、通年採用を行うようになって人事採用部門の業務が増大してしまうこともあります。

そのような事態を防ぐには、計画通り採用し、内定した人がみな入社してくれたらよいので内定辞退を防ぐことも、人事採用部門の重要な業務の一つです。そのようななか、内定辞退防止にAIを活用するという方法もあります。

内定した学生の動向、いままでの志望企業の傾向や面接の受け答えなどから、内定辞退しそうな学生を科学的に分析し、その学生をフォローしていくという方法です。内定辞退を事前に食い止めるために、科学的に分析した内定辞退しそうな学生に対し、若手社員との懇談の場を設けるなど、策を練ることができるからです。採用活動にAIを取り入れる、これは内定をだしてからもできるのです。

内定者にとっても、AIを使って24時間気になることを質問できるのは、ありがたいことです。福利厚生や給料のことなど気になっていても面と向かって人事部の人に質問するのは勇気がいることです。しかしながらこのような点でも、AIであれば機械なので躊躇なく質問できます。企業にとっても、内定者の本音を知ることが出来、今後の採用活動に生かしていけます。

9.人事研修にAIを活用する事例

AIを選考、特に入社面接に使うことでその人の特性や人物像がより科学的に分析され、鮮明になります。そうすると見た目だけではわからないその人の行動特性や性格などがわかります。今いる社員のデータを登録したり、AI面接のデータを蓄積することで、同じような行動特性や価値観を持った人を同じような部署に配属することも出来、入社後のミスマッチがある程度緩和できると期待されています。

一方、AIを活用した人物のデータはその人の得意なことだけでなく不得意なところも科学的に分析できます。そのような不得意な部分を入社時研修などでフォローすることにより、より新入社員が現場に溶け込みやすくなるといったメリットもあります。また、選考を重ねるたびに求職者のデータや社員のデータが蓄積されるため、〇年目研修といったように実際に働いてからの研修などにおいても、AIが活用できます。

10.AIを使った採用のデメリット

一方で、AIを使った採用にもデメリットがあります。まだAI選考がポピュラーになっていないので、どうしてもAIの選考に不信感を持つ就活生がいます。就活生や転職者は、大体半数くらいの人がAIを使った面接に抵抗感があるとされています。そういったことからAIを使っている会社も選考過程を非公開としているところも多く、AIを使った採用選考を取り入れようとしてもノウハウがないといったデメリットもあります。

また、採用面接試験においては、面接者の選考をするだけでなく自社の魅力をPRして内定辞退を防ぐ、といった目的もあるのですが、これはAIには難しい分野です。その就活生に入社してほしいのであれば、しっかりと顔を見て対面で魅力を語る必要があります。特に、たくさんの企業に内定をもらってそこから選択していくような優秀な就活生なら、AIを使っているというだけで、会いもしないで合否を決めるのか、といった不信感にもつながり、結果的に内定しても入社しないリスクもあります。

加えて、AIを導入するにはやはりイニシャルコストがかかります。長い目で見れば労力が少なくなり、結果的に人件費を含めたコストダウンにつながるのですが、やはり導入するときはそれなりのコストがかかります。

11.AIを使って採用活動をするときの注意事項

AIを使って採用活動をするときは、このようなデメリットもあるとわかったうえで導入する必要があります。AIに自分の選考を判断されるのは、不信感を持つ就活生もいるので、やはり選考の過程で人事担当部門が直接会って話をする場面を設ける必要はあります。エントリーシートでの判断についても、不採用、採用共にさっと目を通すくらいのことはしたほうがよく、AIを100%信頼するにはまだデータが不十分であるとも言えます。いずれにせよ、一般的な採用方法で名はないということを人事側が十分にわかったうえで導入することが必要です。

第二にAIを導入するには、求められる人物像や今までの合否の基準など、いろいろなことを考える必要があります。しかしながら過去のデータにのみ頼っていて全くメンテナンスをしないと、過去の言い回しや過去の人物像がよい判定を下されることになります。AIを導入したのであれば、必ず毎年見直して、求める人物像や求職者、内定者データをメンテナンスする必要があるでしょう。

おわりに

人事採用部門が抱えている業務は、会社説明から書類選考、面接選考や内定辞退の防止、内定者フォローから入社式や入社時研修まで多岐にわたります。特に近年はインターネットの普及とともに、応募者の母体も膨れ上がってきています。このような業務負荷を軽減し、多くの学生に選考の機会を与える、問い合わせや企業訪問などの選考以外の業務をスムーズにするためにもAIの活用は多大な可能性を秘めています。しっかりと本質を理解したうえで運用する必要があるでしょう。

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