HRテックを人事で活かすには?働き方改革に備えるHRテック!

近年のテクノロジーの発展のおかげで、人事における業務の効率化を測れるようになりました。HRとはHuman Resource(人事)のことを指します。人事の仕事は、人材の採用プロセスから始まり、評価査定・給与管理などまで多岐に渡ります。ではHRテックをどのように人事の仕事に生かしていけるのか見ていきましょう。

 

HRテックのメリット

少子高齢化問題が深刻化していく日本社会では労働力の確保がどんどん難しくなっていきています。総務省統計局の平成29年の労働力調査年報によると、2017年の労働力人口は6720万人だったのに対して、2065年には4000万人を下回るとの予想が出ています。そんな労働力が不足していく日本社会の中で、HRテックと言われる分野のテクノロジーが注目を集め始めています。

HRテックのメリットは大きく分けて2つあります。場面別に企業側と求職者・就業者がいかなる恩恵を受けることができるのか見ていきましょう。

1.データによる情報分析

求職者の情報を分析しより効率的に、よりマッチング率の高い採用プロセスを踏むことができます。例えば新卒採用のプロセスにおいて、どの大学でどんな学部の生徒が、どんなポジションに応募してくるのか、などの情報を蓄積することによって、採用プロセスにおけるマーケティングに役立てることができます。新卒採用やインターン採用において、ミスマッチが起きにくい仕組み作りに一役買ってくれます。新卒だけでなく、中途採用の過程においてもデータ分析とアルゴリズムによって、スキルがある人材に効率よく求人広告を見せることができるようになります。

また現状の従業員の勤務データなどを解析することによって、離職が起きやすい部署やポジションを明らかにし、それに対し人事として改善・対策を行うことができます。

2.時間・費用のコストカット

テクノロジーはいかなる分野でも、我々の仕事の効率化を図ってくれます。それはただ単に時間が節約できるだけではありません。時間が削減できることで、あるタスクに対しての人員を削ることができ、さらにそれは人件費の削減へと繋がります。もちろんそのテクノロジーへの設備投資、導入コストはサードパーティ製である以上はかかります。ただ、十分にペイできてしまうほどの恩恵をもたらしてくれることは間違いありません。

この話題に付随して「テクノロジーが人の仕事を奪ってしまう」という話が毎回挙がります。しかし、人手が足りていないと言われている日本の労働市場おいて、機械ができてしまうような単純労働に、人員を配置する余裕などもはやないはずです。もしもこの記事を読んでいるあなたが人事の方であれば「会社の人員が削減されると自分の仕事がなくなってしまう。」なんて思ってはいけません。むしろ人事であれば業務の効率化という観点において、積極的にHRテックを導入していくべきです。

そして次なる懸念点は「人事の仕事ってなくならないの?」と言ったところではないでしょうか。現在人事業務に従事している方はそのまま胸を張って「なくならない!」と思ってもらって構いませんし、これから人事系業務に携わりたいと思っている方も心配ご無用!いくら人工知能が発達したとしても、人事が人事らしく機械にできない仕事をする場面はあります。

HRテックの導入で人事の仕事がなくなる!?

結論から申し上げるとHRテックが従来の人事の仕事を100%代替するというのは、少なくともこの10年間の間には起こりえないと予測されています。採用プロセスや給与計算など、確かにテクノロジーが代替できるタスクはたくさんあるので油断は禁物です。

しかし、現在の日本の市場においてはポテンシャル採用という言葉があるように、面接で求職者の人となりを重視するという文化があります。少なくとも現代の技術ではいくらAIが発達してきたからといって、人間のパーソナリティの部分を定量化し、機械が分析するというのはまだまだ実現には至っていないというのが現状です。面接というプロセスにおいて求職者が会社の社風に合うかどうか、チームとしてうまく溶け込めるかどうかなどを判断するのは、チームプレイを重んじる日本企業の風土の中では非常に重要なことです。

しかし、実際的にいくつかの業務は人事の手から離れていくことが予想されます。今後5年の間では特にHRテックへの設備投資をする余力のある大企業で顕著に見られることでしょう。

場面別にみるHRテックの実績

実際の現場でHRテックにより、我々または人事がどのような恩恵を受けることができるのでしょうか。場面別に見ていきましょう。

採用プロセスにおけるHRテック

近年、大企業を中心にAI(人工知能)テクノロジーを用いた採用プロセスを取ることで、効率化を図るという動きが出てきています。特に日本では、新卒一括採用がまだまだ主流であるため企業側は、一定期間中に集中的に大量のエントリーシートや履歴書に目を通さなければなりません。大企業であればあるほどエントリー数は多くなってくるので、その労力は増すばかりです。そこでAI技術を用いることでエントリーシートの文面や履歴書の内容から、自動的に採用条件にあった人材をピックアップするという、プロセスを取ることがトレンドになりつつあります。残念ながら設備投資に十分な資金を工面することができない、中小企業の導入率はまだまだ低い部分ではありますが、これからのAI技術がますます普及し、現在よりもはるかに低コストで導入されることが期待できます。

ソフトバンクにおけるAI採用

実例を挙げるとソフトバンクはIBMのAIソフトであるIBM Watsonを導入し、新卒採用のプロセスの効率化を実現させました。大手企業だからこそ大量に寄せられるエントリーシート。さらにエントリーシートが寄せられる2、3月は人事も大学へ赴いたり、会社説明会をしたりとオフィス外での活動も忙しくなる時期になります。同社ではエントリーシートの判定は6名から10名程度で担当していました。自己PRなどは一人当たり約600字にも及び、担当者の負担がかなり大きかったようです。そこでAI判定を取り入れたことで、680時間かかっていたエントリーシートの判定は、170時間となり75%の削減に成功しました。またエントリーシートをデジタルに限定することで、用紙の紛失リスクや個人情報保護の観点でも大きな恩恵を得ることができました。

実はAI技術を用いた採用プロセスにおいて、学生の間では批判的な意見も少なくありません。機械に自身の将来を決められることに倫理的な反発を抱いたり、精度に対して疑問があるようです。同社では不合格者に対しても人事担当者の最終チェックを入れることで、HRテックの不完全さを是正しています。ですがこれは人が行う採用プロセスでも同じことが起きているようにも思えます。担当者によって合否の指標が異なりますが、反対にAIは指標が画一化されているため、ある意味で人間よりも公正なジャッジが下せるといっても過言ではありません。

人事・給与査定

最近では給与計算ソフトなどを直接のデータ入力ではなく、多彩な視点からボーナスや特典を給与査定に反映させることが可能になりました。残業を減らすことによるボーナスアップや、健康経営の視点から健康診断が良かった人へボーナスが支給されたり、タバコを吸わない社員へのボーナスが支給されたりとソフト一つで様々な特典をつけることができるようになってきました。

また配置に関しても、空いたポストのタスク管理などを行うことで空いているポジションだけでなく、前任者がどのような業務内容を担当していたかを明確にすることで、現状の社員へのタスクの割り振りを行うことができます。

評価制度においても、社内で部署やチームごとにバラバラに設定されていた評価シートも一元化することでデータを収集し、それを人事まで届けることができます。

退勤管理

退勤管理も給与計算に関わる重要な人事の仕事の一つです。従来の通りタイムカードからエクセルに打ち込みをするなどという方法もありますが、最近では入室用のカードキーで出退勤ログをとったり、パソコンへのログイン記録から出退勤の記録を取る会社なども増えています。タイムカードを用いる方法ですと押し忘れる心配があり、カードの発注、データ入力など煩雑な業務が増えてしまうので、新しいシステムを入れておくのが吉です。近年では残業対策の取り組みの一環として、パソコンの電源などが一定の時間になると落ちる、またはログオフされるというシステムを導入している会社もあるので、退勤管理と残業対策を一緒に考えると業務の効率化を図ることが可能です。

人事教育

通信講座などもある種のHRテックと言えるでしょう。従来では外部研修をしたり、外部から講師を招かなければいけなかったものの、現代ではYouTubeやMOOCを使って無料で受講をすることも可能な時代になっています。中堅から大手企業になってくると「階層別研修」「職種別研修」「テーマ別研修」などの研修が会社で用意されており、ある程度個人に合わせてあるように見えますが、個々のスキルや経験などのバックグラウンドも異なるので、常に最適化されているとは限りません。そこでAIなどを用いることで、受講者のスキルや経験から最適なコースやクラスをレコメンドしたりすることも期待されます。

働き方改革におけるHRテックの活用

2019年4月よりいよいよ本格的に働き方改革を法律として施行する動きが始まります。それに応じてHRテックを提供する企業も様々な対応サービスをリリースしています。

時間外労働の上限規制

労働基準法では1日8時間及び、週に40時間という法定労働時間を超過する場合、36協定の締結・届出をすれば実質的に、就業者にいくらでも残業をさせられるというような仕組みになっていました。しかし、このたびの新しい政策により時間外労働の上限は、原則として月45時間・年360日と定められます。そうすると兼ねてから問題になってきているのは、残業代をあてにできないとう点です。休みはいらない、残業を厭わないからとにかくお金が欲しいという方も少なくありません。会社側は、時間外労働の上限を超えた労働をしてしまうとペナルティを負ったり、メディアに堂々と報道されてしまうリスクは避けたいので、残業を制限しようとする動きも出始めます。そんな際に時間外労働を削減することによるボーナス査定の仕組みを用意したり、それを退勤管理に組み込んだり、残業を防止するために一定時間で会社の電気をブラックアウト、パソコンをログオフしたりすることにHRテックを役立てることができるでしょう。

また時間外労働を規制しようとしても、実質的な業務量が減るか効率化されない限り、現状の残業状態を減らすというのは不可能です。もちろん簡単なタスクをテクノロジーで代替して効率化を測ることは可能ですが、予算が出るとも限りません。そうなってくると残業は無くなっても、家に仕事を持ち帰る従業員が出てくることも予想されます。家から会社のサーバーに入れないようにシステムにブロックをかけるとこも重要です。残業を防ぐことだけでなく、ウィルスなどによる情報流出へのリスクヘッジにもなります。

年5日の年次有給休暇

年休が10日以上付与される労働者に対して、年5日の有給休暇を取得するのが義務付けられます。今まで暗黙の了解で休みが取りづらかったり、膨大な業務に追われて休む暇がなかったなど様々な理由で、消化されてこなかった有給休暇ですが、ようやく法令として取得が義務付けられます。あくまでもこれは付与ではなく、取得が義務という点で従来と異なっています。つまり、絶対に5日間は有給を使わなければならいないというのが新しい点です。付与日数に関しての規定は、「労働者が雇入れの日から6ヶ月間継続勤務し、その6ヶ月間の全労働日の8割以上を出勤した場合には原則として10日の年次休暇を与えなければならない」とあります。またパートタイム労働者にも一定の条件下で有給休暇が付与されます。パートタイム労働者など、所定労働日数が少ない労働者については年次有給休暇の日数は、所定労働日数に応じて比例付与されます。比例付与の対象となるのは、所定労働時間が週30時間未満かつ、週所定労働日数が4日以下、または年間の所定労働日数が216日以下の労働者です。

働き方改革関連法解説(労働基準法/年5日の年次有給休暇の確実な取得関係)より

このように雇用形態や勤続年数に応じて有給休暇の付与日数はもちろん、今回施行される新たな法の対象者が異なってくるので、HRテックを使って退勤管理を含めて管理をすることが重要です。ルールでは、労働者ごとに年次有給休暇を付与した日(入社6ヶ月後)を基準日とし、そこから1年以内に5日有給を消化させなければなりません。中途入社が多い会社では社員ごとに基準日も異なるため、確実に参照できるようにデータで管理しておくことが必須でしょう。

パートタイム・有期雇用労働法

「同一労働・同一賃金」をモットーにパートタイムや、派遣社員などの非正規労働者と、いわゆる正社員と呼ばれる正規労働者の格差を是正する取り組みが始まります。フルタイムの有期雇用者もこの対象ですので、いわゆる派遣社員という分類に属する方々も対象となります。この法律では、正社員と同じ待遇を受けることを前提とし、もし異なる場合はその理由について事業者は明確に説明をする義務が生じます。また最近ではフリーランスが増えていることから、彼らと請負契約を交わす企業も増えてきています。直接契約を交わす企業もあれば、クラウドソーシングサイトを経由して依頼をする企業もあります。副業の解禁も始まり、会社にいる従業員はもはや正社員だけでなく、様々な雇用形態で働いている社員ばかりです。そういったときにHRテックを用いることで、主には税金や保険料などを含める給与計算などで大きな恩恵を受けることができます。エクセルなどで手入力をするとミスにつながり、そのミスが法を侵害しているとされると、ペナルティなどが課せられるのでテクノロジーを使い、人事業務を簡素化することはある種のリスク回避とも言えるでしょう。

人事制度の中で大切なこと

これからHRテックを有効活用しながら、人事制度を効率化する上で重要なことはなんでしょうか。新たなHRテックサービスが数々生まれていく中で、しっかりと自社の方針とマッチするサービスを選ぶことが重要です。特に労務・給与管理ソフトや退勤管理ソフトなどは比較的サービスが多いです。その中で、一つのサービスだけで全て簡潔化するものもあれば、連携させて使えるもの、はたまた連携が難しいサービス同士もあります。特段これら労務管理と退勤管理は一元化しておくことをお勧めします。さらにそこから勤怠管理などを人事制度へつなげる場合のことも考えるとデータを人事制度へ組み込めるサービスを利用することも検討しておくべきでしょう。

さらに人事制度の中でHRテックを効率的に活かすために、今まで定量化されてこなかった基準をデータとして指標を設ける必要があります。スキルや経験などは比較的データにしやすいですが、パーソナリティなどを数値化しデータにするというのは簡単ではありません。そこで人事がこれから求められることは、評価データを人事データに落とし込めるように、会社の評価制度を作っていくことです。会社内でのフィードバック用のフォーマットや、個人面談などを数値データとしてコレクションできるような改革を行なっていき、ビッグデータを活用できる準備を進めておきましょう。

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