Google for Jobsで何ができる?求職者の目線で考えてみる

Google for Jobsが日本に上陸したことで各企業の人事部は慌ただしく、その対策に追われています。今回はユーザー、つまり求職者の目線でGoogle for Jobsというものを考えてみたいと思います。これまで、求職者は仕事を探す際には求人サイトに自身の経歴を登録し求職サイトを通じて就職・転職活動を行ってきました。今でも地方ではハローワークに赴き、求人検索をしてハローワークからの紹介状を受けて面接に臨むというというのが一般的です。Google for Jobsはこうした状況を変えるシステムです。企業と求職者を直接的に繋ごうとするものであり、今後はGoogle for Jobsを通じて仕事を探すことが通常の動きになるでしょう。Google for Jobsは求職者からするととあまり意識しないシステムなのかもしれませんが、今回はGoogle for Jobsによって求職者がどのような行動をするようになるか、社会的にどのような変化が起こるのかということにも触れてみたいと思います。

Google for Jobsが提供する求職者へのサービス

Google for Jobsがついに日本に上陸し、「日本の採用を大きく変える」とニュースなどでは大きく取り上げられ、各企業はその対策に追われています。しかし、求職者には何のことかイマイチよくわからないと思います。Google for Jobsをひとことで説明するのであれば、「企業と求職者をより良く結びつける」インターネット上のサービスのことです。これまでの日本の求人検索サイトとは大きく異なり、Google上で求人に関連したキーワードを打つとGoogle for Jobsが自動的にその条件に合った求人情報を検索し表示させるものです。わかりやすく、求職者のメリットをまとめてみましょう。

<求職者がGoogle for Jobsを使うメリット>

・無料で使える

・検索したキーワードに該当する情報を優先して提供してくれる

・様々な求人サイトの情報を表示させてくれる

・求人している企業の他人の評価を確認できる

それぞれ解説していきたいと思います。

<求職者はGoogle for Jobsを無料で使える>

インターネットの情報は、ネット環境があれば誰でも閲覧することができます。現在では、求人情報のサイトは日本に多くあるため無料ということに大きなメリットを感じることはないかもしれません。むしろ「当たり前」の感覚でしょう。これは求人を出す企業がその情報を提供するサイトに広告費用を支払っているためです。最近ではindeedという画期的な検索システムができ、企業も無料で広告を出せるようになりました。しかし、広告費を支払うことで求人情報を上位に表示させることができるため「多額の広告費用を支払った企業」に求人が多く集まるという結果になりました。Google for Jobsはこのindeedのシステムを更に変えるものなのです。それは、「求人をする企業も完全に無料」だということです。そのため、企業がGoogle for Jobsにおいてその求人情報を検索結果で上位表示させる取り組みを行い始めました。単純に費用を投資すれは情報戦に勝てるというシステムではなくなったのです。これがGoogle for Jobsの大きな特徴です。求職者も求人を出す企業も無料でそのサービスを使うことになるのです。

<検索したキーワードに該当する情報を優先して提供してくれる>

何かを検索しようとする時、日本では約7割の人がGoogleで検索するそうです。もちろん、求人情報を検索する時にもGoogleを使う人が非常に多いことでしょう。例えばGoogleから「渋谷 アルバイト 本屋」で検索するとロゴ入りでの求人情報が上位に表示されます。これがGoogle for Jobsの情報なのですが、求職者はこれがGoogle for Jobsという意識がありません。Google for Jobsが優れている点は検索のワードに関連した地域・職種などをそのニーズに合わせてピンポイントで表示されるということです。求職者からしたら非常に良い情報を提供してくれるサービスで、検索の時間短縮化が可能になりました。

<様々な求人サイトの情報を表示させてくれる>

indeedが行ったサービスで、あらゆる求人サイトの情報を一括で検索してくれるサービスがありました。このサービス登場以前は、求職者がいくつもの求人サイトやハローワークの情報を1つ1つ拾っていく作業が必要でしたがindeedがこの一括検索機能のサービスを始めたことで、求職者は非常に情報集めが楽になりました。しかし、表示させるシステムは違うもののGoogle for Jobsはこれと同等の機能を持っており、且つGoogleで検索した場合にはGoogle for Jobsの情報が表示されるとなると、こちらのサービスを利用する求職者が当然多くなるでしょう。

<求人している企業の他人の評価を確認できる>

Google for Jobs とindeedとの最大の違いはこの「客観的な評価」が表示されるということかもしれません。Google for Jobsでは、企業の評判や口コミの情報がその求人情報と一緒に掲載されます。これはGoogleが企業から広告掲載費をもらわないから可能なシステムです。「客観的な情報」を求職者が見ることができるのです。例えば、その企業の評判があまりにひどいものであればそんな企業に求職者が応募することはないでしょう。良質なサービスを提供している社会が、より優良な人材を採用できるシステムなのです。Google for Jobsで求人情報とともに表示される「転職会議」や「Vokers」、「カイシャの評判」などのリアルな情報がより重要性を増すことになるでしょう。

Google for Jobsへのアクセスの仕方から求人に応募するまで

インターネットでありとあらゆる情報を得ることが出来る時代になり、人が「求人情報誌」などを買うことはほとんどなくなりました。インターネットの情報は鮮度が高く、応募までのスピードが非常に早く便利であり、基本的にはその情報を無料で利用することができます。もちろん、仕事を探すときには誰でもインターネットで検索するでしょう。例えばパソコンからでもスマートフォンからでもGoogleで検索する人は非常に多いです。例えば「渋谷 アルバイト ファッション」などと検索するでしょう。これらの求人を探していると思われるキーワードでGoogleから検索するとほとんどの場合にGoogle for Jobsの情報が上位表示されます。それもそのキーワードに関連した情報がピンポイントで掲載されているため、その先を見たいということになるでしょう。検索の際に、「リクナビNEXT」「DODA」などの求人サイトの名前をキーワードに入れる人は稀で、ほとんどの場合に「地域」「職種」「条件」などの広いキーワードで検索するのです。これらのキーワードで検索する人のほとんどが意識せずにGoogle for Jobsを利用することになるでしょう。

このGoogle for JobsのサイトはUIが非常にシンプルに設計されており、誰でも直感的に利用できるでしょう。応募するまでの導線が非常に短く、シンプルに必要な情報を取得することができます。こういった観点からも応募するハードルを下げてくれる効果があるでしょう。これまでの求人サイトでは、必要な情報を得るために個人情報の登録が必須であるサイトなどもありました。それと比較するとGoogle for Jobsは気軽に応募できる印象を受けます。自分の位置情報を元に求人の情報が表示されるために周辺にある求職者にとって必要な情報を無意識に拾うことができます。機能としては気になった情報を「保存」することと、新しい求人情報を知らせてくれる「アラート」機能です。Google for Jobsは日本では今のところ検索機能をベースとしたものになっていますが、今後はより便利な機能が追加されていくでしょう。

変わる日本の求人業界

これまでの日本の求人業界は主にいくつかに分類されていました。アルバイトは「タウンワーク」「an」、新卒就職は「マイナビ」転職は「リクナビNEXT」「エン転職」「マイナビ転職」などが主流でした。特に転職の求人サイトは非常に競合が多くなったために、スキルや職種に特化した求人サイトが登場し始めていました。例えば「ビズリーチ」などは、年収500万円以上のハイクラスの求人情報を提供し求職者が登録する場合にも手数料を取る新しい試みで成長しています。また、「エンジニア」「看護師」などの職種に特化した求人サイトは企業と求職者のニーズを満たし、ミスマッチを少なくすることに成功しました。求人を出す企業はこれらの動きに合わせて、求人広告をどこのサイトに出し効率的に優良な人材を獲得するかという戦略を立てることになりました。転職の市場ではエージェント転職という、営業マンがサポートする人材紹介業のサイトもあり、「DODA」「JACリクルートメント」などは企業から求人情報を得て、そこに登録した求職者を紹介することでその手数料を得る仕組みを作りました。いわゆる「成功報酬型」であったため、企業からも費用効果がわかりやすいというメリットがありました。都市部において求人サイトは非常に多く、その市場は「レッドオーシャン」となっていました。その一方で地方では、ハローワークの存在が大きく、転職には欠かせない存在であり続けていました。こうした時代に彗星のごとくあらわれたのがindeedでした。

2017年ころから2018年にかけては、indeedという新しい求人検索サイトの登場により日本のそれまで求人業界の流れを大きく変化させることになりました。この時期の各企業の人事部は、indeedから自社サイト採用ページに求職者を誘引する道をいかに作るかということに苦心し続けていました。indeedはこれまでの求人サイトではなく、巨大な求人検索サイトという位置づけで全ての求人サイトの情報を網羅するシステムだったのです。indeedはリクルートが買収し2012年から日本で本格的に展開を始め、極めて巧妙な広告戦略で日本の採用手法の最も大きい存在にまで上り詰めました。indeedは採用サイトを持つ必要が無く、indeed上での登録をすることでも求人情報が掲載できます。しかも無料で使用できるため、中小企業は積極的に利用しました。広告費用をかければその求人情報を上位に表示させることができるため大手企業はできるだけ効率的な費用投資を行い、そのページから自社サイトの採用情報ページで社風、やりがい、企業の将来性などのメリットを伝えるという戦略を考えました。そして2019年にGoogle for Jobsが日本に上陸し、日本の採用方法だけでなく、転職というものを変えようとしているのです。

Google for Jobsが変える日本の転職

日本の転職と海外の転職の事情は大きく異なります。異なる、というよりも世界的に見て日本の仕事の仕方や考え方は極めて独特であるという言い方が正しいかもしれません。まず「終身雇用制度」と「年功序列制度」についてまとめてみたいと思います。

<終身雇用制度>

日本では第二次世界大戦後に「終身雇用制度」が定着しました。これは雇用を安定させることを目的にしたもので、当時の企業の労働力不足を解決できる手段でもあり企業と労働者の相互にとって有効的な制度でした。しかし、これはこの時期に急にできた考え方ではなく日本人の伝統的な考え方として古くから根付くものなのかもしれません。日本の「サムライ」は文句を言わず忠義を尽くすことが美しい生き方だ、という考えです。特にこの時代に教育を受けた世代は「楠木正成」のように命を投げ出しても忠義を尽くすことを道徳とする傾向がありました。「自分の考えを捨て、企業のために働くのが美しい」という考えが、この時代に突如あらわれたわけでは決してないと思います。

<年功序列制度>

終身雇用制度とともに、戦後の人事制度の軸となった制度が年功序列制度です。この考え方は極めて日本らしいものであり、海外では当てはまる言葉が無く「NENKO SYSTEM」として紹介されるほど特徴的なものです。日本人は「和を以て貴しとなす」という考え方が深く根付いており、人を順位付けすることは「和を崩壊させる」ことであり日本では歓迎されないものでした。年功序列は終身雇用の制度があって初めて労働者にモチベーションが生まれるもので、これをセットで考えるのが正しいでしょう。賃金の査定が容易で、人件費の移り変わりがほとんどないため、経費の目途が立てやすいという利点もあります。労働者から考えると人生設計が立てやすいことがあげられると思いますが、このシステムが転職の歯止めとなった大きい要因ともいえるでしょう。少子高齢化社会を迎え、このシステムは変化の時を迎えています。

「終身雇用」と「年功序列」を軸とした日本では転職が活発化することはありませんでした。転職者にとってはその能力が高い場合であっても、年功序列制度によりその給料は低く抑えられてしまいます。また、採用する企業も転職者を抜擢採用しにくい風潮があるという理由もあるでしょう。このような事情があり、日本においては転職というものが「良し」とされないネガティブなイメージが付きまとうことになりました。

これと比較して、アメリカ等の転職事情は大きく異なります。アメリカでは仕事は個人の能力が最も重視され、成果を出せる人材は他の企業から積極的にヘッドハンティングされていきます。労働者もヘッドハンティングされる度に高給、好条件で働けるようになるため、転職の回数は優秀な証拠ともなります。Google for Jobsはこうした社会の採用システムとして生まれました。

日本の会社制度も急速な少子高齢化社会を迎え、変化することが必要になりました。多様なライフスタイルがあり、個人の労働に対しての考え方も様々です。Google for Jobsが日本に上陸したことにより、求職者の「応募する」ことのハードルを下げる効果があるでしょう。また、求職者の応募は企業の他人からの評価をGoogle for Jobsで見るようになるため優良な会社に、優良な人材が集まりやすい結果を生むことになります。その結果、短期的にいかに利益を生むかということを考える企業ではなく、長期的に社会に貢献するサービスを提供する企業により評価が集まるようになります。Google for Jobsという求人システムが日本の社会の在り方をも変える可能性があるのです。

まとめ

さて、今回は求職者の目線でGoogle for Jobsを考えてきましたがいかがだったでしょうか。最後にまとめてみたいと思います。

・求職者はこれまでの求人サイトではなく、Google for Jobsを利用するようになる

・Google for Jobsは無料で利用でき、キーワードに沿った情報を提供してくれる

・Google for Jobsでは求人している企業の他人の評価を確認できる

・Google for Jobsは応募までの動線が短く、応募のハードルを下げる効果がある

・求人サイトはこれまではindeedの「1人勝ち」状態だったが大きく変化することになる

・ライフスタイルの多様化、少子高齢化により日本の人事制度は変革期を迎えた

・Google for Jobsは日本の採用を変化させる 最も重要なことは、求職者がGoogle for Jobsを使うときに「Google for Jobsを使用している」という意識をあまり感じないことなのかもしれません。これからの求人情報はGoogle for Jobsが網羅する時代になるでしょう。

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